日盲社協通信 令和2年(2020年)11月号(通巻81号)

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日盲社協通信 令和2年(2020年)11月号(通巻81号)
編集人:福山博   発行人:舛尾政美
発行所:社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)
National Council of the Agencies of the Welfare for the Blind (NCAWB)
http://www.ncawb.org/

もくじ
コロナ禍における発想の転換 理事長 舛尾政美
便利さの陰に 常務理事 長岡雄一
視覚障害者にとってのコロナのリスク 常務理事 荒川明宏
(誌上慶祝会)茂木幹央さんの第38回鳥居賞受賞を祝す 日盲社協参与・視覚障害者支援総合センター前理事長 髙橋實
 山口規子さんにヘレンケラー・サリバン賞 編集部
 鈴和代さんの鳥居伊都賞受賞を祝す ―― この賞に最も相応しい人 ――日本点字技能士協会元理事長 込山光廣
わが施設の今 第4回オーテピア高知声と点字の図書館 オーテピア高知声と点字の図書館館長 坂本康久
(オンライン座談会)コロナ禍における日盲社協の現状と対策・展望
令和2年度アピール・決議、奉仕者(ボランティア)表彰者名簿
新型コロナウイルスに関するアンケート報告 自立支援施設部会長 山下文明
<訃報> 視覚障害者と共に活動することをenjoy! した岡田弥さん 日本ライトハウス情報文化センター館長 竹下亘
日盲社協事務局だより
編集後記

    コロナ禍における発想の転換
    理事長 舛尾政美
 危険な猛暑といわれた今年の夏の暑さは、10月に入りようやく収まりましたが、コロナの全国的な広がりは一段と激しさを増しています。皆さんお元気でお過ごしでしょうか。
 日盲社協は6月の全国大会を中止したのをはじめ、各部会の事業を縮小するなどコロナの対応に追われています。
 社会福祉法人山口県盲人福祉協会(山口県盲協)も日盲社協同様、コロナの対応に手を焼いていますが、発想の転換で乗り切ろうとしています。つまり、コロナ禍であるからこそ研修会や講習会を中止したり縮小すれば、結果として経費や時間に余裕が生じます。そこで、それを利用して新たな事業を始めたり、改善することができるのではないかという考え方です。
 8月から従来日曜日行っていた点字図書館のボランティア養成講習会を、平日の18~20時に、人数を10名以下に抑えて講堂で行うようにしました。
 10月から同行援護事業の従業者養成講習会を、人数を10名程度に抑えて講堂で行うことにしました。さらに前年度まで月1回バスで50名程度で実施していた散策を、1回あたり25名程度に抑えてバスで月3回、人の集まりが少ない神社や公園を目的地に行うことにしました。
 12月6日に西日本視覚障害者カラオケ大会を180名定員の講堂で、参加者40名程度に抑えて開催する予定です。
 山口県盲協は3度目の挑戦として9月1日、盲人ホーム光(こう)明(みよう)園を発足させました。
 1965(昭和40)年4月、厚生省の認可を得て下関市関西町に盲人ホーム治療所を設置しましたが20年後、地元の視覚障害者から反対運動が起きたので廃止しました。
 8年前、下関市向洋町に就労継続支援B型事業所盲人ホーム光明園を発足させましたが4年後、北九州の訪問マッサージ業者から月収40万円の誘いがあり、施術者11名が光明園を離れたため、盲人ホームは廃止せざるを得なくなりました。
 このたびコロナの影響で県下の雇用が困難になって山口県盲協に支援を求める声が多くなり、9月1日から光明園において山口県盲協方式による事業を開始しました。
 事業所は視覚障害者の雇用を支援するとともに、法人に属する施設や事業所などの入所者や職員などの健康維持増進を目指して三療の施術を行っています。
 施術は光明園において行うほか、春光苑や山口県盲協などに出張しても行っています。コロナは今後しばらく続くとみて学習しながら発想の転換で進めていくことが必要であり、コロナ終息後の対応の準備につなげることが必要であると考えています。
 最後に日盲社協においても同様の考えで、具体的には今後常務理事会や理事会で十分検討しながら強い覚悟で最善を尽くしたいと考えております。(山口県盲人福祉協会理事長)

    便利さの影に
    常務理事 長岡雄一
 『日盲社協通信』の最新号を皆さんが受け取るのは、もう年末と言われる時期です。
 結局この一年、新型コロナウイルスに振り回されたことになります。
 日盲社協という組織を振り返っても、理事会や評議員会は決議省略での開催となり、大会までも中止に追い込まれました。つまり、人が集う、人が行き来をすることが一番危険だということです。人が集えば、自然と会話が弾みます。時には口角泡を飛ばす類のこともあるでしょう。食事を一緒に摂ることもあるでしょう。これがいけないという訳です。
 どちらかといえば、日本人は、あまり大きな声で話をしたり、捲し立てるような調子で話しをすることが少ない民族です。街で、外国の方同士の会話を耳にすると、日本人の静かな会話が際立ちます。日本における感染者数の少なさの原因の一つに、こうした民族性や言語を挙げる論者がいることは確かです。
 いずれにしろ、対面での会話はできるだけ避けるとなると、コミュニケーションの取り方に、大きな変化が生じることは間違いない事実です。インターネットを利用した在宅訓練においても、週に1回の対面による面談が条件とされてきた訳ですが、恒久的にその形に変更が加えられる可能性もあるでしょう。
 ところで、この「在宅訓練」。とくにインターネットを利用した在宅訓練がもてはやされてきている感がありますが、本当にそれほど簡単なことなのでしょうか。
 今、通所による訓練ができないから、とにかくインターネットを活用した訓練を行う。当然、通所して行う訓練と同等の質の確保が求められるはずです。
 たしかにMicrosoft TeamsやZoomを利用しての、会議や情報共有が急激に進んだ気がしていますし、今後もさらにそうした類のものの利用は進んでいくでしょう。間違いなく便利だと思います。
 先日も、ある専門学校でお話をさせていただく機会を頂いたのですが、対面ではなく、Zoomを使っての話ということになり、その気になって話していくうち、全員が日本にいる訳ではなく、来日できずに外国にいる方が中に混じっていることがわかりました。こんなことは、今まで想像もしなかった事態です。
 ただ、安易に流れて欲しくはないのです。「便利だから」ではない何かが必要なのではないでしょうか。近頃、毎日耳にするAIも時代の寵児のように語られ、何でもできてしまうような感じになっていますが、実は、そこに至る道筋で、実にアナログな接近方法を採っていることを最近知りました。地道に積み上げていった先に、私たちが享受できる便利さがあるのです。
 もう一度、足元を見つめ、自分が拠って立つ場所を確認したいと思います。

    視覚障害者にとってのコロナのリスク
    常務理事 荒川明宏
 コロナウイルスが広まってから、半年以上が経ちました。ある意味、マスクを付けての外出、三密を避ける行動など、コロナ時代の生活にも慣れてきたところでしょう。でも、ふとしたところに、落とし穴は待っていますし、これから冬に向けて、考えさせられる部分も多く出て来るのではないでしょうか?
 下記二つは、私が実際に体験した出来事です。
 10月上旬、会社の近くの病院に妻と行きました。薬をもらうだけで、5分間滞在するだけです。診察を待つ間に検温があり、妻は37.5℃あり、計り直しても同じ数値です。私は妻に「病院を出るように」話し、妻も外で待っているとのことでした。
 いつもの病院だから私のことはよく知っているので全く問題はありませんでしたし、帰る時には病院の方が、妻を外まで迎えに行ってくれました。ちなみに、妻は会社に戻って検温したら平熱でした。
 私に何ら問題がなくても、場合によっては手引きする人に何かが起きるということが十分にあるのだと思い知りました。
 もう一つは、火曜日の夜9時過ぎに社員から電話があり、発熱して頭痛がするとのこと。もちろんこの時点で普通の風邪かコロナかは全くわかりません。そして、当然ながらコロナかも知れないし、コロナではないかも知れません。
 翌朝一番に電話で、事務所には来ないで自宅で仕事をするようにと指示しました。そして、金曜日まで、同行援護の仕事も、事務所の者が行う分はすべてキャンセルしました。
 金曜日に結果がわかり、幸いなことにPCR陰性で単なる風邪との結論でした。
 しかし、このできごとについて、逆の対応をしていたらどうなったでしょう。火曜日の夜に報告を受けましたが、この時点では何でもないので水曜日、木曜日と通常の業務を行い、同行援護も実施します。そして金曜日にPCR陽性とわかったとしたら?
 もちろん水曜と木曜に事務所にいた社員、事務所から同行援護をした利用者、来社されたお客様が濃厚接触者となります。
 そして、「なぜ、コロナかも知れないという判断のもとに、行動をしなかったのだ」との指弾を受けることになるでしょう。
 同行援護や居宅介護など福祉サービスは濃厚接触となります。そして、「体調が悪い」といって、当日別な人がすぐ対応出来るわけではありません。
 和解に至りましたが、広島で、コロナウイルスの人が介護をして、相手が亡くなり、訴えられるというニュースがありました。
 私たちもいつそうなってもおかしくない状況に置かれているのです。私たちは常に高いリスクの上で、サービスを行っているという自覚をしっかり持つことが重要だと思いました。(株式会社ラビット代表取締役)

