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日盲社協通信 平成29年(2017年)4月号(通巻74号)
編集人:福山博 発行人:高橋秀治
発行所:社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)
National Council of the Agencies of the Welfare for the Blind (NCAWB)
http://www.ncawb.org/
もくじ
大きな変化が期待される社会福祉制度 理事長 高橋秀治
私たちにとって今最も必要なことは 常務理事 舛尾政美
新たな出発を迎えて 常務理事 長岡雄一
生まれ変わった社会福祉制度のポイント 事務局長 高橋秀夫
<岐阜大会> ご来県をお待ちします ―― 長良川で出会い、触れ合い、語り合い
岐阜アソシア 視覚障害者生活情報センターぎふ館長 山田智直
(誌上慶祝会)
竹内昌彦先生の受賞を祝して 岡山ライトハウス理事 河田正興
渡辺昭一さんの厚生労働大臣表彰を祝う
全国視覚障害者情報提供施設協会参与 加藤俊和
岡村原正氏の塙保己一賞「貢献賞」と内閣総理大臣表彰のダブル受賞を祝う
(株)ラビット取締役社長 荒川明宏
山田智直さんの近藤正秋賞受賞をお祝いして ―― 今後の可能性に期待!
全国視覚障害者情報提供施設協会事務局長 藤野克己
点字ブロック誕生50年 点字毎日編集長 三角真理
平成28年度音訳指導技術講習会 音訳指導員研修委員会委員長 高橋三智世
平成28年度生活施設部会研修会 生活施設部会長 茂木幹央
平成28年度自立支援施設部会職員研修会報告 自立支援施設部会長 山下文明
点字出版部会職員研修会 in 佐賀 点字出版部会副部会長 福山博
日盲社協レッツゴー事業所のご利用をお待ちしています
日盲社協レッツゴー事業所施設長 菅原俊信
点字の存在を確かなものにするために 日本点字技能師協会副理事長 上野多美子
日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)新役員紹介
日盲社協事務局だより
編集後記
サイトワールド2017
大きな変化が期待される社会福祉制度
理事長 高橋秀治
社会福祉法人の制度改革案が厚労省から提案されて以来、ここ2、3年、全国各地の社会福祉法人は大騒ぎとなった。それは一定の収入を得ている大法人だけでなく、規模を問わずすべての法人が対象とされたためである。
そこで全国の社会福祉法人は、平成28年の9月頃までに厚労省、東京都、所在地の区・市役所等から説明を聞くことになり、厚労省の指示する内容に添って定款を変更して、頭を切り換えることになった。
かくして今後は、親族の役員への選任は制限され、理事会と評議員会は合同会議ができなくなり、それぞれが理事会・評議員会の権限と責任を明確にすることになった。こうして行政は、社会福祉法人の組織体制(ガバナンス)の改善を求め、事業の計算書類、現況報告書、役員報酬基準などの公表規定の整備も求めてきた。
また、純資産から事業継続に必要な金額を控除し、福祉サービスに使えない財産をはっきりさせ、社会福祉充実実践額がある法人には、「社会福祉充実計画」策定を義務づけるなどの、財源の規律強化をうながした。そして、法人経営の原則にあたっては、地域における日常生活や社会生活上支援を要する者に対する無料、または低額の料金で福祉サービスを提供することを責務とした。
定款を変え、組織体制を強化し、事業運営の透明性を図り、財務規律を強化し、地域での公益的な取り組みを行う責務があるというわけだが、中小の法人では困惑が広がった。果たしてついて行けるのか、首を横に振ってしまいそうなのである。
「点字図書館はこうせよ」との具体的な指導はないのだが、果たして新しい改正法にどこまでついて行けるかは、これからの課題である。
これらの難題を受け入れるにあたり、わが加盟組織の皆さまはどう対応されたのであろうか。大変だったと想像される。ただ多くの組織が取り組んだわけなので、たとえ部会が違ったとしても情報交換は可能で、そういう意味ではお互いに協力できたのではないかと拝察している。今後も共通の悩みはみんなで考えたいものである。
今年の日盲社協の全国大会は、岐阜アソシアを主管施設に6月22・23の両日、岐阜市で開催される。
主なイベントでは、「障害者差別解消法実施1年を振り返る」と「あはき法19条を守る会」の二つを重点項目とする。
障害者の差別解消法は、障害者の権利条約とともに大きな期待がかけられているが、現実には余り話題にのぼっているわけではない。また今、裁判になっている「職業の自由を侵しているかどうかを争点としたあはき法19条の問題」は、判決次第では盲界に大きな打撃を与える。
部会を越えて、日盲社協の皆さまの積極的なご参加をお願いしたいものである。
私たちにとって今最も必要なことは
常務理事 舛尾政美
平成29年3月23日、日盲社協は東京・上野の東京文化会館会議室において評議員会を開催し、平成29年度の事業計画・予算などを審議し決定しました。
本部関係では、主なものは4月から始まる新たな社会福祉法人としての運営をはじめ、東京視覚障害者生活支援センターの事業を軌道に乗せることやレッツゴー事業所の充実、さらに盲人ホーム杉光園の充実など大変な難問が山積(さんせき)しています。そのほかこれまで長年にわたって国や関係方面に陳情・要望を続けながら実現が困難な課題も山積しています。そしてこれらの解決にはやはり強い政治力が必要だと思われます。
点字出版部会関係では、点字製版機などの購入のための国の補助、視覚障害者に対する広報活動の充実などを要望しています。情報サービス部会では、相談業務職員の増員と点字の一般への普及支援を要望しています。自立支援施設部会では就労支援や機能訓練、障害者の災害時のさらなる支援を求めており、生活施設部会では養護盲老人ホームの入所要件の緩和とグループホームの入所要件の緩和を要望しています。さらに盲人用具部会では、IT機器の充実と地方の自治体への用具の啓発活動などを国などへ要望しています。いずれも難題で、解決には強い政治力が必要です。
山口県盲人福祉協会では30数年前、養護盲老人ホームを立ち上げる運動を始めた頃から、政治力を重要視しています。
その頃、山口県の視覚障害者福祉大会の決議を受けて、私は県の障害福祉課に盲老人ホーム建設について陳情しました。
課長には「自己資金がいくらあって、土地がどの程度あって相談に来るべきで、資金もない、土地もない、そんな状態で相談に来るのは非常識」と言われました。
