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日盲社協通信 平成31年(2019年)4月号(通巻78号)
編集人:福山博 発行人:舛尾政美
発行所:社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)
National Council of the Agencies of the Welfare for the Blind (NCAWB)
http://www.ncawb.org/
もくじ
日盲社協第13代理事長を引き受けるにあたって 理事長 舛尾政美
仲間を増やすには 常務理事 長岡雄一
常務理事就任のあいさつ 常務理事 荒川明宏
退任のあいさつ 前理事長 髙橋秀治
<北海道・帯広大会> ご来道をお待ちします 北海点字図書館理事長 後藤健市
(誌上慶祝会)
榑松武男氏の旭日単光章叙勲を祝して 日本点字図書館理事長 田中徹二
長岡雄一さんの厚生労働大臣表彰を祝す ―― 見えなくても安全な歩行の確立を目指す
NPO法人TOMO事務局長 山口和彦
日本盲導犬協会の塙保己一賞「貢献賞」受賞を祝う
株式会社ラビット代表取締役 荒川明宏
有限会社エクストラ「内閣総理大臣表彰」受賞を祝う ―― バリアフリー・ユニバーサル
デザイン推進功労者表彰にて 株式会社アメディア代表取締役 望月優
(新連載)わが施設の今 第1回養護盲老人ホームひとみ園 園長 茂木幹央
平成30年度点字出版部会職員研修会 in 岡山
日本ライトハウス点字情報技術センター 金子研一
平成30年度音訳指導技術講習会 音訳指導員研修委員会委員長 香川恵
平成30年度自立支援施設部会職員研修会報告 ―― 施設の災害対策について考えよう!
自立支援施設部会長 山下文明
平成30年度生活施設部会研修会 生活施設部会長 茂木幹央
盲人ホーム事業の取り扱いについて 自立支援施設部会長 山下文明
『日本点字表記法2018年版』が発行されました 日本点字委員会事務局長 和田勉
<訃報>日盲社協顧問・東京光の家前理事長田中亮治先生を偲んで
東京光の家栄光園園長 平野 吾一
<新規加盟施設>日本点字図書館自立支援室 ―― 毎日の生活で見えない、見えにくいこ
とで生じるお困りごとはありませんか? 日本点字図書館自立支援室課長 島田延明
日盲社協事務局だより
編集後記
日盲社協第13代理事長を引き受けるにあたって
理事長 舛尾政美
日盲社協は平成31年3月16日、東京視覚障害者生活支援センターにおいて理事会を開き、髙橋秀治理事長が健康上の理由で辞任を表明され、後任に私が選出されました。突然のことで大変驚いており、このような大役が果たして務まるかどうか心配しております。
80歳を超える高齢で山口県立盲学校卒の学歴のみで下関の田舎育ちであります。
昭和56年6月、社会福祉法人山口県盲人福祉協会理事長に就任以来今日まで、まず盲人ホームの所長として地域のはり灸マッサージ業者、特に視覚障害業者とトラブルを起こさないよう、しかも盲人ホームの目的を十分果たすことのできる治療所の経営を続けてきました。さらに点字出版所を立ち上げ、県や県内各市町の点字広報の印刷をはじめ、厚生労働省点字広報誌『厚生』の中国・四国ブロックの印刷を担当するとともに、古川薫など郷土の作家の著書を主に点訳・音訳しています。
一方、県下の当事者団体の長として視覚障害者の業権の確保、文化の向上・福祉増進に努めています。平成17年には中国青島市の障害者団体連合会と山口県盲人福祉協会との間で友好協定を締結し、はり灸マッサージの実技や情報交換を開始し翌年に盲人用卓球セット一式を贈りこれが中国における盲人卓球の始まりとなっています。
平成23年には共同生活援助事業「グループホーム光明園」と障害者向け生活支援施設光明園を立ち上げ視覚障害者の生活の安定と向上に努めています。
日盲社協には昭和62年養護盲老人ホーム春光苑が開苑してまもなく入会し、平成20年5月に評議員に、平成22年4月に理事・評議員に、さらに翌年5月に常務理事に選出されました。
自分としては全く微力でこのたびの大役を果たせる自信はありませんが、頼るところは自分自身の運の強さと、春光苑建設運動の当初から安倍晋太郎衆議院議員の秘書として、私を厚生省や日本小型自動車振興会などに案内してくださった安倍晋三先生(現・内閣総理大臣)と直接会話ができる関係が今日まで続いていることであります。
4月には毎年総理主催の「桜を見る会」が行われていますが、今年は4月13日行われるとのご案内をいただいております。新宿御苑で直接ごあいさつできることが有難く嬉しいことであります。
今、私が取り組みたいことは多数ありますが、まず急がなければならないことは養護盲老人ホームの市町村における措置控えを解消することと、同行援護事業の廃止続出を何とか改善することであろうと考えています。いずれにせよ周囲の皆さんとしっかり相談しながら一つ一つ問題を着実に処理していきたいと思っています。
最善を尽くす覚悟でありますので皆さんのご理解、ご協力を切にお願い申し上げる次第であります。
仲間を増やすには
常務理事 長岡 雄一
現在、日盲社協の加盟施設は201施設。全国にある視覚障害関係の施設、事業所数を正確に把握していないので、この「201」という数字が、多いのか少ないのか、実は見当もつきません。
ただ、最近、日盲社協に加盟していないが、視覚障害者に対する支援を行っている団体やグループが、少なからずあるのではと思わせる催しや行動を耳にする機会が増えてきました。障害福祉サービスを提供している事業所のうち、同行援護の事業所の加盟が、ほとんどないのは事実で、それはそれで残念なことですが、そうしたサービス提供とは趣が異なる、障害福祉サービスとは直接関係はないが、地道に視覚障害者の支援を行っているNPOや一般社団、また法人格を持たないグループが、施設や事業所とは違った観点で、視覚障害者の方を対象とした各種の事業を実施していることは事実です。
東京で言えば、国立市や足立区などに、NPOがありますし、練馬区にも活動している団体があります。ちょっと周囲を見渡すだけで、こうしていくつもの事例を挙げることができます。
こうした所では、訓練施設ではやりきれないようなこと、例えばお化粧であったり、作業であったりと、多岐にわたって、視覚障害者のニーズにあうサービスを提供しています。
また、葛飾区や杉並区で見られるように当事者の自主グループもあちこちで産声を上げているようで、そうしたグループの動きが今後、大きなうねりになっていく可能性もあります。ただ、こうしたグループがどこにあって、どんな活動をしているかを全国レベルで把握することは、至難の業です。やはり地域地域で、地域のネットワークを十分活用しながら、視覚障害者へのさまざまなサービスが、どこで、どんな形で提供されているかを探り出すのが、一番の近道ではないかと思います。