    誌上慶祝会
    茂木幹央さんの第38回鳥居賞受賞を祝す
    日盲社協参与・視覚障害者支援総合センター前理事長 髙橋實
 京都ライトハウスの創設など数多くの業績を遺し、1970(昭和45)年9月11日76歳で逝去された、鳥居篤次郎先生の遺徳を顕彰し、視覚障害者福祉の発展を願って設けられた鳥居賞に先ごろ茂木幹央日本失明者協会理事長が選ばれました。
 我が事のように嬉しく思い、心よりお喜び申し上げます。
 さっそく私たち仲間50人でお祝いの会を開きました。席上茂木さんは「私もかつては盲大生と呼ばれた時代がありましたが、84歳という年齢を迎えるに至ってしまいました。しかしながら、仕事の関係で94歳までは生きなければならないと日々努力しています」という挨拶に大きな拍手が起こり、エールが送られました。
 「人生100年時代」といわれている今日ですから、当たり前のようにも思われますが、彼の心の中には「手つかずの仕事」が未だあるということですから羨ましい限りです。
 7月に10人で集まる宴席がありました。その折、「高橋さんは『点字毎日』と文月会などをバックに仕事をされてきたけれど、茂木さんは行動力と発想だけで成果を上げてこられた」と発言した人がいて、返す言葉もありませんでした。
 彼の業績についてはあまりに知られていることであり、また、『見えなくても戦国』というびっくりするようなタイトルの自伝を2017(平成29)年に上梓されていますからここでは敢えて触れません。しかし、彼のやることなすことは驚きであり、感心することばかりです。
 私が『点字毎日』記者時代に担当していた投書欄に、「一盲老人」を名乗る女性から、「首都圏で埼玉県だけに盲老人ホームがない。悲しい思いをしている」という投稿が点字で寄せられました。
 そこで、当時聖明福祉協会理事長であった本間先生にうかがうと「その通り」ということで紙面化しました。それにすぐに反応したのが茂木さんだったのです。
 彼は大学の1年後輩で、ともに就職浪人組として辛酸をなめた仲間です。そして食パンの耳を齧りながらの臥薪嘗胆の末、国立東京視力障害センターに教官として赴任し、やっと心身ともに安定した時に、くだんの『点字毎日』の投書欄を読んだのです。
 そして、盲老人ホーム創設を「天の声」として聞き、潔く国家公務員を辞するなどは彼ならではの決断で、とうてい真似の出来るものではありません。しかもご承知のように120ある居室は全て個室という日本一の養護盲老人ホームひとみ園をはじめとする9施設を立ち上げるなど、実行力は冴える一方です。ややもすると閉鎖的な老人ホームを地域社会と一体化する意味からも演劇ホール、映画館、カラオケ喫茶を併設する等、卓越した事業手腕は茂木さんならではのもので、彼の先見性には感心するの一語です。そして、わたくしはいつも茂木さんの次の一手を楽しみにしています。
 最後に、茂木さんが日盲社協会理事長時代に日盲社協会館の建設に尽力し、竣工させたことに改めて敬意を表します。

    山口規子さんにヘレンケラー・サリバン賞
 東京ヘレン・ケラー協会の第28回ヘレンケラー・サリバン賞は日盲社協評議員で関西盲人ホーム理事・施設長の山口規子氏(57)に決まり、10月7日、贈賞式が同協会ホールで行われました。
 クリスチャンである山口規子氏は、1987(昭和62)年に、全盲の玉田敬次牧師(故人)が当時理事長を務める関西盲人ホームに事務員兼指導員として入職しました。
 同ホームは、1930(昭和5)年に盲婦人の越岡ふみが、全盲の『点字毎日』編集長であった中村京太郎のバックアップを得て、盲婦人が相互扶助の生活を行い、外来者に対する鍼 ・あん摩 ・マッサージを施術して、自立への研鑚をはかる施設として設立しました。
 山口氏が入職した当時、関西盲人ホームの昭和寮には13、14人、同甲東寮には6、7人の計19~21人の利用者がおり、それを施設長1人と寮母2人、事務員(山口)の計4人で世話していました。しかし、現在の利用者は3人の寮生と通いの2人の計5人で、スタッフは施設長の山口と、週に2・3度調理を頼んでいるパートタイマー3人だけです。
 玉田牧師の夫人である玉田恵美子さん(87)は、「山口さんとは盲晴高校生キャンプで出会って、夫婦で引っ張り込んだんです。盲人ホームは斜陽で実際にはお給料も払えなくなったし、こんなこと言っちゃ悪いんだけど、彼女はとにかく便利なんです。本来やらなくていいことでも、なんでもやってくれたんです」と証言します。
 一方、山口氏は玉田牧師を説得して1992(平成4)年11月歩行訓練士の資格を取得します。また、1998(平成10)年10月からは歩行訓練士として、ガイドヘルパー養成研修の講師も行っています。
 本業の盲人ホームでは、33年間で約90人の視覚障害者女性の自立を支援してきました。本業外の歩行訓練士としては、活動拠点の兵庫県西宮市のみならず、歩行訓練士がいない兵庫県の郡部、淡路島や日本海側の各地に及ぶまで、困っている視覚障害者に歩行訓練を実施し、単独歩行が可能となり自立したり、職場復帰できた方は西宮市で138人、兵庫県全域で約200人におよんでいます。(編集部)

    鈴和代さんの鳥居伊都賞受賞を祝す―― この賞に最も相応しい人 ――
    日本点字技能師協会元理事長 込山 光廣
 2020(令和2)年8月、京都ライトハウスが贈る「第24回鳥居伊都賞」を埼玉県で点訳ボランティアとして活動する鈴和代さんが受賞しました。この賞は、視覚障害者の活動を支えてきた人を称えるために1997(平成9)年に創設されたものです。
 第3回点字技能師試験に合格したわたしは、鈴さんと日本点字技能師協会(日点協)を設立し、NPO法人を取得して、点字技能師を公的資格にするように求めて活動し、2004(平成16)年に厚生労働大臣認定の「社内資格」とすることができました。
 わたしが日点協の理事長として活動していた9年間、鈴さんには事務局として、面倒な事務作業も遺漏なくしてもらいました。
 鈴さんは、点字技能師と点字指導員の資格をもっており、一流の点訳者であることはもちろん、ヘルパーの資格を生かして老人介護施設での仕事や「傾聴ボランティア」としても活動していました。また、日本視覚障害者職能開発センターで、就労や復職を希望する視覚障害者にパソコンを教えていたこともあります。さらに日盲社協社内検定試験事務局でも職員として数年間勤務していて、点字技能師試験の事前準備はもとより、結果分析まで行う、抜群の事務処理能力をもった実務者であるといえます。
 鈴さんは、学習意欲が旺盛で、点字や視覚障害者に関して学んだことを身をもって実践している人です。本心から優しい人で、「(視覚障害者が)困っていたり、不便を感じたりしているのを黙って見ていられない人」です。援助するために身体が勝手に動いてしまうのでしょう。
 鈴さんは夫君の転勤に伴って数年ごとに生活の場を変えていましたが、何処でも地元の点訳グループに入り、視覚障害者の援助を行っていたようです。
 鈴さんは、視覚障害者のガイド・援助者としてもとても優れています。周囲の風景を的確に説明してくれるだけでなく、ご自分が感動したことをそのまま伝えてくれます。だから、ガイドされているという意識はなくて、親しい友達と活き活きとした街の様子を共有している気分になります。
 現在、鈴さんは日本点字委員会の事務局員として、全国視覚障害児童・生徒用教科書点訳連絡会の理事・事務局員として、和光市の点訳グループ「あいの会」や埼玉点訳研究会などで活動しています。
 鈴さんが持てる能力を発揮して活躍できているのには、夫君浩樹さんの理解も与って力ありと拝察しています。