その後(ご)、私は下関の市会議員、市長をはじめ、県会議員やさらに国会議員などの力を受けられるようにしっかり運動を続けました。その結果、昭和62年4月、春光苑を立ち上げ、平成17年3月に春光苑に併設してデイセンターを立ち上げ、平成22年にはグループホーム光明園を立ち上げることができたのであります。
今、私たちはグループホームの大幅な定員増と、現在1名の県内の歩行訓練士配置を、新年度から数名配置に拡充させることを目指して運動を進めています。
3月12日、下関の市長選挙がありました。2期8年の現職と新人2名の間で激しい選挙戦が行われました。最初は新人が圧倒的に有利と伝えられましたが、後半は現職が巻き返したと言われました。しかし最後は安倍総理が直接動いたようで、大変な僅差でしたが新人が当選しました。
今、私たちは国をはじめ関係方面に要望を続けており、解決困難な問題をいささかでも早期に解決させるためには、やはり日盲社協も政治力を高めることが必要だと思われます。このためには、あらゆる機会を活用して最善の努力を尽くして運動をすることが肝要だと考えております。(山口県盲人福祉協会理事長)
新たな出発を迎えて
常務理事 長岡雄一
今回は、常務理事と言う立場より、東京視覚障害者生活支援センターの所長という立場での話が中心にならざるをえません。
施設名は原稿のミスでも、校正のミスでもありません。4月1日から、「東京都」から「東京」だけとなりセンターの名称変更をしました。これは、センターが東京都の指定管理を離れ、日盲社協に民間移譲されたためです。
昭和58年に設立され、それ以来、委託、指定管理を続けてきました。指定管理期間は11年におよびます。それが2017年3月で終了しました。
東京都にある指定管理施設は、すでにかなりの部分が民間移譲されており、順番だけを見ると、センターは比較的遅い移譲となりました。先行している施設があるので、移譲に当たっては、手続きや移譲後の施設(事業所)のあり方について、かなり参考にさせていただきましたが、いよいよ自分たちの番になると、それらが本当に参考になったのか、自信はありません。
では何が変わるのかと言えば、一番は、収入の不安定さでしょう。指定管理では、年間予算が何年か前から分かっていますし、それが保障されているわけです。しかし、これからはそうは行かず、常に不安定との戦いになるかもしれません。
機能訓練も就労移行支援もともに有期限であり、今いる利用者が、来年の同じ時期にいるかといえば、そうした事例は少なく、8割から9割の方はいらっしゃらないというのが実態です。一方で、それならできるだけ長くセンターでの訓練を受けてもらおうとすると、個別支援計画との整合性がうまくとれなくなります。
職員も常にこのジレンマに苦しんでいるのです。
こうした状況下では、利用者の数の確保と利用日数を増やしていく工夫が必要になります。
東京という大都会には4万人近くの視覚障害者がおられます。昭和58年のセンター開設以来、今までの利用者は1,000名を越えましたが、まだまだ多くの視覚障害者にセンターの存在が知られていません。
現在でも機能訓練には50名、就労移行支援には30名の利用者がいらっしゃいますが、1日に来られる方を平均すると、それぞれ19名、11名程度になります。
健全な運営をしていく上ではぎりぎりの数字なのですが、季節により、また年により相当の出入りがありますから、この数字に安閑としてはいられません。
ここ数年、特に言われるようになった医療との連携や地域の視覚障害者との連携をさらに進めていくことが、今のセンターに求められているものだと思っています。そして、今まで以上に、毎日、毎月が勝負なのだと心に銘じているところです。(東京視覚障害者生活支援センター所長)
生まれ変わった社会福祉制度のポイント
事務局長 高橋秀夫
このたび日盲社協の評議員選任・解任委員に就任しましたので理事・評議員を3月15日付で退任しました。
引き続き事務局長として邁進することになりましたので、なにとぞご支援・ご協力のほどお願い申し上げます。
平成28年3月に社会福祉法等の一部を改正する法律が成立したので、会員施設におかれましては、定款変更等で東奔西走の日々だったのではないでしょうか。そして改正社会福祉法の全面施行が平成29年4月1日からスタートしました。この改革は公益性・非営利性を確保する観点から制度を見直し、国民に対して説明責任を果たし、社会福祉に貢献する法人の在り方を徹底することを達成目標としています。
新制度のポイントは以下の5つです。
①経営組織の在り方の見直し、②事業運営の透明性の向上、③財務規律の強化、④地域における公的な取り組みを実施する責務、⑤行政の関与の在り方です。
会員施設職員の皆さまに比較的なじみのある2点について説明します。
まず、評議員会が開催されるとなると職員は朝から会場設営やお茶の準備等でせき立てられますが、その評議員会が生まれ変わりました。法改正後の評議員会は、①定款変更、②役員・会計監査人の承認、③評議員・理事・監事の報酬の基準の承認、④計算書類(予算・決算等)の決定について決定権限を有することになりました。
これまでの理事会に意見を述べる諮問機関から、法人の重要事項の決定を行う議決機関に評議員会が変わったのです。
従いましてこれからの法人は、評議員の選任方法や人選の決定には慎重かつ多方面からの検討を要することになり、このため新たに評議員選任・解任委員会が設置されたのです。
職員にとって監査がある日は、慣れていてもある種の緊張感が走るものです。次に、これから説明するのは、先に述べた、5の「行政関与の在り方」です。
監査は、①施設の財務内容、②理事および評議員の職務執行状況、③利用者の事故・苦情処理状況、④施設職員の資格保有率、離職の状況を検討します。そして行政監査時の対象とするか否かという選択を行います。このため職員も日頃から法令遵守に努めるとともに、利用者の対応には細心の注意を払うことが必要です。
日盲社協はこの4月から東京視覚障害者生活支援センターが東京都から移譲されました。3事業所とも業務効率化を図り、事業コストの見直しをするだけでなく、同じコストでより高いサービス提供に努め付加価値を高めます。また、後任の人材育成として、経営の視点を持ち、外部環境の動きや変化に対してすぐさま対応できる職員の配置を心がけていきます。皆さまの変わらぬご支援をお願い致します。
<岐阜大会>ご来県をお待ちします
―― 長良川で出会い、触れ合い、語り合い ――
岐阜アソシア 視覚障害者生活情報センターぎふ館長 山田智直
今年の第65回全国盲人福祉施設大会の主管をさせていただきます岐阜アソシア
視覚障害者生活情報センターぎふです。当施設は、50年以上も前から「出会い、触れ合い、語り合い」を合い言葉に、独身視覚障害者の出会いの場「かがり火」を企画・運営しております。そこで、今大会においても、お越しいただきました皆さまが出会い、触れ合い、語り合えるように準備を整えております。