日盲社協の自立支援施設部会では2019年に、各地の施設にご協力をお願いして、自立訓練施設の要覧を作成する事業を予定していますが、その過程で、障害福祉サービス事業には含まれないようなサービスを提供している団体やグループが浮き上がってくることも意図しているようです。
従来の「施設」や「事業所」の枠に入らない、ある意味大きな縛りのない中で、活発な活動をしている団体やグループは、これからの施設や事業所を考えていくうえで大きなヒントにもなりますし、一方で有機的な結びつきを強めることは、サービスを受ける主体である当事者にとっても、決してマイナスになることはないと思います。
今後の日盲社協を考えていくうえで、こんな議論を深めていくことが、一つのきっかけにはならないでしょうか。
常務理事就任のあいさつ
常務理事 荒川 明宏
このたび日盲社協の常務理事に選任された(株)ラビット代表取締役の荒川明宏です。まずは簡単に自己紹介をいたします。
私は昭和41年12月1日東京に生まれ、小学校3年生のとき弱視から全盲になり、栃木県立盲学校に転校しました。その後、日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンターで生活訓練と情報処理を学び、一般企業で4年間SE(システムエンジニア)として勤めました。その後、転職して6年間、視覚障害者向けソフト開発会社に勤め、平成11年に独立してラビットを設立しました。
私は盲人用具部会の部会長を務めてから6年になります。つまり、日盲社協の理事会に参加するようになって6年経ったわけであります。この間には、日盲社協の同行援護事業所開設と撤退という大きな事柄も経験いたしました。
用具部会で、時々「日盲社協に入っているメリットはあるのか」という話が出てきます。部会長でありながら、そんな声に対して明確なビジョンを出せない私自身に歯がゆさを感じます。
私が経営セミナーで聞いた中でとても大切にしている言葉があります。「会社にとっての脅威は『ライバル会社』、『お客の離反』などではない。脅威は『時代』である」という言葉です。レコード盤がCDに代わり、CDはDVDに代わり、DVDは今や音楽配信サービスに変わってしまいました。時代がお客様を変えて行くのであり、この「時代」を見誤ると経営的な危機を招くというものです。
それでは、日盲社協が現在直面している「時代」とはなんでしょうか。そこを皆さんとともに考えて行くことが大切ではないかと思っております。
視覚障害者が有意義な生活をするためには、ユニバーサルな社会の実現が大切です。そのユニバーサル社会を支えていくのが専門集団である日盲社協ではないでしょうか。日盲社協の各加盟施設が輝かないと、視覚障害者の生活も有意義なものには決してならないでしょう。
私が視覚障害者関連の仕事を始めてから25年以上経ちました。展示会等で全国を回ることもしましたし、個人のお宅にも数多くお邪魔させていただきました。仕事はあくまでもITに関連するものでしたが、見えなくなっての苦労や、いま現在の不安など色々な話を聞かせていただきました。
そして、3年前にラビットでも同行援護の事業所を開設しました。そこで当たり前ですが、視覚障害者といっても様々な状況があるのだと感じました。
私ができることはとても小さなことです。しかし、大きな志を持つことにより、いろいろな可能性が生まれてくると信じています。「日盲社協に加盟したい」そう思えるような日盲社協を、皆様と一緒に築けて行けたらと思っています。
退任のあいさつ
前理事長 髙橋 秀治
昨年いっぱいと今年の3月までかなりもまれた。
私が理事長に就任したのは、8年前のことで、その頃の仕事場は東京都江東区にあるロゴス点字図書館だった。長く居すぎたことを反省して、新御徒町にある日盲社協の事務所がある小さな5階建てのビルに通うこととなった。この会館には、盲人ホーム杉光園、同行援護事業所のレッツゴー事業所、本部事務所などが狭い場所を分け合って活動している。
この中のレッツゴー事業所が早々とつぶれた。始めは資金として2千万単位のご寄付を受け、本部事務所からも同様の大金を借りたが、効果なしだった。ある種の安定感、「何とかなるだろう」という気持ちの緩みがあったようだ。昨年9月、理事会はストップをかけた。
杉光園は、あん摩・はり・灸の技術の資格をもっている人が、1日も早く独立できるように力をつけるのが目的の盲人ホームである。地域への呼びかけ、同じ町内会の同業者とのつながりなど細かな付き合いも大事にしており、方向性を見失わないのがいいところである。
さて、私は何をしていたか。小さな事務所は事務や関係資料で満員。4台のデスクと本箱もいっぱい。ひそひそ話しなどできる広さはない。私は部屋の奥にある点字プリンターと一緒の部屋に入り、少しは距離的に間がもてたが、余裕は無かった。
日常の流れはしっかりしており、かき回すゆとりは無い。私はたまに来る会議や問題などについて様子を見に行ったりで、あまり出番はなかった。それはそれでありがたかったが、いまひとつ気合が入らなかった。
そのうち私は自分が76歳になったことに気がついた。気持ちはまだ60歳前半であったが、現実は容赦なかった。まず腰が痛くなり、一つしかない左眼に黒い塊が行ったりきたりするようになった。顔が赤くなっていつも酔っ払いのようだと言われた。そして一番困るのは、本や手紙の内容を声を出して読み上げると、頭がしびれるというか痛くなってきた。これは穏やかではない。そのうち、新宿や東京の雑踏の中で、そのまま巻き込まれて、知らないところに消えてしまうかもと不安になった。
いささか遅きに過ぎたが、この状態ではさっさと家に戻るのが順当というものだ。一人ぼっちになるいいチャンスでもある。
私の後に来る理事さんたちも、自分の目ざす日盲社協論を展開するはずである。それは単なる個人の誇りではなく、新しい世の中を目指す呼びかけであるかも知れない。日盲社協に限らずどこの団体でも、そのような考えで活動されると思う。
特に力も無く、頭も普通だったが、ともかくいろんな問題と取り組んできた。結局、頭と体がストップをかけてきた。凡人はこんなところ。お世話になりました。
<北海道・帯広大会>ご来道をお待ちします
社会福祉法人ほくてん 北海点字図書館理事長 後藤 健市
第67回全国盲人福祉施設大会を北海道帯広で開催させていただくことになりました。日本の最北である北海道は春の到来の象徴でもある桜の開花が5月以降であり、大会の開催日程の6月下旬は山や畑の緑が濃くなっていくとてもいい時期です。
本大会の主管を務める当館が設立されたのは戦後4年目の1949年であり、今年は70周年の記念の年です。その節目の年にこの地で大会が開催され、皆様に来ていただけることになったことは単なる偶然ではなく、必然の流れだと感じております。