    わが施設の今
    第4回オーテピア高知声と点字の図書館
    オーテピア高知声と点字の図書館館長 坂本康久
 高知市立高知点字図書館は、2018(平成30)年7月に、高知市追手筋に開設された新図書館等複合施設「オーテピア」の中に、オーテピア高知声と点字の図書館としてリニューアルオープンしました。
 オーテピアは、高知県と高知市が合同で施設整備を行い、オーテピア高知図書館、オーテピア高知声と点字の図書館、高知みらい科学館の3施設を併設する複合施設です。
 図書館は高知県立図書館と高知市立市民図書館本館の共同運営で、声と点字の図書館とみらい科学館は運営を市が行い、運営経費の半分を県が負担することで、オーテピアは高知のすべての人にサービスを提供する施設として運営されています。
 リニューアルにあたり、声と点字の図書館は1階に設置しました。録音図書や点字図書、マルチメディアデイジー図書などの様々なバリアフリー図書や、視覚障害者用の福祉機器などを展示・体験できるスペースをエントランスに隣接して設置することで、誰もが入りやすいようにしたのです。
 オーテピアの年間入場者は約100万人で、声と点字の図書館も開館後約1年で来館者10万人を達成しました。
 サービスの対象者も視覚障害者だけでなくすべての読書が困難な人を対象としています。デイジー図書再生機の貸し出し、視覚障害者以外の方へのUSBメモリーでの録音図書郵送貸し出し、訪問しての再生機貸し出し、操作指導などアウトリーチサービスにも力をいれています。その他にも併設の図書館と共同で、特別支援学校、福祉施設、医療機関、市町村図書館へバリアフリー図書や再生機をセットで貸し出す「さくらバリアフリー文庫」という団体貸出サービスも行なっています。
 昨年、読書バリアフリー法が制定されましたが、高知県はサピエ図書館の登録館が当館のみで、他に1館もない状況です。多くの読書が困難な人の読書環境の向上には、住民に身近な市町村図書館でのサービス提供が不可欠なので、今年から市町村図書館への出前講座「読書バリアフリーサービス基礎講座」を始めました。
 正直、行き当たりばったりでやってきた感じなのですが、とにかく「できることはやってみよう」ということで頑張っているオーテピア高知声と点字の図書館です。

    (オンライン座談会)
    コロナ禍における日盲社協の現状と対策・展望
 【本年4月7日に、政府は新型コロナウイルス感染症の急速な拡大を踏まえて緊急事態宣言を発令しました。それを受けて日盲社協は、6月に滋賀県で予定していた全国盲人福祉施設大会を中止し、各部会も次々に職員研修会等を中止しました。
 そこで、Web会議サービスのZoomによる座談会で、コロナ禍における日盲社協の現状と対策そして展望等を、日盲社協舛尾政美理事長(山口県盲人福祉協会理事長)、長岡雄一常務理事(東京視覚障害者生活支援センター所長)、荒川明宏常務理事(株式会社ラビット代表取締役社長)に語っていただきました。
 司会は福山博広報委員長(東京ヘレン・ケラー協会業務執行理事)が務めました。】