メイン会場となる岐阜グランドホテルは、目の前を清流・長良川が流れており、そこでは毎年5月から10月にかけて1300年の歴史と伝統を誇る鵜飼が行われています。
また、対岸には標高329mの金華山がそびえ、頂上には織田信長が天下統一のための拠点とした岐阜城があり、現在は格好のハイキングコースで、麓の岐阜公園からはロープウェーが山頂まで通っています。
岐阜ならではの豊かな自然と歴史・文化を感じながらゆったり過ごせるリゾートホテル、それが岐阜グランドホテルです。
ちょっとご不便をおかけしますが、今回は全室シングルルームのご用意はありません。古き良き日盲社協大会のように大部屋で大いに語らっていただき、交流を深めていただければと思っております。
ぜひ、皆さまのお越しをお待ち申し上げております。
会場:岐阜グランドホテル
〒502-8567岐阜県岐阜市長良648番地
TEL 058-233-1111(代表)
交通:名鉄岐阜駅、JR岐阜駅より岐阜バスで約20分。タクシーで15分。両岐阜駅より無料シャトルバスも運行しています。
日程
6月22日(木)
12:00~13:00 受付
13:00~13:15 開会式・オリエンテーション
13:30~16:00 研修会
16:10~17:40 事業部会(5部会)
18:00~20:00 交流会
6月23日(金)
09:00~10:30 講演・受賞者懇談会
10:45~12:00 式典(表彰・来賓祝辞等)
主管施設:岐阜アソシア
〒500-8815 岐阜県岐阜市梅河町1-4
TEL:058-263-1310
FAX:058-266-6369
誌上慶祝会
竹内昌彦先生の受賞を祝して
―― 塙保己一大賞とヤマト福祉財団小倉昌男賞のダブル受賞 ――
岡山ライトハウス理事 河田正興
平成28年の第10回塙保己一大賞(埼玉県主催)と、第17回小倉昌男賞(ヤマト福祉財団主催)の2賞を、岡山ライトハウスの竹内昌彦理事長が受賞の栄に浴された。
竹内氏は、岡山盲学校理療科教諭そして教頭として、あはき師を目指す生徒や後進の指導に当たるかたわら、ご自身の体験を基に、障害者の人権理解啓発のための講演を続けてこられた。盲学校退職後は、この講演活動を全国で展開、熱く語られる講演は大変好評で、現在はこの講演活動は優に年間100回を超え、会場も北海道から九州までにおよんでいる。
さらにこの講演活動を通じての講演料や寄付金などをプールし、これを原資にモンゴル・キルギスの両国に視覚障害者支援施設を設置、発展途上国の視覚障害児・者の教育と職業リハビリテーションの向上に尽力されている。
また、この両国の支援施設の設置活動中に、経済的理由で治療が受けられず、視覚障害となっている多くの子どもの存在を知り、「ヒカリカナタ基金」を主宰、これらの子ども達の治療費を援助する活動も始められている。
一方、竹内氏の青年時代、岡山の発明家三宅精一氏が開発した視覚障害者誘導用ブロックは「点字ブロック」と命名され、岡山の地から全国へ、さらに全世界へと普及が進んでいるが、竹内氏はこの点字ブロックの理解推進にも中心となって活動され、平成22年の「点字ブロック発祥の地」モニュメント設置の事業にも中心となって奔走された。「点字ブロックを守る会」の会長として、去る3月18日に「点字ブロック誕生50年記念シンポジウム」(於岡山)を主宰されたのは記憶に新しいところである。
竹内氏は終戦直前の昭和20年、御父君の勤務先であった中国天津で出生、戦後の引揚げ船の中で罹患した高熱を伴う肺炎の後遺症で弱視となり、さらに小学生のときに失明された。幼少期には壮絶な「いじめ」被害や、逆に障害に大変理解があり指導力の高かった担任の先生に巡り合うという幸運にも恵まれ、青年期以後は様々な差別解消に向けた行動にも参画された。このような実体験を基に語られる竹内氏の講演は、多くの方々の心を引きつけ、涙と笑いと感動を与え続けていることをも申し添えておきたい。
渡辺昭一さんの厚生労働大臣表彰を祝う
―― 点字製作を支え点字に生きる ――
全国視覚障害者情報提供施設協会参与 加藤俊和
京都ライトハウス情報製作センター所長の渡辺昭一氏が、平成28年度の厚生労働大臣表彰を受けられ、12月6日に授与式があり、天皇・皇后両陛下に拝謁されました。
点字出版を支え続けて36年
渡辺さんは1952年生まれで、小学部5年から大阪市立盲学校に入り、視力がさらに低下した中学部3年からは点字使用となって苦労されました。なお、1972年には、盲学校弁論大会で全国優勝されています。
その後、立命館大学経済学部・文学部を卒業し、1982年2月から京都ライトハウス点字出版所に入って、点字製版を担当されてきました。コンピュータが導入されて入力作業と校正に従事するかたわら、多くの点訳ボランティアの指導にも当たられ、2011年度からは同情報製作センターの所長の重責を果たしてこられました。
一方では、京都府盲人協会(現・京都府視覚障害者協会)の青年部長をはじめ、介護保険管理者としても活躍されました。
また、日盲社協点字出版部会においては、公的保障委員会をリードされるなど様々な活動を続けられ、日本盲人福祉委員会では、選挙公報点字表記委員会の委員長も務められるなど、本当に幅広い活動をされてこられました。
点字の世界に生きる
なんといっても、点字の世界においては、渡辺氏を抜きには語れません。現在、日本の点字表記の総括を担っている日本点字委員会においては、副会長の重責を務められているほか、実務面においても、日本点字表記法を編纂する委員としても、大きな役割を果たされています。また、2012年からは歴史ある近畿点字研究会の代表幹事も務められています。
私は、渡辺さんの大学の卒論の墨字訳を担当させていただいてから特に親しくさせていただいてきました。彼は、点字関係などの会合のたびに、昔はかさばる何冊もの点字本をいつも携えて参加していました。
点字ピンディスプレイが普及してからも、当時の大きく重い機器類を詰め込んだやけに重いカバンを、小柄な身体で担いでこられ、いつもしっかりと調べて対応され続ける姿に心を打たれる思いでした。
渡辺昭一氏のこれまでのご努力に敬意を表するとともに、表彰を心より祝福いたします。
岡村原正氏の塙保己一賞「貢献賞」と内閣総理大臣表彰のダブル受賞を祝う
株式会社ラビット取締役社長 荒川明宏
岡村さん、第10回塙保己一賞「貢献賞」と平成28年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰「内閣総理大臣表彰」のダブル受賞おめでとうございます。
受賞は別々な年に受けた方が2回喜べていいのになあと私なら思いますが、控えめな岡村さんのことですから一度で済んでよかった、なんて思っているのでしょうか?