当館の設立のきっかけは、1948年のヘレン・ケラー女史の来日の際に北海道にも来ていただいて開催した北海道の盲人大会であり、今回も本大会の開催を機に情報提供の新たな取り組みに果敢にチャレンジしていくことを考えています。
帯広がある十勝地方は、日本の食糧基地と呼ばれる農業王国であり、畑作と酪農が盛んで食料自給率は1,100%、まさに食の宝庫であり、世界でも稀な植物性の「モール温泉」の地でもあります。また、木の運搬作業等をしていた世界一大きな馬を使った世界でここだけの「ばんえい競馬」もあります。さらに、北海道は、中心都市の札幌や周辺の小樽や旭川、歴史的には最も古い北海道の南の函館、東側には世界自然遺産の知床もあり、多様な魅力の地です。
皆様のご来道をお待ちしています。
会場:北海道ホテル
〒080-8511北海道帯広市西7条南19丁目1番地
TEL 0155-21-0001(代表)
交通:JR帯広駅より徒歩15分。とかち帯広空港よりシャトルバス(有料)で35分。
日程(予定)
6月20日(木)
12:00~13:00 受付
13:00~13:10 開会式・オリエンテーション
13:10~16:00 研修会
16:10~17:40 事業部会(5部会)
18:00~20:00 交流会
6月21日(金)
09:00~10:30 講演/受賞者懇談会
10:45~12:00 式典(表彰・来賓祝辞等)
主管施設:北海点字図書館
〒080-0802北海道帯広市東2条南11丁目3番地
TEL:0155-23-5886 FAX:0155-24-6098
[誌上慶祝会]
榑松武男氏の旭日単光章叙勲を祝して
日本点字図書館理事長 田中 徹二
榑松さん、おめでとうございます。
視覚障害者支援総合センター理事長の榑松武男さんに、昨年11月12日、旭日単光章が伝達されました。
伝達式は、午後1時から東京プリンスホテルで開催され、経済産業大臣から授与されました。それに引き続き、皇居春秋の間で、天皇陛下の拝謁があったといいます。
現職は社会福祉法人理事長ですので、普通なら厚生労働省の推薦になるはずです。それが経済産業省推薦というところに、榑松さん受賞の特色があります。前職の株式会社ケージーエスの社長としての業績が評価されたのです。
それは、1995年当時、ケージーエスの損失の拡大が続き、債務超過状態の中、社長に就任し、経営の立直しを図ったことに
始まります。社長就任直後から付加価値経営を提唱し、点字ディスプレイの主要部品である点字セルの海外展開を図り、世界シェア70%を達成するなど、経営体制の改善に寄与しました。さらに新製品として、点字ラベラー、点図セル、点図ディスプレイ、点字学習機を次々に開発しました。こうした業績により、第1回元気なものづくり中小企業300社、(経済産業省・中小企業庁)、第10回バリアフリーユニバーサル功労者内閣総理大臣賞(内閣府)、塙保己一賞「貢献賞」(埼玉県)、本間一夫文化賞(日本点字図書館)などを受賞しています。
さらに、サイトワールド(視覚障害者用機器展)を創設し発展させたことも大きな業績です。ドイツのフランクフルトで2004年から始まった「SightCity(サイトシティ)」を見て、わが国でもその必要性があると判断したのです。現在も11月1・2・3日を固定して、すみだ産業会館サンライズホールで毎年開催しています。サイトワールドは、視覚障害者が使う機器の発展に大きな刺激を与えています。その功績の大きさは計り知れません。
長岡雄一さんの厚生労働大臣表彰を祝す
―― 見えなくても安全な歩行の確立を目指す ――
NPO法人TOMO事務局長 山口 和彦
東京都新宿区の閑静な住宅街の一角に東京視覚障害者生活支援センターがある。
1981年、国際障害者年を記念して東京都が人生の中途で視覚障害になった人の自立訓練センターとして1983年に開所したものだ。2017年に日盲社協に民間移譲され、現在は長岡雄一さんが所長として、また日盲社協の常務理事として毎日忙しく飛び回っている。
私が長岡さんと知り合ったのは、東京視覚障害者生活支援センターの前身である、東京都失明者更生館で指導員として働くようになってからだ。
長岡さんは、慶應義塾大学を卒業して、上智大学大学院を修了された後、社会福祉なかでも視覚障害者の自立訓練に強い関心を持たれ、日本ライトハウスで歩行訓練士の資格を取得されました。
当時は、「歩行訓練士」といっても社会的にまだ認知度が低かったが、長岡さんは、常に視覚障害者に寄り添い、人生中途で視覚を失い、さまざまな悩みを訴える利用者の相談に応じた。そして「白杖を持つ」ことに抵抗感のある利用者には、ゆっくり時間をかけて白杖を持たせた。
1995年1月、阪神淡路大震災のとき、いち早く現地にはいり、被災した多くの方々に支援活動を行った。想像を絶するような破壊されたガレキのなかで、支援活動は思うようには進まない。そんな環境のなかでも、長岡さんは地道に被災者に寄り添い支援を続けて行った。
視覚障害者の同行援護制度が施行されたのが2011年。長岡さんはガイドヘルパーの養成研修のテキストの編纂にも加わり、多くのガイドヘルパーを育てている。
昨年来、視覚障害者のホームからの転落事故が続いたがその現場にも足を運び、事故防止にはどうすればよいのか、貴重な提言をしている。つねに長岡さんは、自ら現場に足を運び、利用者のニーズを把握し、危険防止に細心の注意を払っているのだ。
現在、東京視覚障害者生活支援センターは民間の事業所として、機能訓練と就労移行支援のサービスを提供している。
激変する利用者のニーズに応えるために、常に質の向上を図ることは容易ではないと推測される。
しかし、このたびの厚生労働大臣表彰を励みに長岡さんの豊富な知識、経験で、高齢化を迎えた視覚障害者の世界に新たな光を注いでもらえることを期待している。
日本盲導犬協会の塙保己一賞 「貢献賞」受賞を祝う
株式会社ラビット代表取締役 荒川 明宏
日本盲導犬協会様、このたびは塙保己一賞「貢献賞」の授賞おめでとうございます。日本盲導犬協会のユーザーの一人として、お祝いの言葉を書かせていただきます。
私は以前は別な協会の盲導犬を利用していました。ご縁があり、貴団体で盲導犬の訓練を受けることになりました。訓練を開始して衝撃的でした。「訓練なのに厳しさがない」。それは私にとっては逆に「これで歩けるようになるのだろうか」といった不安にも繋がりました。不安な気持ちが増す中、私の気持ちとは裏腹に訓練は順調に終わりました。そして一緒に歩き始めた2日目の朝、通勤の時のことです。私の盲導犬グミちゃんはある路地まで行くと一歩も前に進んでくれません。トイレかと思い家に引き返すと飛ぶように帰って行きます。また駅に向かうと途中でストップ・・・。徒歩5分で行ける駅になんと40分以上もかかり、到着しました。
正直「訓練が優しすぎてだめだったのではないか」という言葉が、頭をよぎりました。そして電話で訓練士に状況を説明し、相談したところ、「家の車に乗りたくて動かないのではないか」というアドバイスを受けました。