 司会:舛尾先生は山口県下関市在住ですが、さすがに緊急事態宣言下での上京は難しかったのではないですか?
 舛尾:3月2日の常務会を最後に、それ以降は上京していません。年度が始まってからの理事会も書面による「みなし決議」でした。滋賀大会や日視連の仙台大会をはじめ、軒並み会議が中止になり、大変歯がゆい思いをしました。
 司会:長岡さんと荒川さんはずっと東京で、大変だったのではないですか?
 長岡:東京視覚障害者生活支援センター(支援センター)は4月6日から5月末まで通所訓練を中止し、職員は自宅待機し、4月中旬から職員間でオンライン会議ができるようにしました。その教訓は在宅でも職員との意思は通じるということです。ただオンライン会議の善し悪しとは別問題ですが。緊急事態宣言下ではほんとに動けなくて、周りの人が動くのが不思議なくらい緊迫感がありました。これはうちだけじゃなくて新宿区内の日本視覚障害者職能開発センターや日本点字図書館(日点)自立支援室も通所を休止しました。とにかく新宿近辺は、クラスターの問題とかでかなり危険だったんです。入所施設だとシャットアウトできますが、通所施設はそれができないので、恐怖感が強くピリピリしていました。
 司会:私どものヘレン・ケラー学院は、4月7日に予定していた入学式を6月1日に延期しましたが、盲人用具部会の施設はそうはいきませんよね。
 荒川:ラビットではテレワークを推進するための機器を買いそろえ、5月の連休の頃には視覚障害社員は全員テレワークができるようにしました。同時に営業時間も短くして午後4時に終わって5時には帰れるようにしました。混んでいる電車に乗らないように、朝は午前9時を8時出勤にして、早く始めて、早く帰るシフトにしました。その後、社員全員がテレワークできるよう、電話システムを完全に交換する工事が7月下旬に完成しました。たしかに郵便とかは受け取れませんが、それ以外はすべてテレワークで完結できます。一方、ラビットでは同行援護事業も行っていますが、利用者数は4月と5月はがくっと減り、従来は来社が多かったのに、まったくなくなりました。その分Zoomを使っていろんな商品の説明会とかをやり始めたら、全国から参加がありました。そして私は従来はとても出張が多かったのですが、それがすべてなくなりました。今は何度も出張するよりテレビ会議を頻繁にやるほうが効率がいいとさえ感じています。
 司会:つい最近ラビットに電話したらなかなか通じないので、出向こうと思ったのですが、行かなくてよかったです(笑い)。舛尾先生は生活施設部会の養護盲老人ホーム春光苑、それから情報サービス部会の点字図書館、自立支援部会の共同生活援助事業所光明園を経営されておりますが、春光苑を中心にどう対処されたのでしょうか?
 舛尾:春光苑には50名ほど入所者がいますが、全然外に出ることができません。外部から来られた方は体温を測り、熱があればすぐにお引き取りいただきます。入所者の家族も玄関先で話はできますが、それより内へは入れません。一方、光明園はある程度一般家庭と同じようにという考えがありますので、通院や買い物もできます。事業の一環としてホームヘルパー派遣事業も行っていますので、介護と同行援護どちらも利用できますが、4月と5月は少し事業を縮小しました。山口県のコロナ感染者は比較的少ないので、外に出る方が健康を保てるとヘルパーに協力を呼びかけて、人のいない公園とか神社とかに散策に行くことを勧めました。しかし、今年は大変な猛暑が続き、実際は外に出ることは困難でした。
 荒川:従来の同行援護は趣味などで出かけると人も多かったのですが、今は通院とかピンポイントの目的だけで、残念ですね。
 司会:私どもの点字図書館の例をあげますと、緊急事態宣言下では開館時間を午前10時から午後4時に短縮して、職員は週に1回だけ午前11時から午後3時の勤務とし、それ以外は在宅勤務としました。でも館長だけが平日の午前8時から午後4時まで毎日勤務していました。次に点字出版所ですが、ご存じのように『点字ジャーナル』という月刊誌と、『ライト&ライフ』という月に2回発行する半月刊誌を発行しています。そのほかに『広報東京都』をはじめとする多くの地方公共団体の広報点字版・音声版の発行を委託されています。視覚障害者は、ただでさえ情報障害者といわれておりますので、今般のような緊急事態にこそ常にもまして正確な情報保証が強く求められるとの考えから、原則として通常業務としました。ただし、緊急事態宣言中は各部署の判断で、在宅勤務や勤務時間の変更、短縮を認めることにし、かなりの職員が午前中仕事をして午後帰るとかしていました。もちろん、各部署には自由に使えるマスクと手指消毒ボトルを設置し、空調を効かしながらも換気を行うとか、あるいは業務用扇風機を購入して風を送るとか、飛沫防止パーテーションを使って三密にならないようにしました。また、読み合わせ校正を行う編集課の一部は、この間会議室で業務を行いました。後期高齢者と同居する視覚障害者は自宅でのテレワークとし、バイク便で点字校正紙を送ってスカイプの無料通話で読み合わせ校正を行いました。点訳も部分的にテレワークを実施しましたが、このために教科書の点訳に関しては、文部科学省から点字教科書の原稿を持ち出す許可を、地方公共団体の点字広報につきましては原稿を持ち出す許可を取りました。現在、点字出版所は通常業務ですが、点字図書館は午前10時から午後4時までの時短勤務です。ヘレン・ケラー学院は通常の授業を行っていますが、臨床実習の患者を外部から取らないで職員が学用患者を務めています。先ほど舛尾先生は山口県の方はあまりコロナ患者はいないとおっしゃっていましたが、新宿区は今非常に人聞きの悪い場所になっています。私どもの協会に隣接する新宿北郵便局(新宿北局)の配達員からコロナ陽性反応が8月に出たので、当分の間閉鎖されますと張り紙が出て大騒ぎになりました。結局、翌朝新宿北局は開いたので大事には至りませんでした。その後9月にも新宿北局の配達員から陽性反応が出て再び閉鎖になりました。しかし、このときは慣れたもので、窓口の課長が出てきて、「明日の朝には開けるつもりですが、それを判断するのは保健所です。それで万が一、明日も閉鎖ということになったら、新宿郵便局に盲人用郵便を持って行ってください。新宿北局に差し出すのと同じ条件で引き受けます」と太鼓判を押してくれました。また、私どもが入居している毎日新聞早稲田別館の4階にある会社の家族から陽性反応が出たので、濃厚接触者ということでその会社の社員が隔離され、4階のフロアーが閉鎖され消毒されました。これは新宿区ではないのですが、私どもの管理職の父親が通っているデイサービス施設の職員からコロナ患者が出て、親子ですから濃厚接触者ということで、その管理職には2週間職場を休んで貰いました。ところで、今年の11月に予定されていた視覚障害者向けの総合イベントサイトワールドも中止になりましたね。
 荒川:どう考えても三密を避けられないので、3月末の時点で中止にしました。そのため、判断が早すぎると叩かれました。
 長岡:そこは物に触らなければわからないという視覚障害の特性が関係します。また、社会的距離の取り方も問題になります。サイトワールドには最新の盲人用具に触りたくて皆さん来るわけです。しかし1回触るたびに消毒していたら、展示会としては成立しません。あの段階でサイトワールドを中止は大正解だと思いますね。
 荒川:ちなみに今はどうしたら来年開催できるか、考えているところです。
 司会:サイトワールドもそうですが、来年の日盲社協の大会はどうなるんですか?
 舛尾:今の段階ではちょっと決めるのは難しいので、これからテレビ会議(Zoom)による常務会、理事会で結論を出すことになります。
 司会:滋賀県でやるわけにはいかないのですか?
 舛尾:滋賀県の施設は、ちょうど今年度末に指定管理期間が満了するので無理なのです。
 荒川:どう転がってもいいように、東京でやるとか、思い切ったことをやらないと、持ち回りでやるというわけにはいかないんじゃないですか。
 長岡:時期的な問題もあるとは思うんですよ。今まで6月に開催していましたが、それにこだわる必要があるのか? 年度が変わって2ヶ月後というのは厳しいですからね。オリンピック・パラリンピックも控えていますし、来年は理事や評議員の改選もあり、6月にいろいろなものが集中するのがいいのかどうか?
 司会:日盲社協では理事会とか評議員会もオンラインでやるのですか?
 舛尾:できるんじゃないかと私は思っています。
 司会:法的な問題はないのですか?
 長岡:厚労省もWeb会議・テレビ会議を認めていますので、全く問題ありません。文書でやるよりはずっといいと思いますよ。ただ、最近在宅での訓練ということがいわれるようになってきました。訓練は対面でやるのと、オンラインでできる側面があります。しかしちょっと怖いのは、オンラインばかりに偏ると質の問題が保証されません。費用が発生し、報酬もいただいているので、対面でやっているのと同等同質のオンラインでの訓練がやれなければ、それは利用者に対して失礼なことになります。何でもかんでも訓練の提供という中で、オンラインでできるという流れはちょっと怖いですね。
 司会:今の大学の授業は、ほとんどオンラインでやっているようですね。
 長岡:秋田大学の調査によるとビデオによるオンライン授業で、うつになった人が1割ぐらいいました。特に視覚障害者に対するオンラインの訓練は、ビデオでは意味がありません。やはり訓練ですから対象者の反応を知り、フィードバックもしなくてはいけません。そういった質の問題を問わなければいけないと思いますね。
 司会:9月2日に日盲委の選挙プロジェクトで点字選挙公報の研修会がオンラインで行われました。それに参加して、私はすごく眠たくなったのです(笑い)。今日はこういう風にしゃべっているともちろん眠くならないわけですが、どうしても一方的に聞いていると子守歌みたいに聞こえてしまいます。
 荒川:私は一人の視覚障害者の学生に大学の授業でコンピュータを教えています。Zoomでやっているのですが、相手の反応がないから一本調子になり、聞く方もつらいんだろうなと思いましたね。私はやりながら相手の反応を想像して盛り上げようと思うんですが、どうしても単調でつまらない話になってしまいました。
 長岡:臨床系の実技を伴うものはオンラインでは無理なんです。うちも就労移行でマッサージとかやるんですが、外部から患者を呼べないので、今年度の受講者には大変申し訳ないと感じています。この前視能訓練士の学校に行って話を聞いたら、学生は眼科外来での接触が難しいんですね。この後国家試験を受けて合格してもあんまり実習ができなかった視能訓練士の質の問題をどう考えるのか、大きな問題ですね。
 司会:ヘレン・ケラー学院の臨床も、職員が学用患者になるのですが、みんな協力的かというと特に鍼の患者になってもいいという職員はすごく少ないのです。そうするといつも同じメンバーが患者になり、いつまで続くのかとなります。しかしコロナ禍は、ワクチンとか特効薬ができるまではなんだか収まらない感じですよね。
 舛尾:来年オリンピック・パラリンピックが開かれる予定ですが、私は難しいと思います。来年までは難しく、その先はワクチンや薬で抑えると思いますが、今年も来年もあまり変わらないということを前提に進めていかなければなりません。
 司会:そうすると来年6月の日盲社協大会も厳しいじゃないですか? かといって日盲社協の大会をZoomでやるわけにはいかないでしょうしね。
 長岡:来年のスケジュールをもう1回改めて考えないといけないですね。絶対守らないといけないスケジュールって理事会は当然ですが、たぶん6月にやる定時評議員会くらいですよね。コロナはおそらく来年は収束しないので、これを契機に全体的なスケジュールをどう組み立てるか、もう1度考えた方がいいのではないでしょうか。それから日盲社協は施設の集まりですから、特に自立支援とか生活施設がそうですが、人に対してのサービス提供を行う職員への安全性の担保をどうするかが、すごく大事だと思います。うちでは4月と5月に職員は出勤していましたが、利用者には休んでもらいました。するとある職員が「これで利用者の方に移さなくて済む」と言ったんです。実際に感染しているわけでもないのに、常にその恐怖があるのです。そういった人にサービスを提供する者に対する安全性の担保。東京都世田谷区は介護施設とか障害施設の職員に対するPCR検査をやると言っていますが、そういったことを積極的に進めてもらいたいですね。それから、来年3月から障害者雇用率が2.3%になります。支援センターも就労移行をやっていますが、現在、求人が激減してほとんどありません。一般の求人も少ないので下手すれば解雇していくなかで、障害者雇用率が上がって、採用が冷え込む可能性があるかも知れません。実はヘルスキーパーは、今、自宅待機という方がとても多いのです。果たしてこのまま自宅待機が続いていくのかどうか。その辺も私たちは考えなければいけないことです。2月、3月以来全くコロナが分からなくて、私たちも必要以上に怖れていたこともありました。それが少しずつ整理されてきて、このくらいなら大丈夫ということも少しずつ分かってきました。また大会の話ですが、東京でやるのは当然として、人数制限をするとか、時間を短くするとかそういうことも含めてできるだけ実施できる方向を探る必要があります。いくらオンラインが進んできたからといって、長く人と人が顔を合わせないでいると、やはりだんだんと関係性が薄れていき、組織として弱体化します。オンラインも充実させる必要がありますが、対面での接触も少しずつ図れるようにする必要があると思いますね。
 荒川:私も全国大会はやるべきだと思います。やはり先達の話を聞くことによって得られるものってありますからね。いろんな部会の代表者から集約して、コロナ禍でどんな問題が起きたのかとか、そういったことを情報共有していくことも、将来、新たな問題が起きた時のためのよすがになるのではないでしょうか。コロナをテーマにした情報の共有を全国大会でやればいいんじゃないでしょうか? 眠くなるとか、いろんな問題があるでしょうが、それを解消しながら、平行してオンラインでもやる方法もあると思います。普段参加できない職員の方も参加しやすくなるので、決してオンラインでやることがすべてマイナスではありません。サイトワールドも同じように考えているのですが、視覚障害者にとって情報はとても大切です。もちろん雇用も大事で、私自身もっと視覚障害者に多くの仕事が提供できるように考えております。
 舛尾:冒頭で述べましたが、コロナによって軒並み会議が中止になり、大変歯がゆい思いをしました。しかし、その反面東京に集まらなくてもテレビ会議で常務理事会が開けましたし、理事会も評議員会もテレビ会議でできるでしょう。このコロナ禍で得た経験を活かして、今後これまでと違った経費をかけない日盲社協の運営ができるんじゃないかと期待しているところです。
 司会:ぼんやりとではありますが、コロナ禍での日盲社協の活動や来年の大会がイメージできたように思います。本日は長時間ありがとうございました。