私と点字プリンタとの出会いは今から30年前、まだ、あまりパソコンが普及していない時代でした。私はコンピュータプログラマをしていたので、普段はオプタコンを利用してプログラムのチェックをしていましたが、長いものや誤り箇所がわからない時などは点字プリンタに打ち出して確認していました。当時の点字プリンタは印刷が早いとはいえないため、どうしても困った時だけに使う、そんな用い方でした。
また、私は仕事でいろいろな会社の点字プリンタを扱ってきました。その中で岡村さんの(株)JTRの商品を扱うときに時々思うことがありました。「どうして岡村さんの会社は新機種を出さないのだろうか、新しい物を作る技術力が落ちているのかな・・・」と勝手な想いをしていました。
今回受賞に当たりいろいろ考えを巡らせ、「同じ商品を長く作り続けるすばらしさ」というのに気がつきました。新機種にすると「今使っているパソコンで動かない、ソフトを新しくする必要がある、新機種ではこの機能はなくなった」といろいろなトラブルに見舞われます。でも岡村さんのプリンタの場合には「前回と同じだから」ということで、お客も安心し、設置などに訪問する私たちもとても安心して行えます。
コンピュータを取り巻く業界はどんどん高機能になり、操作も複雑になり、道具なのだから簡単に使えなくてはいけないはずなのに難しく使いにくくなっています。
その流れに巻き込まれず、同じ仕様で作り続ける商品へのポリシーはすばらしいものだと初めて気がつきました。
昨年最新機種の「ESA300X2」の納品に立ち会う機会がありました。約500万円の点字プリンタとはどのようなものだろうと興味と不安で見ていました。操作性は従来の機種と同じで印刷速度は私が考えるより速く私には想像のつかないような様々な技術と今までのノウハウが蓄積された素晴らしいものだと感じました。
視覚障害者にとって点字はとても大切な文字です。物作りが難しくなりつつある日本ですが、これからも読みやすい点字プリンタの製作をよろしくお願いします。
山田智直さんの近藤正秋賞受賞をお祝いして
―― 今後の可能性に期待! ――
全国視覚障害者情報提供施設協会事務局長 藤野克己
山田智直さんは、名古屋盲学校高等部を卒業してすぐに、点字図書館で点字に関わる仕事をしたいと、当時の岐阜訓盲協会点字図書館(現・岐阜アソシア 視覚障害者生活情報センターぎふ)に就職しました。今から31年前のことです。
すでに点字の読み書きは十分にプロとして役立つ技能を身につけていましたので、即戦力として点字校正を中心とした点字製作の業務を担い、その後、点訳ボランティアの養成、指導と仕事の幅を広げていきました。
点字図書館の世界にパソコンが導入されるようになると、独学でそれを習得し、その成果を視覚障害者へのパソコン指導に積極的に生かしてきました。
2010年度からは日盲社協情報サービス部会の「情報機器等の支援者講習委員会」委員長に就任し、点字およびパソコン指導に関して全国レベルの指導者として活躍しています。
一方、2008年4月に岐阜県視覚障害者福祉協会の副会長に就任し、当事者団体の役員としての関わりも増えてきました。
2014年4月に岐阜アソシアの常務理事、視覚障害者生活情報センターぎふの館長となってからは視覚障害者の就労支援の場、視覚障害者専用の養護老人ホームの設置など、岐阜における視覚障害者の課題を的確にとらえ、その解決に着実に取り組んでいます。
山田さんは、生え抜きの職員として31年にわたって同じ施設で業務を行ってきたため、施設を利用する視覚障害者および施設を支えるボランティアの方々から厚い信頼を寄せられています。
これらのことから、2016年12月に名古屋ライトハウス愛盲報恩会の第11回近藤正秋賞を受賞されました。
この賞は、「視覚障害者で地域団体活動や就労、経済政治等の分野で活躍し、著しい功績のある人」を顕彰の対象としています。これまでの実績と今後の活躍の期待を込めて、山田智直さんにふさわしい賞と言えます。
山田さんは、まだ40代。この4月1日に全視情協副理事長にも就任されました。
全国で数少ない当事者館長の一人として当事者である強みを生かし、今後の可能性とご活躍を大いに期待したいと思います。
点字ブロック誕生50年
点字毎日編集長 三角真理
今年の3月18日は、点字ブロックが誕生して50年という記念日でした。誕生の地はどんなところでしょう。そして点字ブロックを考案した岡山県出身の三宅精一氏(1926~82)とはどんな人物だったのでしょう。
まず発祥の地へ行きます。岡山市の国道旧2号(現在の250号)の原尾島交差点です。記念碑が立っているのですぐにわかります。今もある横断歩道は、第1号を敷設した1967(昭和42)年にもありました。歩いて15分ほどのところには盲学校があります。第1号の敷設場所としてこの地が選ばれたのは、視覚障害の子供たちが、この横断歩道を見つけやすいようにと考えられたためでしょう。点字ブロックは、横断歩道の両方のたもとに、横断歩道と同じ幅で、歩道の幅全体を埋めるように並べられました。つまり大きな正方形に仕上がりました。
では、考案者の精一氏はどんな人だったのでしょう。弟の三郎さん(75)を訪ねます。当時、精一氏の隣にいて、発明のサポートをしていました。精一氏は地元で発明家として知られていました。
精一氏が点字ブロックを考えだすきっかけとなったのは、日本ライトハウス理事長の故・岩橋英行氏と出会ったことでした。視力が落ちていく岩橋氏と付き合い、盲人の交通安全を考えます。さらに岡山の道路で、目の不自由な人が道路を横断しようとして、その横を車が勢いよく走っていくのを目の当たりにして、はっとします。「どうしたら横断歩道の場所を知らせられるか」を考えます。ヒントとなったのは岩橋氏が「コケと土の違いは靴を通した足の裏の感触でわかる」と話していたことでした。地面に突起をつくり、足の裏の触覚にうったえる方法を考えます。建築会社に勤務経験があった三郎さんが、どんな形の突起にするのがよいかを考えました。「丸は方向性がなく、どこから触れても同じ。さらに目の見えない人が使う『点字』のイメージとつながる」と三郎さんは考えました。
第1号が誕生した日、精一氏は岩橋氏に「見てほしい」と呼び寄せます。岩橋氏は歩いた感想をつぶやきました。三郎さんがそのときのことを覚えています。「岩橋さんが小さな声で『これはいける』と兄に言ったんです。それを聞いてきっと兄は『独りよがりではなかった』と確信したのです」
点字ブロックは順調に世の中に広がったわけではありません。受け入れられなかった時期もありました。しかしそれらを乗り越え、世界の視覚障害者の歩行の助けとして大きな存在へと成長しました。
平成28年度音訳指導技術講習会(認定者対象講習会)
音訳指導員研修委員会 委員長 高橋三智世
昨年の11月9日(水)から11日(金)、霊友会釈迦殿・小谷ホールにおいて69施設141名の参加者にて、平成28年度第35回音訳指導技術講習会を実施した。