そして翌日、途中まで歩くといつもの路地でグミちゃんはストップ。訓練のことを思い出し「グミちゃん、車じゃなくて電車で行きましょう」と話し合い。そして、その日からちゃんと駅まで歩くようになり、通勤できるようになりました。
訓練の中で私が印象に残った言葉は「盲導犬は犬である」、「盲導犬も生き物である以上、当然間違えるし失敗もする」、「犬の気持ちになって少し考えてみよう」というものです。それは人にも当然通じるすばらしい言葉です。
盲導犬は当たり前ですが、道具ではありません。ロボットと一緒に歩くわけではないのだから、間違えも失敗も分かち合える。
訓練はもちろん盲導犬利用者にこのような言葉をかけられる組織は、受賞以上の意味があると感じています。仕組みを作るのは、ある意味誰でもできます。しかし、魂を込めるということは簡単なことではありません。犬と利用者にこれからもすばらしい魂を贈ってほしいと思います。
有限会社エクストラ「内閣総理大臣表彰」受賞を祝う
―― バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰にて ――
株式会社アメディア代表取締役 望月 優
自動点訳ソフト「EXTRA」の開発で知られる有限会社エクストラは、昨年12月、平成30年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰で、内閣総理大臣表彰を受けた。同賞は、名称が示す通りバリアフリーやユニバーサルデザインの実践に功労のあった企業や団体に対する国家表彰である。
同社を率いるチーフエンジニアの石川准氏は、1991年に自動点訳ソフトEXTRAを開発、有限会社エクストラを立ち上げて発売するとともに、本業の静岡県立大学教授としての仕事をこなしつつ、自動点訳ソフトの技術を活かして多くの優れた海外製品を日本に導入してきた。
実際、本誌の読者の中にも、スクリーンリーダー「JAWS」や点字携帯端末「ブレイルセンス」のユーザーもたくさんおられるであろう。これらの製品は、その内部に自動点訳ソフトEXTRAの技術が搭載されている。この技術があるからこそ、もともと英語をはじめとする欧米の言語にしか対応していない機器やソフトを漢字かな混じり文化の日本で我々が利用できるのである。その点で、石川准氏の日本の視覚障害者に対する貢献は表現しきれないほど多大である。
私自身も、EXTRAで会議資料を自動点訳し、ブレイルセンスでメモを取り、石川氏が開発して配布権を日本障害者リハビリテーション協会に引き継いだフリーウェアのエディタ「Altair」でこの原稿を書いている。
石川准氏は1956年9月富山県魚津市生まれ。16歳で失明し、富山県立魚津高等学校から東京教育大学附属盲学校高等部に転入、1977年に現役で東京大学に合格、日本初の全盲東大生となった。
附属盲学校時代は、私も同級生として一緒に学ぶ幸運を得た。彼はもちろん非常に優秀な生徒だったが、中途失明のため点字を読む速度はあまり速くなかった。その彼が東大を点字受験で突破したのを目の当たりにして、私は心底から感動した。
東大を卒業して社会に出てからは、本業の大学教員・社会学者として、エクストラのリーダーとして活躍し続けているほか、全国視覚障害者情報提供施設協会理事長や内閣府障害者政策委員会委員長を務める等、社会リーダーとしても大活躍である。
今回の受賞を心よりお祝いするとともに、彼とともに視覚障害者文化の発展に技術面で寄与するパートナーとして私自身もがんばる決意を固めた。
(新連載)わが施設の今
第1回養護盲老人ホームひとみ園
園長 茂木 幹央
埼玉県深谷市にある養護盲老人ホームひとみ園は、1979年4月に2人用居室25室の50人定員の施設として発足しましたが、今は個室100室(100人定員)で、トイレは全て居室内に設置されています。敷地は10,000㎡程度の平地で、建物の延床面積は約6,000㎡です。
1979年4月から2006年3月までは、老人福祉法第11条第1項第1号のいわゆる普通の養護老人ホームでしたが、2006年4月から2017年12月までは、特定施設入居者生活介護「外部サービス利用型特定施設」となりました。さらに2018年1月からは、特定施設入居者生活介護「一般型特定施設」となり、ADLが自立している人から要支援の人、要介護1から5の人まで受け入れることができるようになりました。一般型特定施設に切り替えることにより収入が増えた他、新たに看護師1人と生活相談員1人を採用することが出来ました。その他の経営メリットもあります。
ところで、ひとみ園では最近入園希望者が多くなってきているところから、入所定員を100人から120人にするための増築園舎(鉄筋コンクリート二階建て、延床面積965.28㎡)を建設することと致しました。
5年程前から準備を進めてきましたが、2019年2月5日付で埼玉県より20人定員増のための建築許可が出ましたので、2019年4月1日に着工し、2019年11月30日に竣工する運びとなりました。これによりひとみ園は、今年の暮れには個室120室を備えた施設となります。
その増築園舎には、映画館とカラオケ喫茶が併設される計画で、映画館の床はスロープ階段式で、客席は35席。カラオケ喫茶は30人位を受け入れるスペースがあり、安全に配慮したステージが設置されます。カラオケ喫茶内の厨房設備は、入園者の方々が時には自分たちで美味しいものを作ってみたいというような際にも使用することができます。新たな試みの一つとして今回、一階と二階には歩行訓練のための「平行棒室」を設置致します。
居室は洋室で、床面積は約14.03㎡です。居室内にはインターネットに接続するためのコンピューター用配線もあります。
ひとみ園はこれからも、演劇ホール、映画館、カラオケ喫茶、盲人卓球教室、その他により、視覚障害者のための「教養娯楽センター」の拠点になるよう施設整備を進めてまいります。
平成30年度点字出版部会職員研修会 in 岡山
日本ライトハウス点字情報技術センター 金子 研一
11月26・27の両日、サン・ピーチOKAYAMAで、標記研修会を18施設48人の参加で開催した。
初日は自動製版機のワークショップと点字表記法改訂版の解説が行われた。
技術交流ワークショップ
点字自動製版機(以下、製版機)は、点字出版において最も重要な機械だが、国内2メーカーのうち、「ZPメーカー」を開発した仲村点字器製作所は事業規模を大幅に縮小し、修理等のサポートを実施することが困難になっており、「ブレイルシャトル」を開発した小林鉄工所は健在だが、製版機の納品や修理に長期間を要している。
このような状況に対し、平成29年度に開催した職員研修会では、製版機のトラブルやその対応に関する事例発表と意見交換を行った。その結果、安定した製版を行うために多くの出版施設が、本業の出版業務のかたわら機械の専門的な知識がないにもかかわらず、自前で製版機の修理や調整・整備作業を実施せざるを得ず、多大な負担を強いられている実態が明らかとなった。