    令和2年度アピール・決議、奉仕者(ボランティア)表彰者名簿
  アピール
 新型コロナウイルスの感染拡大という、これまで経験したことのない禍が世界を覆いました。視覚障害者を取り巻く生活環境も一変し、当事者にとっても支援する施設にとっても困難な状況が続いています。
 平時でも、情報の不足と移動の困難が障壁となっている視覚障害者にとって、このコロナ禍ではさらに、生活訓練を受けられない、作業所へ通所できない、同行援護を利用できない、あはき業をはじめとした仕事の激減、給付金申請ができないなど、影響は甚大です。そして、もし自分や家族が新型コロナウイルスに感染してしまったらどうすればよいかという、強い不安感を抱えています。
 そのような視覚障害者の状況を目の当たりにし、緊急事態という中で私たちは何をすべきか、施設の在り方を改めて考える必要に迫られています。また、施設の運営面においても、収入の減少、感染を防ぐための施設整備、職員の勤務体制、ボランティアの活動休止など、新たな課題が出ています。新しい生活様式の実践が叫ばれる中、課題の改善を図るには「視覚障害者福祉施設とはこうである」という既成概念だけにとらわれず考え直すことも肝要です。そのためには、個々の施設の努力は当然ながら、日盲社協という大きな枠組みでの取り組みも必要です。
 今年、大会を開催する予定だった滋賀県には、近江商人が全国にネットワークを広げて活躍していた時代から『三方よし』の精神が伝わっています。「買い手よし・売り手よし・世間よし」の考え方は、現代でも多くの企業で経営理念に取り入れられていますが、私たちには「利用者よし・施設よし・社会よし」と置き換えることができます。様々な課題が山積している今こそ、日盲社協が長年積み重ねてきた実績と組織力を活かし、視覚障害者・加盟施設・社会全体に存在意義を示す時だと確信いたします。
 この度は、“Mother Lake母なる湖”琵琶湖の畔に加盟施設が一堂に会することはありませんでしたが、日盲社協の名のもとに互いの連携をさらに強固なものとし、直面しているコロナ禍を乗り越え、さらにこの先のいかなる災害や社会情勢の変化においても、視覚障害者が社会から取り残されることのないよう、持てる力を集結して課題の解決に取り組むことを宣言いたします。
令和2年8月1日
社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会

  決議
【点字出版部会】
 1.選挙公報は、国民の基本的人権である参政権行使のための重要な情報源であり、「公職選挙法」では国政等の選挙で発行が義務づけられています。視覚障害者等のために発行される点字版・音声版・拡大版の「選挙のお知らせ」も、選挙公報として発行が義務づけられることを強く要望します。
 また、「選挙のお知らせ」が有権者に届けられていなかったり、投票所においては、秘密保持の問題事例や盲ろう者等視聴覚障害者が適切な支援がないために選挙権が行使できなかったりしています。都道府県の選挙管理委員会に対し、こうした事例が改善されるよう指導強化を切に要望します。
 1.点字出版所は視覚障害関係事業の中で最も古い歴史があり、視覚障害者の社会進出と社会参加を支えて来ました。主な事業である点字教科書・点字図書・点字版選挙公報・各種広報誌の安定供給には、点字製版機や印刷機を常に万全の状態に維持する必要があります。そのため、点字製版・印刷機の新規購入や保守管理等の費用について補助されることを強く要望します。

【情報サービス部会】
 1.「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)の基本理念の一つである「障害の種類及び程度に応じた配慮」を推進するためにも、専門的支援者となる「情報化対応支援員」を全ての視覚障害者情報提供施設に配置するよう国庫負担金の増額を要望する。
 1.2019年度から増額された「情報化対応特別管理費の加算単価」について、指定管理施設を含む全ての対象施設に支給され地域格差が是正されるよう要望する。

【自立支援施設部会】
 1.機能訓練サービスについて、視覚障害者の多様なニーズや支援の専門性の観点から短期、長期の利用が可能となる柔軟な制度の運用、福祉資源の乏しい地域の解消のための制度の見直し並びに専門職の養成の充実を要望します。
 1.盲導犬(補助犬)育成について、60%を下回る盲導犬育成経費の公的支援率を上げる取り組みと、年間1500回を超えるフォローアップ訓練に訓練費の助成が支給されるよう制度の見直しを要望します。
 1.盲人ホーム事業の安定的運営のための助成金の増額を要望します。
 1.新型コロナ感染対策として、利用者の健康と安全のため事業を縮小または停止している施設の収入が激減しています。収入補填を強く要望します。逆に感染拡大の状況において、サービス提供の継続を求められている障害福祉サービス事業所等の職員、利用者に対して、安心してサービスを提供し、受けられることの大前提として、公費でのPCR検査や抗体検査等の実施を強く要望します。
 1.新型コロナによる経済活動の停滞により、生産活動(就労継続事業、盲人ホーム事業)による収入が減少し、利用者工賃に影響が出ています。収入補填ができる仕組みの検討を強く要望します。

【生活施設部会】
 1.最近は、視覚障害者が養護盲老人ホームへの入所を希望しても、措置控えをする市町村が多くなっているため、視覚障害者の盲老人ホームへの入所が実現しにくくなっていますので、国は早急に措置控えを解消するように全国の市町村を指導されるよう要望します。
 1.65歳を過ぎてから失明した視覚障害者も、グループホームに入居できるように国はグループホームの入居基準を改善されるよう要望します。