1日目の講習、①「ボランティア養成概論」では、音訳プログラムの内容と、事前にボランティア養成の問題点等の調査アンケートを行い145の施設・団体から回収したアンケートのまとめと分析を行った。なお、協力施設等にはアンケート結果を送付した。②「音声表現技術Ⅰ」は、「伝わる読み」の5つのポイントをどのように指導に活かすのかを具体的に説明し、指導者の心得を説きながら実践方法を指導した。
2日目、①「音声表現技術Ⅱ」は、課題の読み指導をワークショップ方式で進め、読みと指摘方法と文脈のポイントの説明を行い指導の考え方を定着させた。②「録音技術」は、録音機器の事前アンケートを実施。録音機材等の検証は難しいがアンケートにより音訳者が抱える問題点などを掘り起こし、多くの事例を共有した。周辺機器の使い方も具体的にわかりやすく説明できた。③「処理技術」は、あらかじめ準備した図・表の処理文の問題点を明らかにさせ、音訳者を育てる問題点の伝え方を考えた。④「映画の音声ガイドについて」は、音声ガイドの歴史と現状と実際を説明。音声ガイドのポイントと製作過程を分かりやすくまとめて伝えた。豊富な音声ガイド製作の体験で培った知識を、初めて音声ガイドについて聞く受講者にもわかりやすく丁寧に説明した。
3日目、①「校正技術」は、指導者として校正にどう向き合うか。「校正のポイント」を説明。事前アンケートの事例をまとめ、「校正の問題点」を指摘。ワークショップ方式で校正の在りかたを示した。②「デイジー編集技術」は、事前アンケートにて編集についての質問をまとめて回答。全般的な内容から詳細な内容について説明し、テキストデイジーとマルチメディアデイジーの実際も紹介した。
今回のテーマは「指導法」で、講習方法は参加型を多く取り入れた。事前アンケートで問題点をつかみ、受講者が興味を持ち積極的に参加することをうながした。テーマを絞ったため新たな切口での講義となり新鮮な内容となった。事後アンケートでは、即実践に活用できるとの高評価を受けた。また、現在公共図書館の職員が委員として協力してくれており、公共図書館の参加者も増加傾向にある。
平成29年度の認定講習会より、受講者の選考と認定試験方法を変え、講習会の名称も「音訳指導員研修会」とすることにした。変更するにあたり、点字指導員研修委員会委員長には大変お世話になった。
最後に、委員・受講者とその施設の皆さま、そして会場を提供するだけでなく準備等のご協力をいただきました岩上義則館長はじめ、霊友会法友文庫点字図書館の皆さまに対して、この場をお借りして篤く御礼を申し上げたいと思います。
平成28年度生活施設部会研修会
生活施設部会長 茂木幹央
平成28年度の生活施設部会の施設長並びに職員研修会は、視覚障害グループホーム熊谷ライトハウスが当番施設となり、平成28年11月24・25の両日開催された。
これまでの生活施設部会の研修会で、グループホームが当番施設を務めるのは今回が始めてである。視覚障害者の生活が多様化してきていることを示す一つの兆候といえよう。熊谷ライトハウスは、視覚障害グループホームのモデルとして、平成26年3月1日に開設された施設である。
講演1は、「一般型特定の指定を受けた養護老人ホーム聖ヨゼフ・ホームの経営」で、講師は奈良県所在の養護老人ホーム聖ヨゼフ・ホーム(晴眼者の施設)施設長平岡(ひらおか)毅(たけし)氏であった。
講演の内容は、一般型特定の指定を受けるための条件、申請手続き、指定を受けた結果等についての話であった。
ヨゼフ・ホームは、平成27年4月から制度化された一般型特定の指定を受けた施設である。一般型特定の指定を受けたことによって収入増を図ることができたとのことであった。
養護老人ホームは、平成18年4月から外部サービス型特定の指定を受けられるようになっているが、平成27年4月からはさらに一般型特定の指定を受けることが出来るようになっているわけである。
講演2は「養護盲老人ホーム祥風苑の過去、現在、将来」で、講師は岩手県所在の養護盲老人ホーム祥風苑施設長小松(こまつ)秀子(ひでこ)氏であった。
講演の内容は施設の沿革と施設の最近の経営状況ということであった。
祥風苑では、施設経営の前進を図るために平成28年度から一般型特定の指定を受けたとのことであった。盲老人ホームの中で一般型特定の指定を受けたのは、祥風苑がおそらく最初のケースであると思われる。これは同施設の経営の先進性を示す象徴として理解してよいと思う。
講演3は「盲聾者の現状と将来について」で、講師は全国盲ろう者協会事務局次長橋間(はしま)信(しん)市(いち)氏であった。
講演の内容は、実態調査の結果盲ろう者は1万4千人であったとのことや今後は盲ろう者を支援するためのナショナルセンターを建設したいとのことであった。
今回の研修会には15施設から37名が参加した。
平成28年度自立支援施設部会職員研修会報告
自立支援施設部会長 山下文明
平成28年度自立支援施設部会職員研修会は、大阪市の日本ライトハウス情報文化センターにおいて、平成28年11月10・11の両日開催しました。
「視覚障害者への支援」をメインテーマに、障害者差別解消法や障害者虐待防止法の掲げる目的の観点から、利用者の安心と安全に繋げていく支援のあり方を議論する中で、支援者としての一人ひとりの職員の気づきと成長を目的として、全国から14施設、21名が参加しました。
1日目は、「施設における虐待防止・差別解消対応実践解説書の作成」についてで、部会長より報告の後、「差別解消と権利擁護について ―― 当事者からのメッセージ」をテーマに、榊原道眞(さかきばらみちまさ)氏(眼の会会長)より講演をいただきました。眼の会にて実施した差別体験のヒヤリング報告を中心に、当事者の貴重な声を聞くことができました。また、活発な質疑応答の中で、「合理的配慮」にはハード・ソフトの両面があり、特にソフト面=心のバリアフリーがとても大事でこれは当事者自身が伝えていく努力が必要との意見がありました。
2日目は、「差別解消と権利擁護について ―― 私たちの陥りやすい罠」と題したグループディスカッションが行われ、利用者の呼称、「ちょっと待ってね」と利用者を待たせてしまうこと、また、事故・ヒヤリハット委員会の定期開催、苦情解決研修会の開催、ヒヤリハットをデータベース化し職員全体で情報共有している等の各施設の実態と取り組みが報告されました。
問題が発生したときの初期対応がとても重要でそのための職員の技術向上が必要であること、第三者評価などの外部の視点から支援の実態をチェックする必要があることの確認をすることができました。
研修の最後は、「鉄道転落事故と私たちの課題」をテーマに、東京メトロ銀座線で起きた盲導犬使用者の転落死亡事故について、長岡雄一(ながおかゆういち)氏(東京視覚障害者生活支援センター所長)より、事故の報告と調査分析の進捗等について詳細な説明がありました。