そこで、製版機を運用するために、各出版施設がこれまで蓄積してきたノウハウを共有し相互に協力していくために、「ブレイルシャトル使用者連絡会」と「ZPメーカー使用者連絡会」という二つの組織を立ち上げた。さらに日常的に情報をやり取りするために、両連絡会共通のメーリングリストを開設した。
平成30年度に開催した職員研修会の自動製版機技術交流ワークショップ「技術的問題の共有と解決策の検討」では、まず、このメーリングリストで実施した各出版施設の製版機に関するアンケート調査の結果が次のように示された。
製版機の状態に関してブレイルシャトルは「快適に動いている」9台、「問題があるが動いている」9台。ZPメーカーは「快適に動いている」5台、「問題があるが動いている」4台、「不具合があり動かすことができない」3台であった。そして注油等メンテナンスの様子やこれまでに遭遇したトラブルとその対応などが報告された。
次に、技術交流の一例として、職員を先進施設に派遣したり、講師を招いて行ったメンテナンス研修会の実績と成果が報告された。またZPメーカーと同じようにメーカーのサポートを受けることが困難となっている点字用ローラー印刷機のゴムローラー交換について紹介された。
次に、ブレイルシャトルを主に使用する出版施設とZPメーカーを主に使用する出版施設に分かれて分科会を開き、この二つの分科会では、それぞれの製版機固有の課題や今後の方針について検討を深めた。
最後に参加者一同が集まり、分科会の報告を行い、今後も製版機に関する疑問点や解決策、不具合の報告などをメーリングリストへ投稿して情報共有を行い、製版機を安定して継続使用するために、出版施設全体で相互に協力することを確認した。
点字表記法2018の報告
日本点字委員会渡辺昭一会長を講師に、平成31年3月発行の『日本点字表記法2018年版』の概要報告が行われた。
今回の表記法改定の特徴は、①各項目に見出しをつけてわかりやすくした。②規則の表現や用例を見直して、点字表記の幅について理解しやすくした。③新しい記号として「@」を設けた。④2016年度から、英語教科書の点字表記が統一英語点字(UEB)に順次変更していることを受けて、一般書の点字表記においても、所要の変更を行った。⑤ホームページやEメールアドレスなどの書き表し方を一つの「節」と位置づけた。⑥点字数学記号や点字理科記号の改定を見すえて、数式や単位の書き表し方などを変更した。⑦点字資料のレイアウトに役立つ区切り線・枠線を新設した。⑧表記法で使用している用語について、簡潔な説明を巻末に示した等で、変更点等を用例を交えて一つずつ説明し、質疑応答を経て初日は終了した。
岡山ならではの講演と実演
二日目はまず岡山ライトハウス竹内昌彦理事長を講師に「命の授業と国際協力と点字ブロック」と題して下記のような講演が行われた。
同氏は昭和20年(1945)2月に中国の天津で生まれ、中国からの引き揚げ船の中で風邪をこじらせ、急性肺炎を起こし右目を失明し、左目も僅かな視力を残すのみになった。弱視児として岡山市の普通学校へ通うと同級生から執拗ないじめを受けるが、素晴らしい恩師と出会い救われる。そして闘病の後に完全に失明して、岡山盲学校小学部3年へ編入する。失明と理療の道を受け入れられず苦しむが克服し、盲学校理療科教員・教頭を歴任。盲学校在職中から各地で「いじめ」や「命の大切さ」をテーマに講演活動を継続的に行う。
退職後、講演で集めた資金でモンゴルとキルギスに盲学校を作った。
最近の活動は、わずかな手術代を用意できなくて、見えない目のままに暮らしている子供が開発途上国にはたくさんいる。そんな子供達の目を治すためにヒカリカナタ基金を組織して、現在125人の子供達に光を届けるなどの国際協力を行っている。
失明による自らの深い苦悩を克服した半生と、教育者として生きる意味を問う感銘深い講演であった。
続いて実地研修として岡山ライトハウス職員の石橋千嘉枝さんによる手作業による「上製本製作法」の実演が行われた。
平成30年度音訳指導技術講習会(認定者対象講習会)
音訳指導員研修委員会委員長 香川 恵
平成30年12月6日(木)~7日(金)、大阪市の玉水記念会館を会場に平成30年度第37回音訳指導員講習会(第9回認定者対象講習会)を開催した。
参加者は、予想を超えた126人となり、同時に行った認定試験(再試験)の22人とともに会場の収容人数を超えたため、急遽、日本ライトハウス情報文化センターを試験会場として借り受けることとなった。今後、受け入れ人数等の再考が必要と思われた。
今回は、試みとして2日間の日程を組んだ。会期が長すぎるというアンケートを受けての企画であったが、おおむね好意的に受け入れられたようである。
髙橋秀治理事長のあいさつから開会した講習会の概要は、以下の通り。
1日目(12月7日)
①熊谷成子講師による処理技術Ⅰ・「記号・符号」。文中に使用される様々な記号や符号を、いかに伝わりやすく音声化するかについてご講義いただいた。講習は、制限時間内で対象の処理方法を、思いつく限り挙げるという手法で進められ、受講者に考察を促しながら進行する一例を示していただけた。
②日盲社協評議員でもある眼科医師・仲泊聡講師による視覚障害者福祉概論・「目と視覚に障害を及ぼす病気について」。短時間であったが、名称は知っていても症状や見え方は知らない病気について、専門医による言葉を砕いた説明は分かりやすく、指導員にとって有意義な講義であった。
③京都府立盲学校教諭の藤井則之講師による「音声で伝える数式」。普通高校と盲学校で数学を教えられた経験から、基本的な四則演算記号の読み方から分数、根号、多項式を含む数式まで、読み方次第で計算方法が違ってしまうことのある数式の伝え方を丁寧にご教示くださった。
2日目(12月8日)
④安田知博講師による音声表現技術Ⅰ「活動中の方への指導法」。指導者が行う指導法だけでなく、ボランティア同士の指摘の仕方など、具体的なシチュエーションを示した講義は実践的で、毎回好評である。
⑤指導員研修委員会による処理技術Ⅱ。まず、昨年行った認定試験のうち、正答率が予想外に上がらなかった写真・グラフの処理問題を解説した。続いて、三つの処理課題をワークショップ形式で行った。席の前後左右4人の少人数で協議するスタイルは、ここ数年定着した方法である。グループメンバーの意見のまとめ方、他グループとの相違の比較なども同時に学べた。
⑥元NHKエグゼクティブ・アナウンサーの長谷川勝彦講師による音訳表現技術Ⅱ・「句読点、段落と「間」」。受講者を生徒に見立てての模擬講義をお願いした。深い文章理解による音声表現を「間」の観点から解説・指導された。
「(文章を読むとき)読点は大事な情報であるが、目(視覚)で受けるだけの時もある」という言葉は、私たちが講習会で伝える内容に相違しない表現として印象に残った。