【盲人用具部会】
 1.日常生活用具に関する給付について、地域格差がないよう、公正な用具認定がされるよう、各市区町村への指導及び調査を要望する。
 1.各市区町村の福祉課窓口で、視覚障害に対しては、日常生活用具等の給付事業内容について説明することを要望します。
令和2年8月
社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会

    奉仕者(ボランティア)表彰者名簿
 以下、施設名、氏名(敬称略)、奉仕内容の順。
 日本赤十字社北海道支部点字図書センター 坂口静子(点訳)・高田菜穂子(音訳)
 函館視覚障害者図書館 石山みち子(点訳)・澤邊伊都子(点訳)
 旭川点字図書館 瀬川加代子(音訳)・稲村笑子(点訳)
 北海点字図書館 菅原テル(点訳)・伊藤宏子(点訳)
 青森県視覚障害者情報センター 中原美子(点訳)・石橋由紀子(音訳)
 岩手県立視聴覚障がい者情報センター 長澤京子(点訳)・松本乃雅子(音訳)
 宮城県視覚障害者情報センター 大竹婦美子(点訳)・林孝(音訳)
 秋田県点字図書館 小玉祥子(点訳)・菅原祐子(音訳)
 山形県立点字図書館 山木隆治(点訳)・遠藤文子(音訳)
 福島県点字図書館 渡邉征子(点訳)・水戸美知代(音訳)
 とちぎ視聴覚障害者情報センター 市川千惠子(音訳)・齋藤美登里(作業奉仕)
 群馬県立点字図書館 山田悦子(点訳)・上村典子(音訳)
 視覚障害者総合支援センターちば 佐藤美津子(点訳)・桐山秋子(音訳)
 日本視覚障害者団体連合情報部 宮本幸子(点訳)・有田妙子(音訳)
 日本点字図書館 廣瀬三樹子(朗読・デイジー編集)・三羽静子(点訳)
 大田区立障がい者総合サポートセンター大田区声の図書室 てんとう虫’84(点訳)
 ロゴス点字図書館 山本桂子(音訳)
 横須賀市点字図書館 千葉信子(音訳)
 神奈川県ライトセンター 長山哲子(点訳)・恩田才美(録音)・高橋不二子(拡大写本)
 新潟県視覚障害者情報センター 後藤令子(作業奉仕)・加藤良子(点訳・作業奉仕)
 福井県視覚障害者福祉協会情報提供センター 大久保けい子(音訳)、中庄司匡子(点訳)
 山梨ライトハウス情報文化センター 坂本みつ子(点訳)・原野由美子(音訳)
 静岡県視覚障害者情報支援センター 沖田裕子(音訳)・花井久美子(点訳)
 名古屋盲人情報文化センター 前田さよ子(点訳)・浦部頼子(録音図書製作)
 三重県視覚障害者支援センター 竹岡英夫(音訳)・三宅治子(点訳)
 上野点字図書館 原田広子(点訳)、岡森芳子(音訳)
 滋賀県立視覚障害者センター 岡野芙佐子(点訳)・古谷あや子(音訳)
 京都ライトハウス情報ステーション 岡田ゆき子(点訳)・田中康恵(調査)
 障害者支援施設洛西寮 八木隆子(外出支援)・半田右子(外出・作業支援)
 丹後視力障害者福祉センター 飯塚ひかる(音訳)・最上公野(点訳)
 大阪府立福祉情報コミュニケーションセンター点字図書館 伊山民代子(音訳)・石﨑靖子(点訳)
 堺市立健康福祉プラザ視覚・聴覚障害者センター 上野道子(音訳)・小田原典子(点訳)
 兵庫県点字図書館 田靡眞規子(点訳)・錦織典子(音訳)
 神戸市立点字図書館 澤田洋子(点訳)・白石洋子(音訳)
 西宮市視覚障害者図書館 中野美恵子(点訳)・村田あきみ(点訳)
 奈良県視覚障害者福祉センター 工藤香津子(音訳)・内山多加子(点訳) 
 天理教点字文庫 津村広務(点訳)・上野桂子(音訳)
 鳥取県ライトハウス点字図書館 長瀬晴美(点訳)・畑山真砂子(音訳)
 ライトハウスライブラリー 岩佐泰子(点訳)・岩成和子(音訳)
 周南視覚障害者図書館 小林康弘(点訳)・佐伯恵子(点訳・外出支援)
 徳島県立障がい者交流プラザ視聴覚障がい者支援センター 生田洋子(点訳)・三木佳奈子(朗読)
 香川県視覚障害者福祉センター 林るみ子(点訳)・田中敏子(音訳)
 愛媛県視聴覚福祉センター 三室文子(点訳)・田上早苗(音訳)
 北九州市立点字図書館 大庭伊勢代(音訳)
 福岡市立点字図書館 山川圭子(音訳)・岸岡博子(点訳)
 福岡点字図書館 柴田征子(点訳)・徳見久恵(音訳)
 長崎県視覚障害者情報センター 宮本康子(点訳)
 声の奉仕会・マリア文庫 光永マリ子(作業奉仕)・本山純子(作業奉仕)
 熊本県点字図書館 米村フジ代(点訳)・藏原照子(音訳)
 都城市点字図書館 山田純子(点訳)
 鹿児島県視聴覚障害者情報センター 原康子(点訳)・笹平千和子(音訳)
 ※受賞記念品は、江戸切子風鈴と開運根付

    新型コロナウイルスに関するアンケート報告
    自立支援施設部会長 山下文明
 日盲社協自立支援施設部会の会員施設は、その多くが障害者総合支援法や補助犬法に基づき、直接的に視覚障害当事者に対して様々なサービスを提供しています。
 今回の新型コロナウイルスは、利用者の安心・安全、職員や地域の安全、施設経営に多大な影響があると予想されました。そこで非常事態宣言下の4月に部会施設の状況を把握するべくアンケート調査を実施すると、年度初めの忙しい時期にもかかわらず、18施設より回答をいただきました。
 ここにその報告をしますが、統計的データとしては母数が少ないので、回答をそのまままとめる形としました。事業種別の違いや入所・通所による違い、そして感染状況の異なる地域による違い等がありますが、それぞれの施設・事業現場の切実な声です。なお、アンケートの一部提言は、令和2年度決議(14ページ)に反映させました。
 アンケートは20ページに示したように15の質問を設定し、盲人ホーム7、自立訓練6、就労継続2、生活介護・盲養護・盲導犬育成各1の施設より回答を得ました。

  新型コロナウイルスに関するアンケートに対する回答

【事業の継続状況】
 4月11日~5月31日はマッサージ業務等は休んだが、点字印刷その他の業務は継続している。(盲人ホーム)
 就労継続支援B型のテープ起こし作業、就労移行支援は全面休業状態。(継続B)
 治療院は閉鎖している。来館や訪問してのサービス提供は中止しているが、リモートでの訓練や電話、メールなどでの相談対応は行っている。(自立訓練)
 通所訓練と短期入所は休止。入所者の外泊、外出、面会の禁止。交通機関利用訓練の停止。外出行事および施設内大規模行事の中止。ボランティア受け入れ中止。外部医療機関受診の一部制限等。(自立訓練、施設入所)
 職員は各課1名ずつ、当番制で出勤。全体会議はMicrosoft Teamsを使用。(自立訓練)
 日中活動については、朝のラッシュ時間を避けるため利用開始時間を遅らせて短縮。(継続B)
 同行援護は不要不急のものは延期、自粛。4月以降全面休業、職員も原則テレワークの体制を敷いている。(継続B、就労移行)
 3月上旬から6月末頃まで、学校講演、見学会、イベント、募金活動、記念式典、諸団体の例会などすべての参加事業が中止または延期になった。(盲導犬育成)
 感染予防のため、職員の出勤人数を縮小し、電車通勤の職員は協会の車を使って自動車通勤に切り替えている。(盲導犬育成)
 通所、訪問でのサービス提供はすべて停止。電話を10~15時(通常は9~17時)に短縮し、木曜日を臨時休館日にしている。(自立訓練)
 通所訓練全面休止、短期入所受け入れ停止。(自立訓練、施設入所)

