日盲社協通信 平成25年(2013年)11月号(通巻67号)

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日盲社協通信 平成25年(2013年)11月号(通巻67号)
編集人:福山博   発行人:髙橋秀治
発行所:社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会(日盲社協)
National Council of the Agencies of the Welfare for the Blind (NCAWB)
http://www.ncawb.org/

(表紙キャプション)日盲社協の創設者岩橋武夫研究の第一人者、關宏之氏(日本ライトハウス常務理事)による記念講演、「現実を直視し未来を描く」(6ページ参照)

*各みだしの前の行に「++」の記号がありますので、検索機能などでみだしを探す時にご活用ください。

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 もくじ<数字は活字版のノンブル(ページ番号)>
 じっくり課題と取り組みを 理事長 髙橋秀治 1
 板山賢治先生を偲ぶ 「愛eyeフェスティバル」とともに 常務理事 岩上義則 2
 山口県盲人福祉協会の現状と問題点 山口県盲人福祉協会理事長 舛尾政美 3
 動的平衡感覚のある職員養成を 常務理事 髙橋秀夫 4
(特集)日盲社協の未来像を描く ―― 創立60周年記念 第61回全国盲人福祉施設大会 ―― 5
記念大会大会を終えて 大会実行委員長 長岡雄一 11
(誌上慶祝会)
 望月さん、厚生労働大臣表彰おめでとうございます 横浜市立盲学校教諭 岩屋芳夫 12
 當山啓さんのヘレンケラー・サリバン賞受賞を祝う 日本点字委員会委員 白井康晴13
 平成25年度点字指導員講習会 点字指導員研修委員会委員長 大澤剛 14
 第4回 情報機器等の支援者講習会報告 岐阜アソシア 視覚障害者生活情報センターぎふ 山田智直 15
 今年も3会場で試験を実施 ~点字技能検定試験に関わる報告~ 視覚障害者支援総合センター所長 込山光廣 16
 ぬくもりと人間味あふれて 関東地区点字図書館協議会の秋季研修 東京ヘレン・ケラー協会 点字図書館館長 石原尚樹 17
 点字からITまでサイトワールド2013 実行委員会事務局長 近藤義親 18
 <新会員施設紹介> 公益財団法人杉山検校遺徳顕彰会 杉山鍼按治療所 19
 <新会員施設紹介> 社会福祉法人雑草福祉会 雑草授産センター 20
 日盲社協事務局だより 21
 編集後記 22

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 じっくり課題と取り組みを
 理事長 髙橋 秀治
 さる9月の日盲社協創立60周年記念大会に、全国から200名を超える皆様がお集まりくださり、感激しました。問題はこれからです。
 目下の課題は、国連の障害者の権利条約の批准です。6月に障害者差別解消法が成立し、批准への準備が整いました。これからは当事者である私たちが、生活改善のための具体策をどう示すかにかかります。
 さて、最近の障害者団体の動きは、障害の種別を乗り越えて中央の組織が日本障害フォーラムという統一窓口を通して、政府と交渉を行っています。
 私たちの世界でも、例えば国政選挙公報発行について、また先端科学の展示と文化の集いで圧倒的な集客を誇る「サイトワールド」、東日本大震災などの支援を一本化して行う災害支援組織など、いずれも日本盲人福祉委員会(日盲委)の下にまとまって行う傾向にあります。このことは、横の繋がりにおいて、動員力において素晴らしい成果を生むのではと期待されています。
 小さな施設も大きな施設も一つの共通目標をもって共に働くことは、互いの持てる力を出し合う中で、考えや技術を知り合うことにつながり、いい勉強になります。日盲社協の仲間同士が切磋琢磨して事業の成長をめざしていければ最高です。
 点字出版部会:点字利用が減少している中で、利用者をどう増やして行くかが重要テーマです。点字選挙公報の拡大、自治体の広報の点字版発行への働きかけ、そして製版機・印刷機などを手がける製作所対策も頭痛の種のようです。
 情報サービス部会:選挙公報の録音版の定着のための働き、電子機器の扱いを仲間にどう定着させて行くか、全視情協とはひと味違った取り組みなど、課題は多岐にわたります。
 自立支援施設部会:就労支援を含むリハビリ施設、授産施設の方向、盲人ホーム、盲導犬問題などどれも独立した部会が持つテーマばかりです。調整は大変です。
 生活施設部会:盲老人問題と取り組みます。適切な価格で自治体の理解を得て老人ホームを経営するのは楽ではありません。法律的にきちっと補償してほしいところですが、安心できる老後のための努力は大変です。
 盲人用具部会:自立のための補装具は、白杖からパソコン等電子機器類まで広範囲にわたり、しかも競い合いながら新天地を開いています。その中で、非課税商品の製造原価にかかる消費税の還付問題を抱えています。競いつつ互いのレベルアップを図るのは出版部会と似ています。
 以上のような各部会の動きを見ながら、私たちは、昨年から大会決議について、まとめて厚生労働省と話し合いをしてきた従来のやり方を、各部会個別に行うように変えました。この方が役所と各部会との密接な関係が築けると思ったからです。もちろん必要な時は、役員が同席したり、会議をセットすることもあり得ます。次の10年に向けて本格的に動きましょう。