文字情報を音声で伝える「音訳」は、実際の音を聞いて評価するものであり、紙媒体でのマニュアルや資料だけでは指導技術のすべては伝わりにくい。指導者が集まり、互いの声を聴きながら全国標準ともいえる音訳や処理等の技術が伝えられる指導者講習会という機会は、音訳技術の向上にこれからも貢献できると確信した。
最後に、講師各位をはじめ、ご協力いただいた関係各施設・団体、受講していただいた指導者各位、そして講習会開催に向けて一年間尽力いただいた委員会スタッフに感謝いたします。(香川県視覚障害者福祉センター職員)
平成30年度自立支援施設部会職員研修会報告
―― 施設の災害対策について考えよう! ――
自立支援施設部会長 山下 文明
近年、異常とも言える天候による自然災害が毎年のように発生し、痛ましい被害が出ております。大規模震災も今後高い確率で起こりうると言われており、施設における災害への対応は喫緊の課題です。本年度自立支援施設部会職員研修会では施設の災害対策について、施設利用者への支援、地域の視覚障害者への支援、地域への支援等の視点から現状や課題の共有とどんな事が期待され何ができるかを話し合い深めていくことを目的に、名古屋港ポートビル(名古屋市港区)において、平成31年2月21日と22日の2日間にわたり、15施設25名の参加で開催しました。
1日目は、部会長からの部会報告の後、名古屋みなと災害ボランティアネットワーク代表の高﨑賢一氏より、「災害対策として施設に期待されていること ―― 被災地から学ぶ減災の知恵」をテーマに休憩を挟み3時間にわたる講演をいただきました。
障害福祉サービスの就労継続支援事業A型も経営している高﨑氏の豊富な体験を基に多くの示唆に富んだ話があり、途中、会場からの質問や意見も交え大変有意義でした。特に一人ひとりの「マイタイムライン」を創るべきという話が、緊急時における行動がわかりやすく明確になり施設利用者の安全のためぜひ取り組みたいと感じました。
2日目は、日本盲導犬協会の吉川明常勤理事による、同協会の事業継続計画(BCP)の事例報告から始まりました。障害当事者の利用者と職員が常に施設という箱で活動している当部会の施設にとっては、災害時に事業をどのように継続していくかは大変重要です。事例では、災害が起きてから15分後、60分後、24時間以内と時系列にやらなければいけないことや決めるべき責任者が明文化(名刺サイズの携帯用)されており、大変参考になりました。
また、岐阜アソシアの防災運動会などの取り組みの報告や参加各施設の現状、日盲委における大災害時被災視覚障害者支援体制の動きなど、情報及び意見交換が活発に行われ、2日間の日程が有意義に終了しました。
まことにありがとうございました。
平成30年度生活施設部会研修会
生活施設部会長茂木幹央
平成30年度生活施設部会研修会は、視覚障害者グループホーム「むさし静光園」が当番施設となり、平成31年1月24日(木)・25日(金)埼玉グランドホテル深谷において、16施設36人の参加者で開催された。
初日の1月24日(木)14時~14時30分に、まず開会式とオリエンテーションを実施した。
続いて14時30分~16時、「明光園の現状と今後の展開について」の演題で、視覚障害者福祉会の業務執行理事兼養護盲老人ホーム明光園施設長の加藤勝二氏を講師に講演1を行い、「待ちの経営から攻めの経営へ」という考えで、次の様なことを実践していると述べられた。
(1)外部サービス利用型特定施設から一般型特定施設への転換
(2)Wi-Fi環境の整備(グーグルホームを活用した音楽配信サービスの利用)
(3)各種介護機器の導入(介護リフト、室内外の見守りビューシステム)
続いて16時20分~17時50分、「東京光の家の事業と沿革」の演題で、東京光の家救護施設光の家神愛園副施設長藤巻契司氏を講師に講演2を行った。
東京光の家は、盲人に聖書の福音をという創立者秋元梅吉氏の祈りが基本理念。
経営の基本方針は、安心と安全と希望~生活には喜びを~、愛と奉仕の心で誠実な業務を、家族にゆるぎない安心と信頼を、独自の質の高いサービスの提供をということであった。
その後、18時30分~20時30分「夕食交流会」を実施した。
二日目の1月25日(金)9時10分~10時40分に「視覚障害者グループホームむさし静光園と熊谷ライトハウスの経営」の演題で、私が日本失明者協会理事長という立場で講師を務めて講演3を実施した。
内容は、グループホームへの入所は、福祉事務所の許可は不要であること。低所得者でも高所得者でも入所ができること。同行援護や家事援助を使うことができること。福祉手当を受給することができること。むさし静光園では、居室は個室で、家賃と食費とで一月5万数千円であることなどを紹介した。
その後、10時50分~11時10分、むさし静光園、養護盲老人ホーム「ひとみ園」、特別養護老人ホーム「むさし愛光園」、就労継続支援B型事業所「盲人ホームあさひ園」の施設見学を行った。
11時10分~12時に閉会式を兼ねた昼食会を開催し全プログラムを終了した。
盲人ホーム事業の取り扱いについて
自立支援施設部会長 山下 文明
平成31年2月26日(火)、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室にて、平成31年度以降の盲人ホーム運営費補助金の取り扱いについて、田仲教泰室長、加藤晴喜室長補佐より説明を受けましたのでここに報告します。
日盲社協側の出席者は、髙橋秀治理事長、長岡雄一常務理事、山口規子評議員(関西盲人ホーム)、陽光園の髙橋博行施設長と私の5人でした。
内容は、「平成31年度以降の盲人ホーム予算(運営費補助)における『盲人ホームA型事業』について、10年続いていた特別支援事業のスキームからはずし、任意事業としての『盲人ホームの運営』に位置づける。現在4事業(地域)が対象となっており、それぞれの県には了承済みである」というものでした。
大変解りにくいと思いますが、要旨は、障害者総合支援法における地域生活支援事業のうち、任意事業としての盲人ホームと特別支援事業だった盲人ホームA型の2事業を任意事業として統合して整理する、ということです。
結果として「特別」というお墨付きが無くなり、各自治体の事業実施の裁量幅が拡がり盲人ホームの運営費補助について不安定リスクが増したということで、喜ばしい話ではありませんでした。
現在の盲人ホームの現状等について意見交換を行い終了しました。
盲人ホームのあり方については当部会でも危機感を持って課題として捉えているところです。今回の厚生労働省の説明に際し、山口評議員が全国の本部会会員施設以外の盲人ホームも含めて現在の厳しい状況の調査確認をしておられます。
これらの情報をまとめて整理し、今後のあり方について部会や職員研修会を通して検討してまいります。
参考《盲人ホームA型事業》とは