【感染予防対策】
 検温記録、作業場の分散、食事の分散、マスク着用、手洗いチェック、各所の消毒、換気の徹底。外来者への対応の強化、不要不急な外出の自粛要請、一時的な時短や時差出勤への対応。在宅訓練の導入、外出・出張や人が集まる活動の見合わせ・延期・縮小。体調不良時および感染が懸念されるケースの利用・出勤のルールの徹底など。(施設入所、継続B)
 施設内の換気、共用タオルをペーパータオルに変更した。(盲導犬育成)
 入所者と通所者が混在しないように訓練プログラムを調整。(自立訓練、施設入所)
 食堂内の席の間隔をあける。一方向を向いての喫食。整列時の間隔の線引き等。(自立訓練、施設入所)
 各自ポケットアルコール持参での支援(一介助ごと)。(自立訓練、施設入所)
 面会者は全面館内立ち入り禁止。業者は建物外で受け渡し。関係機関は必要最小限で居住エリア外にて対応。(自立訓練、施設入所)

【感染予防資材】
 体温計がない。音声の出るものが欲しい。(盲人ホーム)
 現段階では問題ないが、マスクやアルコール等については、継続的に確保中。(自立訓練)
 自治体等からの配布や寄付などもあり何とかやりくりしている。(施設入所、継続B)
 開院に際しての非接触の体温計が、手に入らない。(盲人ホーム)

【施設行事や会議・研修会等の実施状況】
 基本的にはすべて中止。センターの会議はwebにて実施。(自立訓練)
 テレワークが原則で、センター内会議はZoomで実施している。理事会・評議員会などは決議省略。(継続B)
 研修会は外部内部ともに中止、通常の会議は換気や三密等に注意して環境を工夫した上で実施。(自立訓練、施設入所)

【人員不足等の状況】
 小学生ならびに幼稚園、保育園に通学、通園中の子供をもつ職員が複数おり、他の職員がその部分を補うことがある。不足とまでは言えない。(自立訓練)
 当番制の出勤を導入後は、学齢の子供さんを持つ職員だけではなく、介護等の必要な家族のいる職員についても、自宅待機とし、当番には組み込んでいない。(自立訓練)
 休暇取得職員は多数いたが職員間で協力し大事には至らなかった。(施設入所、継続B)
 法人内保育所・学童により、人手不足にはなっていない。(施設入所、生活介護)

【事業(支援)の状況】
 一部在宅支援(遠隔支援)をしているが、ネット環境整備、利用者のスキル等に限りがあり、集団指導ができず、利用率確保に限界がある。(継続B)
 通所や訪問での訓練はすべて停止しているので、リモートでのICT訓練や点字訓練を行っている。リモートデスクトップ接続、Zoom、ライン電話などを使用している。(自立訓練)
 通所利用者は落ち着いて対応してくれており、通所再開に向け待機している。(自立訓練)
 通所者向けに「声の便り」を発送、不安の回避に努めている。(自立訓練)
 入所と通所エリアを区分けしており、訓練や食事も別室で実施している。自粛中の方へは電話等で適宜状況を確認し、電話やメール等で自習課題を提供する等している。オンラインによる訓練を検討している。(自立訓練、施設入所)

【生産活動(就労継続事業・盲人ホーム等)への影響】
 患者のキャンセルが重なり件数としては4月には50件の減少があった。(盲人ホーム)
 大きく影響あり。3月以降、右肩下がりで現在は前年度比で50%以上の落ち込み。(継続B)
 3月で半減、4月からはほとんど受注がない(10分の1以下)。(継続B)
 募金、募金箱収入がほぼ停止状態。(盲導犬育成)
 利用者の通所停止により、患者へのマッサージ施術が皆無となり、施設への利用者負担金収入はゼロ、利用者自身も施術料収入がゼロ。よって、利用者への技術指導も、就職へ向けた自立更生にも影響が生じている。(盲人ホーム)

【事業への影響:利用状況】
 緊急事態宣言が出てからは、40%減。(盲人ホーム)
 2月、3月で述べ100人近くが利用自粛。(自立訓練)
 4月については、3日間しか訓練を実施していない。(自立訓練)
 生活介護、地域包括支援センターでは30~50%の落ち込み。利用者は9割減。(継続B)
 前年比として約60%の減少。(盲人ホーム)

【事業への影響:事業収入】
 緊急事態宣言が出てからは、66%減。(盲人ホーム)
 100万円程度の減収。4月は前述のとおり、3日間しか訓練を実施しておらず、全体で700万円から800万円の減収。(自立訓練、就労移行)
 事業収入についても9割減。(継続B)
 3月は3分の2程度に減り、4月は4日間だけの施術であったのでゼロに近い。(盲人ホーム)
 訓練収入は8割減。(自立訓練)
 前年比として約60%の減少。(盲人ホーム)

【地域の状況:主管課(行政)からの指導・要請】
 社会福祉施設は事業継続が基本という考え方を示されているだけ。休業する場合は協議書を提出するようにとの指導のみ。(自立訓練)
 行政からは、福祉サービスは休業要請はしないので、しっかり感染防止対策を行ってくださいと言われた。リモートでの訓練もこの期間に限り、各自治体が認めれば報酬算定して良いと言われた。(自立訓練)

【行政への要望】
 鍼灸マッサージ業は気を付けて営業を続けてもよいカテゴリーに入っているが、病院とは違い実際にはキャンセルが多く補償がないため困る。(盲人ホーム)
 委託料の増額を願いたい。(盲人ホーム)
 収入は激減で、5月についてはゼロになる可能性が高い。出来高という現在の考え方から行けば、福祉事業所は、軒並み継続できなくなる。少なくともこの期間、前年度の同時期の利用率、あるいは直近の利用率の平均に応じて、報酬を認めるような制度を考えていただきたい。利用者の自己負担は必要ないので、市町村分だけでも給付を希望したい。(自立訓練・就労移行)
 就労継続支援の就労事業収入とそれに伴う利用者工賃の減少について報酬からの捻出以外にも国や自治体から何らかの方策があるとありがたい。(継続B)
 前年度訓練等給付費の7割程度を支給援助することを要望する。(自立訓練)
 民間企業と同じように、事業持続助成金を適用して欲しい。(自立訓練)
 コロナ後の視覚リハの方向性も含め、就労移行支援等と同様に機能訓練の遠隔訓練も利用カウントができるようお願いしたい。(自立訓練)

    新型コロナウイルスに関するアンケート(回答用紙)
施設名[                 ]
事業名[            ](複数あり)
地域(市単位まで):
回答日付:   年   月   日

【事業継続について】
①現時点で事業を続けていますか?または、何らかの形で活動の自粛や縮小をしていますか?具体的に教えてください。
□ 停止または縮小の内容を具体的に教えてください(期限、規模など)
②今後、事業の停止や縮小を考えていますか?具体的に教えてください。

【感染対策について】
③施設内における感染対策を具体的に教えてください(検温、手洗い、うがい、マスクなど)
④外来者(家族や業者等の訪問者)にはどのような対応をしていますか?(制限を設けたか?検温、マスクの着用、アルコール手指消毒など)
⑤感染予防資材は足りていますか?(マスク、アルコール消毒液、体温計など)

【行事や会議】
⑥施設行事や会議・研修会等の実施の中止や参加の取り止めなどありますか?
【利用者の状況】
⑦罹患者、濃厚接触者、体調不良者の発生など

【職員・ボランティアの状況】
⑧罹患者、濃厚接触者、体調不良者の発生など
⑨学校休校措置に伴い人手不足になった等の影響はありますか?