今回は、私たちが提供する日常的な支援の中で、ともすればあたりまえのこととして忘れてしまいがちな、でも一番大切である「人の尊厳を守る」「安心と安全を担保する」ことについて、当事者視点、支援者視点、施設事業体視点から意見が出され、これを情報共有し、施設や職員の課題として考え続けることのできる有意義な研修会になったと感じました。
点字出版部会職員研修会 in 佐賀
点字出版部会副部会長 福山博
2016年12月1・2の両日、佐賀市天神の佐賀ライトハウス六星館において、日盲社協点字出版部会(肥後正幸(ひごまさゆき)部会長)は、平成28年度職員研修会を、15施設35名の参加で開催した。
初日の13時10分からは2時間かけて、京都ライトハウス情報製作センターの渡辺昭一所長と、日本ライトハウス点字情報技術センターの福井哲也所長を講師に、日本点字委員会発行『試験問題の点字表記(第2版)』をテキストに、「『試験問題の点字表記』等について」をテーマに、実践的な講習会が行われた。
テキストとは別に、それぞれの講師からは「『試験問題の点字表記』の補足資料」が配布された。
渡辺氏の資料には、<試験問題の読み合わせ校正は、外部に声が漏れない部屋を確保する。部外者の立ち入りを禁止する。読み合わせは、主催者もしくは主催者監視のもとで、施設の晴眼職員と触読校正職員とが一組になって行う。休憩を挟む場合は施錠し主催者に鍵を預ける。作業が2日以上になる場合は、1日目の終了時に、墨字試験問題、点字試験問題の校正刷りおよび、テキストデータ、点訳データを記憶媒体に保管して主催者に預ける>などの具体的なノーハウが記載されており、それに従って講義が行われた。
福井氏の資料には、統一英語点字(UEB:Unified English Braille)導入にともなう点字表記の変更事項や表記上の留意事項などが記載されており、それに従って講義が行われた。
休憩を挟んで15:30からは、北九州市福祉事業団福祉用具プラザ北九州職員の神屋(かみや)郁子(いくこ)氏によるパワーポイントによるスライド写真を使った「熊本地震と視覚障害被災者支援」をテーマにした報告が行われた。
神屋氏は歩行訓練士で、昨年(2016)の3月までは京都ライトハウスに勤務しておられたが、出身が大分県であることからできるだけ故郷(ふるさと)に近いところで働きたいとの希望で転職。北九州市の現在の職場で働き始めて間もなく熊本地震が発生した。
彼女は東日本大震災でも視覚障害被災者支援を行っており、そのときの経験を交えながら、熊本地震における視覚障害被災者支援を具体的に報告するとともに詳らかになった課題を指摘した。
二日目は、午前9時から1時間、県立佐賀城本丸歴史館古川英文(ふるかわひでふみ)副館長による「幕末佐賀藩の奮闘 ―― 藩主と先生」と題した講演が行われた。
佐賀藩は幕末に反射炉を完成させ、当時の最新鋭の大砲であったアームストロング砲を製造したり、海軍の創設などを行い、明治維新を推進した雄藩の一つで、下記のような「佐賀の七賢人」を始めとする人材を明治政府の主要官職に供給した。
それを可能にしたのは、佐賀藩が当時の最先端の技術や知識が集まる長崎を警備していたことと、英邁な藩主鍋島直正とその教育係に古賀穀堂という佐賀藩の藩校である弘道館教授がいたからであるということであった。
なお、佐賀の七賢人とは、鍋島直正(藩主、北海道開拓使長官)、佐野常民(大蔵卿、日本赤十字社創設者)、島義勇(しまよしたけ)(北海道開拓使主席判官、秋田県令)、副島種臣(参議、外務卿、内務大臣)、大木喬任(初代文部卿、参議、司法卿、元老院議長)、江藤新平(司法卿、参議)、大隈重信(早稲田大学創設者、内閣総理大臣)である。
10時10分から1時間は、元北九州盲学校校長で福岡点字図書館吉松政春(よしまつまさはる)館長による「盲教育と点字出版」と題した講演が行われた。
まず、児童・生徒が減少し、障害が重複化・多様化する盲学校の厳しい現状の紹介があった。そして、点字・音声デイジー・拡大文字・電子データと多様な教科書のニーズがあり、盲学校における専門性の欠如という深刻な課題などを赤裸々に語り問題提起していた。
11時20分からは岡山ライトハウスの職員である石橋千嘉枝(いしばしちかえ)氏による手作業での「上製本の製作方法」のデモンストレーションがあった。
通常、製本のときは木工用ボンドを水で薄めて使う。そうしなければ刷毛で塗ることができないからだ。しかし、水で薄めるとその分接着力が落ちるので、表紙を束ねた本文の背の部分にしっかり貼り付けるためには木工用ボンドを原液で使いたい。そこで岡山ライトハウスでは、刷毛でなく、東京都台東区雷門2-19-4にある手植ブラシ「藤本虎(ふじもととら))」(TEL:03-5828-1818)の馬毛の歯ブラシ(11番=432円)を使っていた。多様なブラシを使ってみて、やっとたどり着いた1本だということであった。
その後、佐賀ライトハウス六星館の施設見学を行い、最後に「情報交換」を行って研修会を終了した。
日盲社協レッツゴー事業所のご利用をお待ちしています
日盲社協レッツゴー事業所施設長 菅原俊信
3年目を迎えた私たち日盲社協レッツゴー事業所は、東京での同窓会や各種会議、入学試験や研修、観光、コンサート鑑賞、ハイキングなどでのご利用が増えています。
皆さまもぜひ東京にお出かけください。漠然とした計画でもサービス責任者が一緒にお話をうかがいながら、スケジュール調整をさせていただきます。
東京での第一歩は東京駅で、羽田空港でスタートしましょう。
これまで出会えなかったなどの苦情は1件もなく、安心安全です。お出迎えに伺うガイドヘルパーは、介護実務経験のある職員を派遣しますのでご安心ください。
私たちは以下の使命や経営理念に沿って、皆さまとご一緒させていただきます。
ミッション
私たちレッツゴー事業所の使命は、日本中の利用者を元気にすることです。
経営理念
創立63年を迎えた日盲社協は、各種のサービスを通じて人との関わりの大切さ、社会貢献の必要性を学んできました。今まで以上に情熱をもって取り組み、移動・情報提供サービスのプロとして共感してもらえるガイドヘルパーを派遣します。
利用者を元気にし、生活を豊かにするお手伝いをします。
①利用者の尊厳を大切にします
②利用者の自己決定を尊重します
③利用者の社会参加を促進します
利用者に関する方針
①利用者の視点でものをみる。自分中心の視点にならない。利用者に喜んでもらって、「ありがとう」、「感謝します」と言っていただけるように尽力します。
②繰り返し同じ利用者に利用していただけるよう努力します。
③利益や効率よりも、手間ひまかけて利用者に満足していただくサービスを目指します。
④利用者の立場に立って仕事を行います。
あなたの住んでいる街から東京へ
東京からあなたの住んでいる街へ
日盲社協レッツゴー事業所
TEL:03-6240-1714
http://www.lets-go.or.jp
点字の存在を確かなものにするために
日本点字技能師協会副理事長 上野多美子
あなたのおすすめスポットを点字で案内するとしたら?