基礎的事業(昭和37年2月27日社発第109号厚生省社会局通知「盲人ホームの運営について」に基づき実施する事業)に加え、次のいずれかの事業を実施する
(ア)特別支援学校連携等事業
卒業後の一定期間、実務的な臨床研修を経験する機関として活用を図るなど、特別支援学校(盲学校)との連携強化に取り組む事業
(イ)技術支援・生活支援事業
地域のあん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師の資格を有する視覚障害者等に対する技術支援・生活支援を行う事業(あはき技術の向上、歩行・調理・接遇等の生活訓練等)
(ウ)就業促進等事業
ハローワーク、障害者就業・生活支援センター等との連携を図り、幅広く就労に関する情報を提供するなどして就労先を積極的に開拓する事業
『日本点字表記法2018年版』が発行されました
日本点字委員会事務局長 和田 勉
かつて「点字の規則は10年ごとに変わる」と言われていた時期がありました。日本語で点字を書き表すための大元である『日本点字表記法』の改訂のペースが10年ごとに続いていた時期があったからです。
この『日本点字表記法』を発行するのは日本点字委員会(日点委)です。日点委は、日本の点字表記を決定する唯一の機関として1966年に設立されました。当時、日本の点字は、点字図書館、盲学校、点字出版所で、それぞれ表記に違いがありました。
その違いは、かな遣い・符号・分かち書きに大別され、例えば、長音の扱いについて「オカーサン」と書くか「オカアサン」と書くかという違いや、小数点など一部の符号にも違いがありました。こうした点字表記の違いを統一するため、盲教育界と、点字図書館・点字出版所などから選ばれた代表委員によって構成された日点委が発足したのです。
日点委では、設立以来4冊の『日本点字表記法』を発行してきました。その発行年が、1971年、1980年、1990年、2001年と、ほぼ10年刻みであったことから「点字の規則は10年ごとに変わる」と言われたのです。しかし、5冊目となる『日本点字表記法 2018年版』は17年ぶりとなり、これまでよりも間隔があくことになりました。
だからと言って、大きな変更が入ったわけではありません。2001年版発行以降に定めた新しい規則を含めることはもちろんですが、全体的には難しい用語を改めたり、項目ごとに見出しを設けたりといった、わかりやすくすることが大きなテーマです。また、これまでの規則を緩めたことに特徴があるかもしれません。
代表的な例としては「車椅子」のマスあけの用例として、「クルマ□イス」も「クルマイス」も両方掲載しています。あるいは外字符で書き表す語句の範囲を広げることを意図した用例も掲載しています。
こうした許容の幅に、とまどわれる人もあるかもしれません。しかし、どちらが正しいのかという正解探しではなく、どちらも間違っていないという観点から、自身の納得のいく点字を使っていただきたいと考えています。この幅の中で書かれる点字が、どのように変化していくかは、次の表記法の目指すべき方向に影響を与えるかもしれません。その意味で、多くの人に活用していただきたいと願っています。
『日本点字表記法 2018年版』
■ 点字版 全3巻 7,500円(非課税)
発売元 日本点字図書館
■ 墨字版 1,400円(本体価格)
発売元 株式会社博文館新社
<訃報>
日盲社協顧問・東京光の家前理事長田中亮治先生を偲んで
東京光の家 栄光園園長 平野 吾一
平成30年12月23日午後8時34分、入院中の病院でご家族が見守られる中、東京光の家の田中亮治理事長が天に召されました。89歳でした。
田中先生は、義父でもあった秋元梅吉(東京光の家創立者)の手引きをして、日盲社協の役員会や総会に出席しておられたと聞いております。
また、平成15年9月27日、天皇皇后両陛下をお迎えして行われた日盲社協の創立50周年記念式典が行われた際は、日盲社協の常務理事として開会の言葉を述べておられます。
東京光の家では、創立者秋元梅吉の「盲人に聖書の福音を伝えることが何よりも大切なことである」という思いを引継いで、昭和50年に東京光の家の理事長に就任されて以来、光の家の全責任を負って働いてこられました。
理事長に就任した当時の東京光の家の大きな課題として、救護施設から他の施設形態への転換問題がありました。救護施設の定員147名のところ、実人員が150名を超えていました。また、10代から80代までの人々がいて障害程度や日常生活能力等にも大きな差がある状況でした。そのような中、まず昭和49年に働く意欲のある盲人に働く場が必要だとして「重度障害者授産施設旭が丘更生園(現・障害者支援施設光の家栄光園)」を作りました。
続いて、昭和40年代から増加してきた視覚障害の他に知的障害やてんかんといった障害を併せ持った盲重複障害者に対応するために、日常生活面での自立や適応に向けた専門的な訓練の必要があるとして、昭和54年に「重度身体障害者更生援護施設新生園(現・障害者支援施設光の家新生園)」を作りました。
平成25年には、地域における知的障害を持つ人たちを受け入れる施設が絶対的に不足している状況を受けて「障害者通所就労施設光の家就労ホーム」を作りました。
創立者秋元梅吉のあとを継いだ田中先生は職員に対して「『まず、神を信ぜよ、そして神に委ねよ、神に頼れよ、しかも神中心の事業であれよ』という秋元梅吉の信仰を大事にするとき、東京光の家は、どのようなことがあっても神が支え給うが故に盤石である」ということを常々、話されていました。
東京光の家の利用者、職員に対して敬愛の念をもって接してくださいました、田中亮治先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
<新規加盟施設>日本点字図書館自立支援室
―― 毎日の生活で見えない、見えにくいことで生じる
お困りごとはありませんか? ――
日本点字図書館自立支援室課長 島田 延明
日本点字図書館自立支援室
〒169-8586 東京都新宿区高田馬場1-23-4
TEL:03-3209-0241 FAX:03-3200-4133
E-mail:jiritsu@nittento.or.jp
https://www.nittento.or.jp/about/jiritsu/
日本点字図書館では、人生の途中で視覚障害になられた方の相談に乗ったり、自立を支援するためのトレーニングを行なう事業所を2017年度に立ち上げました。名称は「日本点字図書館自立支援室」です。
日本点字図書館として新規に事業を立ち上げるのは、1966年に盲人用具斡旋販売を始めて以来なので、半世紀ぶりということになります。
主なサービスの内容は障害福祉サービスを使った機能訓練で、白杖を使って一人で歩く、点字・パソコン・スマホなどの指導、ルーペや拡大読書器等の補助具の使い方、調理や掃除など日常生活全般に関するものといった、その方のニーズに合わせて個別の支援計画を作成し、それに沿って支援を行なってまいります。