【事業の状況】
⑩サービスを提供するにあたり、感染予防の観点から工夫していることがあれば教えてください。(集団の訓練を少なくしている、対面しない工夫をしている、遠隔地訓練、電話対応、など。またその際の利用者の了解や反応の様子も教えてください)
⑪生産活動(就労継続事業)への影響はありますか?(受注減など)

【事業への影響】
⑫2月から4月までの間、利用者の減少があればどの程度か具体的に教えてください。
⑬2月から4月までの間、事業収入の減少があればどの程度か具体的に教えてください。

【地域の状況】
⑭主管課(市町村)からの指導・要請はありますか?

【行政への要望】
⑮国や市町村への要望があれば教えてください
 以上、ありがとうございました。

    <訃報>視覚障害者と共に活動することをenjoy! した岡田弥さん
    日本ライトハウス情報文化センター館長 竹下亘
当センターサービス部長の岡田弥さんが本年7月2日早朝、大阪市内の国道をバイクで走行中、交通事故に遭い、救急搬送先の病院で亡くなりました。円熟期を迎え、多方面で活躍中の56歳。ウイルス感染予防のため、奈良市の自宅からたまたまバイク通勤した日に、酒気帯び運転のクレーン車に巻き込まれるという許しがたい事故で、残念でなりません。
 岡田さんは1964年生まれ。京都大学で点訳サークルに入り、後輩の広瀬浩二郎さん(国立民族学博物館准教授)と親交を結び、大学院で視覚障害乳幼児の発達心理を研究したことから、1992年、当法人の職業・生活訓練センター(現・視覚障害リハビリテーションセンター)に入職。点字や歩行訓練の他、全国に先駆けてパソコンの利用支援やパソコンサポートボランティアの養成に務めた後、2001年、当センターに新設した「エンジョイ! グッズサロン」(現サービス部)に異動。視覚障害者用具の普及、パソコンや電子機器の利用支援、近隣地域への出張展示、眼科医療との連携によるロービジョン相談等を展開し、今日スタッフ14人、年間来室者5千人、電話相談3千件超という全国屈指の用具・機器サービスと相談の拠点になるまでの発展を導いてきました。
 岡田さんが際だっていたのは、秀でた知性と豊富な知識に加えて、組織や業務の枠を超えて、視覚障害者のさまざまな困難や関心事に携わることを喜びとし、仲間と交わりながら取り組むことを、まるで遊びのように楽しんでいたことです。
 岡田さんが要の役割を果たした活動や団体は広範囲に渡ります。日盲社協情報サービス部会の情報機器等の支援者講習会、視覚障害情報機器アクセスサポート協会研修会、震災被災者の支援活動、暗所視支援機器を視覚支援学校へ贈るクラウドファンディングなど業務として関わったものの他に、視覚障がい乳幼児研究会、視覚障害リハビリテーション協会、日本歩行訓練士会など自主的な活動も数えきれず、どこでも独特のユーモアを漂わせながら、時折、深い洞察や鋭い指摘で活動を導いてくれる欠くことのできない存在でした。また、プライベートでパソコン利用や歩行訓練を支援した当事者も数多く、逝去後、多くの方から感謝と追悼の言葉が寄せられています。
 岡田さんを失ったことは大きな痛手ですが、私達は岡田さんの生き様を思い起こし、いつも喜びをもって視覚障害者と共に歩み、支援活動に励みたいと思います。

    日盲社協事務局だより
1.表彰者・受賞者情報
 日盲社協理事・日盲社協第11代理事長で、日本失明者協会理事長の茂木幹央氏が第38回鳥居賞受賞

2.加盟施設 変更情報
 (1)退会
 <自立支援施設部会>
 岩手県視覚障害者福祉協会岩手マッサージセンター(令和2年3月31日付)

 <盲人用具部会>
 (株)KOSUGE(令和2年3月31日付)

 (2)名称変更・住所変更等
  <点字出版部会>
 岡山ライトハウス点字出版所はE-mailを変更した。新E-mailはtenji@olh-estate.com

 エスケービーは事務所を移転した。
 新住所は、〒480-0202愛知県西春日井郡豊山町豊場字新田町154-2
 電話とFAXは変更なし。

 <情報サービス部会>
 日本赤十字社北海道支部点字図書センターはE-mailを変更した。新E-mailはtenkanri@tenjihokkaido.jrc.or.jp

 大阪府盲人福祉センター点字図書館は、令和2年6月15日から「大阪府立福祉情報コミュニケーションセンター点字図書館」に名称変更、新住所は〒537-0025大阪市東成区中道1-3-59、新TELは06-6748-0611、新FAXは06-6748-0631、E-mail:tosyo2@fushikyo.or.jp(従来通り)

 神戸市立点字図書館の新TELは、078-362-2488、新FAXは078-362-2466

 山梨ライトハウス盲人福祉センターは、令和2年4月から「山梨ライトハウス情報文化センター」に名称変更

 名古屋ライトハウス名古屋盲人情報文化センターは、令和2年10月1日から「名古屋ライトハウス情報文化センター」に名称変更

 (4)施設長等変更(敬称略)
 <点字出版部会>
 京都視覚障害者支援センター点字出版施設紫野点字社新所長高田寛

 <情報サービス部会>
 上野点字図書館新館長松田昌子
 大田区立障がい者総合サポートセンター声の図書室新施設長佐藤宏樹
 鹿児島県視聴覚障害者情報センター新センター長泊孝次
 神奈川ライトセンター新所長船津久志
 群馬県立点字図書館新館長細川智子
 長崎県視覚障害者情報センター新所長松野雅子
 奈良県視覚障害者福祉センター新所長村井裕司
 福井県視覚障害者福祉協会情報提供センター新センター長畑矢雅理
 福岡点字図書館新館長夏秋圭助
 福島県点字図書館新館長阿曽幸夫
 三重県視覚障害者支援センター新所長野村浩

 <自立支援施設部会>
 中部盲導犬協会新理事長伊藤賛治(令和2年6月30日~)、新施設長早田一幸
 京都視覚障害者支援センター障害者支援施設洛西寮新施設長北広美

    編集後記
 前号の『日盲社協通信』(通巻80号)点字版で、茂木幹央先生の名字が「モテギ」となっていました。ここに訂正してお詫び申し上げます。
 同誌墨字版には、「モギ」とふりがなが振ってあったにも関わらず、今回の誤記が起こった顛末を次に記します。
 『日盲社協通信』点字版は、加盟施設のうち5施設が回り持ちで、製作することになっています。ところが通巻80号のローテーションに当たっていた施設が、新型コロナ対策のために担当できないと申し出ました。このため、当方は次の輪番施設に製作を依頼しました。
 ところが、引き受けてはみたものの、その施設も新型コロナ対策のために人手が足りず、通常、必ず行うはずの読み合わせ校正を省略し、触読校正者単独による素読み校正で済ませたようです。このために今回の不祥事が起きたのだと思われます。
 茂木先生の名前を知らなかったとは信じがたいことで、ことほど左様に、傘下施設の職員は、日盲社協への関心が薄いということなのでしょうか。
 本号はコロナ禍の影響で、従来の『日盲社協通信』とはまったく異なった、「新型コロナ特集号」とでもいうものになってしまいました。
 17ページの新型コロナウイルスに関するアンケート報告では、回答者の文体が混在していたので、「ですます調」は「である調」に統一しました。また、「てにをは」等も紙幅の関係で一部修正しました。
 現下の課題は、重症化するリスクが高い高齢者や基礎疾患のある人々をいかに新型コロナから守るか。私たちの知恵と工夫、そして連携が試されています。(福山博)

  情報提供のお願い
 本誌に対する情報提供・要望・苦情・意見・感想は、日盲社協広報委員長福山博宛、メール(fukuyama@thka.jp)等でお送りください。お待ちしております。

  『日盲社協通信』WEB版リリース
 『日盲社協通信』が、平成23年(2011年)11月号(通巻63号)から、日盲社協のホームページにアクセスして、全文を読むことができるようになりました。こちらもご高覧ください。http://www.ncawb.org/

 本誌は、こくみん共済 coop <全労済>の助成により作成したものです。

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