日本点字技能師協会では、毎回テーマを選び研修会を開催しています。今年の2月は「あなたのおすすめスポットを点字で案内するとしたら?」というテーマでした。 これは、墨字のパンフレットを点字化・点図化することも含めて、施設全体・イベント全体を視覚障害者向けに紹介するという試みです。次のような一例をあげて参加者に発表を呼びかけました。
「あるデパートをおすすめスポット」とするならば、次の点字案内や点図を用意する。
①全館のおおまかな案内や各階の売場など。
②各階に出店しているブランドや店名を、フロアのブロックごとや通路に沿った紹介の工夫をするなど。
③レストラン・カフェのメニュー。
④ 開催中、または近日のセールやイベントなど。
⑤館内のおおまかな点図(出入口、エスカレーター・エレベーター・階段、トイレ、ATMコーナーなどを示したもの)
このテーマを研修会で取り上げることになったのは、昨年6月の『点字毎日』第4792号(活字版917号)「ひととき」欄に掲載された当協会森幸久(もりゆきひさ)理事長の投稿がきっかけでした。
この記事では、視覚障害者の社会参加の促進を目的として、各地の施設やイベントを存分に利用し楽しむためには、事前に施設案内の点字版や音声版を入手できること、現地では点字サインや音声案内の整備、ガイド要員の配置などが必要だと述べています。
本研修会では、羽田空港、マリンピア神戸(アウトレットを中心にした施設)、アメディアフェアを題材にした発表がありました。
情報提供の方法は種々ありますが、今回の研修では点字と点図を中心とした案内プランを作成しました。
事前に案内版全体のプランと点字版の一部を参加者に郵送し、参加者はホームページ上の情報と照らし合わせて検証し、研修会では発表者を含めて、案内版の工夫・改善点はないかなどを検討しました。(プラン全体に注目してほしいので、今回は点図は配布しませんでした)。
複雑な資料やパンフレットをもとにわかりやすい点字資料を作成すること、文字以外の見るだけで把握できる情報を含め、適切な点字や点図の資料製作のノウハウを身につけたいと企画した研修です。これまで取り組んできた各種の専門点訳の導入やスキルアップのための研修も継続するとともに、このような点字資料の可能性をひろげることにも着目したいと思っています。
大学で学ぶ点字使用者へ
文部科学省の「障害のある学生の修学支援に関する検討会」の第二次まとめ案(平成29年1月)によれば、教材の確保として、平成27年度に実施した授業支援のうち、点訳・墨訳は48校(4.1%)で、これは平成24年度の46校(3.8%)から2校0.3ポイント増加しています。この点字のニーズが増えている「大学」という場に注目しましょう。
点字使用者でも点字を読むことが少なくなったと聞くことがあり、それを理由に点字による情報提供に否定的な発言もあります。しかし、点字使用の減少の一部は墨字にも共通するもので、一般の本屋が減っていることからもわかります。その中で、大学ではわずかですが点訳へのニーズが増えているのです。
大学の生活を考えると、必要なのは教材だけではありません。教科書とともに重要なのがシラバスです。つまり、授業の時間割からその内容、そして必要な単位をとるための受講方法、教職や司書の資格を得るために必要な科目はどれかまで、シラバスは、卒業とさらにその後の就職まで見据えた計画を立てるための重要な資料です。
視覚障害学生の数は平成18年の510人から平成27年は755人と増えています。すべて点字使用者ではありませんが、教材からシラバスまで、大学が用意する点字資料は増えています。
このように具体的にニーズが増えている大学に、もっと協力すべきではないでしょうか。
点字技能師は何でも点訳できるというわけではありません。シラバス程度なら十分対応できるでしょうが、点字技能師のだれもが、すべての分野の専門点訳に対応できるわけではありません。
点字技能師を基礎的資格として位置づけ、点字技能師を対象とした専門点訳講座を実施し、各専門点訳の技能を持つ人材を養成していく必要があります。日盲社協が中心となって、そのような人材を認定するのも一つの方法です。
文部科学省の第二次まとめ案では、専門的人材を養成することと、「社会で活躍する障害学生支援センター(仮称)」をつくり、「大学等からの相談に対しての専門的な助言の実施」を提案しています。
点訳に従事するとともに専門的な助言をすることも大切で、点字を知らない人に、どのような支援ができるか、点字の教材がどのように作られるかなどの相談に応えることがまず必要です。
基礎的な資格を持つ点字技能師が、大学で学ぶ点字使用者を支援できるように、関係機関との協力のあり方、文部科学省への働きかけなども含めて検討したいと思います。
このような大学で学ぶ点字使用者への支援を充実させるためにも、日点協からの、点字技能師と点字指導員の資格の整理に関する提案は重要です。
ご検討よろしくお願いします。
日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)新役員紹介
平成29年4月1日付で日盲社協の新しい理事・監事・評議員が選任されました(以下、敬称略)
名誉会長:本間昭雄(聖明福祉協会理事長)
顧問:田中亮治(東京光の家理事長)
参与:高橋實(視覚障害者支援総合センター理事長)
評議員(定数:11名~13名、任期:平成29年4月1日~平成33年定時評議員会終結の時)
竹下義樹(日本盲人会連合会長/弁護士)
仲泊聡(国立研究開発法人理化学研究所研究員/眼科医)
金井博(友愛十字会常務理事・事務局長 友愛ホーム園長)
杉江勝憲(日本盲人職能開発センター理事・所長)
橋口勇男(日本ライトハウス専務理事)
又木勝人(都城市点字図書館館長)
姉崎久志(北海点字図書館情報支援部長)
山口規子(関西盲人ホーム理事・施設長)
堺真理(日本ライトハウス視覚障害リハビリテーションセンター副所長)
藤巻契司(東京光の家救護施設光の家神愛園副園長)
岡村原正(株式会社ジェイ・ティー・アール代表取締役)
理事(定数:8名~10名、任期:平成29年4月1日~平成29年定時評議員会終結の時)
(理事長)高橋秀治(ぶどうの木ロゴス点字図書館館長)
(常務理事)舛尾政美(山口県盲人福祉協会理事長)
(常務理事)長岡雄一(東京視覚障害者生活支援センター所長)
茂木幹央(日本失明者協会理事長)
肥後正幸(東京点字出版所理事長)
岡本博美(山口県盲人福祉協会点字図書館館長)
山下文明(名古屋ライトハウス法人事務局長)
荒川明宏(株式会社ラビット代表取締役社長)
吉川明(公益財団法人日本盲導犬協会理事)
監事(定数:2名)
秋山寛(公益財団法人社会福祉振興・試験センター参与)
島田功(島田税理士事務所所長・税理士)
日盲社協事務局だより
退会
<生活施設部会>29年3月退会 日本ヘレンケラー財団救護施設平和寮
<盲人用具部会>29年3月退会 エクセル・オブ・メカトロニクス株式会社 株式会社小林鉄工所
住所変更・名称変更(29年4月より)
<情報サービス部会>和歌山点字図書館 → 和歌山県点字図書館
新住所 〒640-8319和歌山市手平2-1-2 県民交流プラザ和歌山ビッグ愛5F
新TEL:073-488-5721
新FAX:073-488-5731
新潟県点字図書館 →(名称変更)→新潟県視覚障害者情報センター