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 板山賢治先生を偲ぶ 「愛eyeフェスティバル」とともに
 常務理事・事務局長 岩上 義則
 記年大会が終わった直後の9月22日、当法人顧問の板山賢治先生が逝去されました。享年87でした。
 先生は1950年から32年間、厚生行政一筋に歩まれ、厚生省社会局更生課長を経て、1981年には、国際障害者年特別委員会事務局長としてわが国の福祉推進の先頭に立って指揮されました。
 1982年に厚生省を退官されてからは日本社会事業大学教授・専務理事を経て、1989年から全国社会福祉協議会と中央共同募金会の常務理事を務められました。
 1995年より日本障害者リハビリテーション協会副会長、浴風会理事長、その他多数の社会福祉団体の要職を歴任されました。
 そして1995~1999年、日盲社協第9代理事長として2期務められ、当法人の発展と視覚障害者福祉の向上に貢献されました。
 就任の1995年は、阪神淡路大地震や地下鉄サリン事件などが起きた年です。一方、盲界では日本盲人職能開発センター創立者、日盲社協第8代理事長の松井新二郎先生が亡くなられました。
 こうして突然、松井先生から日盲社協をバトンタッチされた板山先生は、「行動する日盲社協」をテーマに掲げて会員をリードされました。中でも思い出深いのは、芸術文化祭「愛eyeフェスティバル」を立ち上げられたことです。そして、何とその実行委員長に私が任命され、そんなこともあり、とても親密にしていただけたのは望外の幸せでした。
 第1回の愛eyeフェスティバルは、先生お住まいの府中(東京)で開催されました。音楽の部と体験展示コーナーの2部構成で、今も活躍が目覚ましい正秋バンドや聖明園曙荘の入所者による演奏、有名彫刻家の作品展示などがあったことを覚えています。
 愛eyeフェスティバルは、その後1997年に金沢市で、1998年には高知市で開かれましたが、先生が理事長を退任された1999年を限りに惜しくも終了しました。
 特に金沢市でのフェスティバルは、私の出身地でもあり力が入りました。先生を金沢の名所にご案内し、美酒に酔えたことなど、楽しい思い出は尽きません。
 個人的な魅力もさることながら、絶妙なスピーチ、深い知識、秀でた文才は多くの人を魅了しました。その裏付けとなっていたのは豊富な読書量と、こまめにメモをとる習慣にあったように思います。誰と話しているときも常にサラサラとメモをとるペンの音がしたものです。
 厚生行政に数々の実績を残され、福祉の発展をリードされた情熱の人、板山賢治先生のご冥福を心からお祈り致します。

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 山口県盲人福祉協会の現状と問題点
 社会福祉法人 山口県盲人福祉協会理事長 舛尾 政美
 社会福祉法人山口県盲人福祉協会は昭和24年6月15日に、山口県の視覚障害当事者の任意団体として結成された。
 昭和29年に山口県下関市関西町に木造72坪の会館を建設して、財団法人の認可を受け、昭和33年4月には社会福祉法人となり、中途失明者を盲学校に通園させる寮や授産所などの経営を開始。昭和45年に点字印刷を開始し、昭和49年には厚労省の認可を受けて点字図書館を開所した。
 昭和62年に養護盲老人ホームを開所したが、その時山口県から施設と団体を分離するように強い指導を受けた。そこで、施設は社会福祉法人山口県盲人福祉協会が、団体業務は社団法人山口県視覚障害者団体連合会が行うことになった。しかしこの時、施設と団体の長の兼任を県が認めたこともあって、以来、今日まで施設と団体の長は私が兼任している。
 その後、山口県盲人福祉協会には、ヘルパーセンターの事務所、NPO法人下関市視覚障害者福祉会の事務所、一般社団法人山口県視覚障害者団体連合会の事務所、協同組合保険鍼灸マッサージ師会の事務所などが置かれている。また、下関市妙寺町の春光苑に併設して障害者対象のデイセンターと介護保険によるデイセンターを設置経営。さらに、下関向洋町にグループホーム光明園と就労継続支援事業所鍼灸マッサージ治療所光明園などを設置経営。
 平成17年には中国・山東省青島市の身体障害者団体連合会と山口県盲人福祉協会が友好協定を結んだ。それ以来、相互訪問や情報交換・施設見学などを続けており、春光苑に青島市の視覚障害者を呼んでサウンドテーブルテニス(盲人卓球)を紹介し、卓球台や音のするボールなどの一式を青島市に贈り、現在、70人ほど働いている漢方中心の病院で盛んにこれが行われている。
 今日では、山口県盲人福祉協会が中心となって4つの法人と17の事業所が連携し一体的に日々業務を行っている。
 今年は8月に日盲連の女性協議会の全国研修大会開催を下関で引き受けており、11月に日盲社協の生活施設部会と自立支援施設部会の施設長並びに職員研修会開催を引き受けて春光苑と光明園の問題改善に役立てたいと願っている。
 今問題となっていることは2つあり、それは養護盲老人ホームの入所者確保と就労継続支援事業の利用者確保である。
 盲老人ホームは市や町が措置費をますます抑える傾向を強めており、その結果入所者の高齢化・重度化が進んでいる。入所者を確保しようとすれば寝たきりの状態に近い者を増やすことになり人件費が大きくなるので、最終的には定員を抑えなければならないかもしれない。
 就労継続支援事業は、一昨年11月に開所して今年6月にやっと本部からの繰り入れがなくなると思われたところ、施術率の高い利用者が、訪問マッサージの会社に引っ張られて、急に3人が退所して大きな痛手を受けている。しかし、これはいずれ即戦力となる利用者を見つけて改善を図りたいと考えている。