また、新宿区、中野区、豊島区の3区を対象に、見えない・見えにくいことで生じる日常生活全般についての相談や、障害福祉サービスを利用するサービス等利用計画を作成する指定特定相談支援事業も行なっています。
人生の途中で視覚障害になり、一人で歩くことや、読書、パソコン操作等をあきらめてしまっている人はたくさんいます。
「見えない・見えにくい状態になってしまっては、一人では何も出来ない」と本人や家族等も思い込んでしまい、家に引きこもってしまうケースも残念ながらよくあります。そう思い込んでしまう大きな原因として、視覚障害者のための訓練というものが知られていない、トレーニングを受ければ出来ることもたくさんあるという情報が届いていないといった現状があります。
当館に用具を買いに来た人、図書を借りる人から、相談や訓練につながっていくパターンも、徐々にではありますが増えてきています。
日本点字図書館自立支援室では、地域の視覚障害者が少しでも自立した生活、充実した人生を送っていけるよう支援していきたいと思います。
日盲社協事務局だより
1.表彰者・受賞者情報(敬称略)
(1)秋の叙勲・褒章 旭日単光賞 榑松武男(視覚障害者支援総合センター理事長)
(2)厚生労働大臣表彰 社会参加促進功労者表彰 長岡雄一 (日盲社協常務理事/東京視覚障害者生活支援センター所長)
(3)第13回塙保己一賞「貢献賞」公益財団法人日本盲導犬協会(自立支援施設部会加盟施設)
(4)内閣府バリアフリー推進表彰 バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者「内閣総理大臣表彰」受賞 有限会社エクストラ(盲人用具部会加盟施設)
2.加盟施設 変更情報
(1)退会
<自立支援施設部会>
岐阜市盲人ホーム白杖園 平成31年3月末退会
<生活施設部会>
盲養護老人ホーム熊本めぐみの園 平成31年3月末退会
<盲人用具部会>
株式会社システムイオ 平成31年3月末退会
(2)名称変更・住所変更等
<生活施設部会>
盲養護老人ホーム白滝園 運営法人の変更 社会福祉法人聖光みのり会 ⇒ 社会福祉法人三原のぞみの会 平成31年4月1日から
<盲人用具部会>
日本点字図書館事業部用具事業課 ⇒ 日本点字図書館生活支援部用具事業課 平成30年12月~ 法人組織変更に伴う名称変更
(3)施設長等変更
<情報サービス部会>
福井県視覚障害者福祉協会情報提供センター 新所長 笹井博見
宮城県視覚障害者情報センター 新所長 小林信行
福岡市立点字図書館 新館長 礎眞一
3.訃報
日盲社協顧問 田中亮治先生(社会福祉法人東京光の家理事長)平成30年12月23日ご逝去 享年89
事務局からのお願い
日盲社協のホームページをご覧になって、誤りや変更がありましたら当事務局までご一報ください。
編集後記
本誌における紀年法は、これまで原則として元号優先で記載してきましたが、2019年5月1日に改元が行われることもあって、西暦で記載してご寄稿された方もありました。そこで、各記事内で統一されておればそれでよしとし、本誌全体での統一は行わないことにしました。
また、極めて煩わしくなるので、原則として法人名に冠される「社会福祉法人」は省略しております。ご了承ください。
髙橋秀治氏が日盲社協理事長を退任されました。私は同氏に請われて広報委員長を引き受けた経緯があり、今後、どのように対応したらいいのか苦慮しています。
思えば2011(平成23)年6月23・24の両日、静岡県点字図書館を主管に、日盲社協第59回全国盲人福祉施設大会が開催されました。同年の3月11日には東日本大震災が起きたので、大会では岩手県・宮城県・福島県・茨城県・栃木県・千葉県の6県にまたがる11施設に総額457万4,894円の義援金が贈呈されました。
この大会を花道に茂木幹央理事長が退任され、髙橋秀治理事長が誕生しました。
その時の心境を髙橋理事長は「これまで私はよそ事のように日盲社協をみていた。ところが、静岡での全国大会終了後、茂木理事長が『健康上の理由』で辞意を表明され、その後任に私が選ばれてしまった。施設の規模、人材の厚さからいっても私の出る幕ではないが、憂鬱な思いでお受けすることにした」と述べられています。
髙橋秀治氏は1971年9月から1993年1月まで東京ヘレン・ケラー協会に勤務されており、編集課長兼『点字ジャーナル』編集長として辣腕を発揮されていました。
私とは一回り以上年齢が離れているので、大先輩であり、上司としてのお付き合いでしたが、偉ぶったところが微塵もないフレンドリーな方でした。
同氏がロゴス点字図書館に転職された後は、日盲委選挙プロジェクトの点字版部会長であった同氏の下で、事務局員として汗をかいてきました。
そんな古くからの縁で、髙橋秀治理事長の下で、9年間、日盲社協の広報委員長を引き受けてまいりました。
幸いな事に『日盲社協通信』は年2回発行で次号は、半年ちょっと先の2019年11月に発行する予定です。それまでに新理事長を始めとした新執行部にご相談して、適切な対応をお願いしようと考えております。(福山博)
情報提供のお願い
本誌に対する情報提供・要望・苦情・意見・感想は、日盲社協広報委員長福山博宛、メール(fukuyama@thka.jp)等でお送りください。お待ちしております。
『日盲社協通信』WEB版リリース
『日盲社協通信』が、平成23年(2011年)11月号(通巻63号)から、日盲社協のホームページにアクセスして、全文を読むことができるようになりました。こちらもご高覧ください。
http://www.ncawb.org/
第14回 視覚障害者向け総合イベント
ふれてみよう! 日常サポートから最先端テクノロジーまで
サイトワールド2019
サイトワールドは、最先端の技術・機器、日常用品、および、ユニバーサルデザイン(UD)製品等の展示会、講演会、学会発表、フォーラム、体験会等が催される、世界でも例を見ない視覚障害者のための総合イベントです。来場者一人ひとりが主役です。
日時 平成31年(2019年)11月1日(金・日本点字の日)、2日(土)、3日(日・文化の日)午前10時~午後5時(11月3日は午後4時まで)
会場 すみだ産業会館サンライズホール(JR・地下鉄半蔵門線 錦糸町駅前 丸井錦糸町店8・9階)東京都墨田区江東橋 3-9-10 墨田区丸井共同開発ビル
主催 サイトワールド実行委員会 〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-29-7-401 (株)ラビット内 TEL:03-5292-5644 FAX:03-5292-5645 E-mail:sightworld-bj@gmail.com
本誌は、埼玉県民共済生活協同組合の助成により作成したものです。