<自立支援施設部会>東京都視覚障害者生活支援センター→(名称変更)→東京視覚障害者生活支援センター
施設長交代
川崎市視覚障害者情報文化センター新館長杉山雅章
福岡市立点字図書館新館長 城戸千恵子
神戸市立点字図書館 新館長土井敏
日本盲人福祉委員会(日盲委)の新役員
平成29年4月1日付で日盲社協も構成メンバーである「日盲委」の新しい理事が選任されました(以下、敬称略)。
理事長 竹下義樹(日本盲人会連合会長)
副理事長 高橋秀治(日盲社協理事長)
常務理事 指田忠司(日本盲人会連合国際委員長)
理事 小口芳久(慶応義塾大学名誉教授・眼科医)
理事 寺尾徹(全国社会福祉協議会常務理事)
理事 藤井亮輔(筑波技術大学教授)
理事 舛尾政美(日盲社協常務理事)
理事 矢野口仁(長野県松本盲学校長、全国盲学校長会会長)
監事 中山政義(元日本盲人福祉委員会常務理事)
監事 福山健太(福山会計事務所長)
事務局からのお願い
本誌では、日盲社協全会員施設の施設長名等の変更を逐次掲載しています。また、事務局では、充実したホームページにするため、こまめな更新に努めております。
日盲社協のホームページをご覧になって、間違いがないかどうか、ご確認・ご校閲をお願いします。そして、誤りや変更がありましたら当事務局までご一報くださいますよう、よろしくお願いいたします。
編集後記
本誌ではまことに勝手ながら、原則として本文中では「社会福祉法人」を一律に省略させていただいております。会員施設には社会福祉法人が極めて多く、つねに正式名称にこだわるなら、非常に煩雑な誌面になるためです。
この4月1日から社会福祉法人の制度改革が施行されました。旧法では評議員会は任意設置の諮問機関であったため理事と評議員の兼任が認められていました。このため、社会福祉法人の理事は多くの場合、評議員も兼任しておりました。
しかし、このたびの制度改革ではその兼任が認められなくなったのをはじめ、社会福祉法人も一般財団法人・公益財団法人と同等以上の公益性を担保できる経営組織とするという大方針の下、どの法人も組織的な大改革を迫られました。
このため社会福祉法人の役職員の誰もが忙殺されている最中に、心ならずも本誌への寄稿をお願いしなければならず、大変なご負担を執筆者各位におかけ致しました。
しかし、それにも関わらず、万難を排してご協力いただきましたことに対して本欄を借りて篤く御礼申しあげます。
とりわけ長岡常務理事には、東京視覚障害者生活支援センターが東京都の指定管理を離れ、日盲社協に民間移譲された初仕事として本誌の原稿をお送りいただきました。まことにありがとうございました。
ところで、新制度では社会福祉法人の中に、理事会の決議により、理事長以外の理事であって法人の業務を執行させるために選定した理事である「業務執行理事」を置かなければならないことになっています。しかし、19ページの日盲社協の役員には「業務執行理事」という役職がありません。
本誌編集作業中に疑問に思って日盲社協事務局に問い合わせたところ、「日盲社協ではその定款で、業務執行理事を常務理事と定義しているので問題ないということでした。つまり、日盲社協には常務理事という名称の「業務執行理事」がいるということです。
次号の『日盲社協通信』は平成29年11月に発行する予定です。(福山博)
お詫びして訂正します
本誌前号(Vol. 73)21ページで点字図書館「明正会館」と記載しましたが、正しくは「明生会館」です。お詫びして訂正いたします。
情報提供のお願い
本誌に対する情報提供・要望・苦情・意見・感想は、日盲社協広報委員長福山博宛、メール(fukuyama@thka.jp)等でお送りください。お待ちしております。
『日盲社協通信』WEB版リリース
『日盲社協通信』が、平成23年(2011年)11月号(通巻63号)から、日盲社協のホームページにアクセスして、全文を読むことができるようになりました。こちらもご高覧ください。http://www.ncawb.org/
第12回 視覚障害者向け総合イベント
ふれてみよう!日常サポートから最先端テクノロジーまでサイトワールド2017
サイトワールドは、最先端の技術・機器、日常用品、および、ユニバーサルデザイン(UD)製品等の展示会、講演会、学会発表、フォーラム、体験会等が催される、世界でも例を見ない視覚障害者のための総合イベントです。来場者一人ひとりが主役です。
日時:平成29年(2017年)11月1日(水・日本点字の日)、2日(木)、3日(金・文化の日)午前10時~午後5時(11月3日は午後4時まで)
会場:すみだ産業会館サンライズホール(JR・地下鉄半蔵門線 錦糸町駅前 丸井錦糸町店8・9階)東京都墨田区江東橋 3-9-10 墨田区丸井共同開発ビル
主催 社会福祉法人 日本盲人福祉委員会サイトワールド実行委員会
〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-29-7-401 (株)ラビット内
TEL:03-5292-5644 FAX:03-5292-5645 E-mail:sightworld-bj@gmail.com
日盲社協レッツゴー事業所TEL:03-6240-1714http://www.lets-go.or.jp
丸の内駅舎は、日本の鉄道網の起点となる東京駅の中心施設です。明治22 年(1889)に東海道への起点・新橋駅と東北方面への起点・上野駅を結ぶ高架線が計画され、大正3年(1914)12月にレンガ建造物としては国内最大規模を誇る東京駅が開業しました。当初は、皇居に面した丸ノ内側だけに駅舎が建てられ、東側の八重洲口が開設されたのは昭和4年(1929)のことです。
この丸の内駅舎は、明治・大正期を代表する建築家辰野金吾博士(1854~1919)の設計で、南北折曲り延長約335m、幅20m、尖塔部を含む高さは約45mにおよびます。中央棟の南北に両翼を長く延ばし、八角広室のドーム屋根が南北対称の位置に1 つずつ配されており、当初は3階建てで、総建築面積10,500 ㎡と東京ドームの倍以上の規模を有していました。しかし、昭和20年(1945)の空襲で大きな被害を受け、戦後の復旧は3階部分を撤去したり、南北のドーム屋根が廃されたりするなど、規模を縮小した応急的な工事でした。
昭和62年(1987)の国鉄分割民営化後の再開発構想に対して、赤レンガ駅舎の保存運動が起こり、平成15 年(2003) に国の重要文化財に指定されます。同19年(2007)に復原工事が始まり、戦災復旧時に縮小された3階部分や南北のドーム屋根など、外観に関わる部分を中心に建築当初の姿へ復原されました。その際使用された屋根材の天然スレートは宮城県石巻市で保管中に津波による塩害を被り6万5,000 枚中2万枚が使用できなくなりスペイン産で補いました。
構内にある東京ステーションホテルは1915年に開業。丸の内北改札口を出てすぐ右側には東京ステーションギャラリーもあります。食事なら八重洲北口「グラングルメ」1階にある「キッチンストリート」とその地下にある「黒塀横丁」がお勧めです。
アイサポートならレッツゴーのレッツ・エンジョイTOKYO
あなたの住んでいる街から東京へ 東京からあなたの住んでいる街へ日盲社協加盟の同行援護事業所の連携で、安心・スムーズ・楽しく移動できます。
本誌は、東京都民共済生活協同組合の助成により作成したものです。