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 動的平衡感覚のある職員養成を
 常務理事 髙橋 秀夫
 日本の季節は、春から夏へ、夏から秋へ、そして冬へと変化しますが、ある日を境に変わるなんていうことはありません。社会福祉施設もこれまである日を境にして変わることはありませんでした。変わる必要はなかったからです。なぜなら最低限の運営資金は補助金で賄われて、ある程度は安定しており変わる必要はなかったのです。
 しかし、状況は変化しました。2003年に地方自治法の一部改正が行われ、これまでの管理委託制度に代わり「指定管理者制度」が導入されました。一部の施設運営者は「これまでのサービスの質を維持していれば」的な運営では、存立の社会的根拠を失っていくことになると危機感を持つようになりました。
 そこで、差別化を図るために、利用者のニーズの変化に対応しながら組織として最高のサービスを提供するには、「組織として大切にしたい理念」「組織に属する一人ひとりはどのようにあるべきなのか」という認識を改めて問い直し始めました。一つ目は、福祉サービス提供とは、仕事の大半は人と人との関わりだという再認識です。二つ目は、運営費は補助金という税金で、補助金を使うことは地域に対しての社会貢献も求められているという再認識でした。
 私たちの仕事は、利用者が明日に向かって生きていくための力量を高めるお手伝いをすることです。「図書をつくる」、「図書を貸し出す」、「リハビリを行う」、「用具を提供する」ことです。これだけでも福祉サービスと言えるでしょうが、利用者が利用して良かったと思う価値は生じません。福祉サービス提供者は、長い時間と費用をかけて技術習得させ、利用者へのホスピタリティ(心遣い、思いやり、心配り)を身につけさせ、複眼的思考で問題解決する職員を配置しなければ、高い評価はいただけないのです。
 とは言え、「一人ひとりの考え方や価値観が多様で、施設の伝統や価値観を一方的に押し付けることが良いとは思えなくなった」とか「先輩から後輩へ経験を伝える文化が途絶えがち」などから、ホスピタリティなど身につくはずがないとの指摘があります。利用者は自らが発する言語行動や身体行動から、職員に自らの気持ちを知り、理解してほしいと願っています。それをわがままだと一刀両断にする傾向が暗黙知として職員に伝わってはいないでしょうか。
 すべての利用者が人間性を高め、自らが納得できる価値観を持ち、生きる喜びを感じて日々暮らせる共生の場づくりのためには、私は、各施設が職員に動的平衡感覚(知識・技術・複眼的思考)を発揮できる「運営理念」を機会あるごとに伝えるべきだと考えます。変化するニーズに対応する運営基盤の強化を断行し、運営の自立性・効率性を高めつつ福祉サービスの質の向上を図っていこうではありませか。(視覚障害者生活情報センターぎふ館長)

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 (特集)日盲社協の未来像を描く―― 創立60周年記念 第61回全国盲人福祉施設大会 ――
 (写真)本間昭雄元理事長への感謝状贈呈
 日盲社協は、創立60周年を記念した「第61回全国盲人福祉施設大会」を、9月9・10の両日、東京都新宿区のホテルグランドヒル市ヶ谷において、関係者約300人を集めて開催しました。
 安倍晋三首相のメッセージで始まった初日は、記念講演と式典が催されました。
 髙橋秀治理事長は式典の挨拶で、「10年の区切りの意味を噛みしめ、次の10年につなげるためには、日盲社協を構成する各会員施設が横のつながりを持ち、共通の目的を持って共同して活動できれば、大きな成果が期待できます。しかし、組織としてまだそこまでには至っておりません」と前置きし、「一つの施設、一つの部会の成果を全体で分かち合えるような組織作りを目指したい」と述べるとともに、「障害者権利条約」の批准や差別解消法の指針づくりなど、制度づくりにも関与していく必要性にも言及しました。
 記念講演は、岩橋武夫研究の第一人者である日本ライトハウス常務理事の關宏之氏が、「現実を直視し未来を描く」と題して行いました。
 内容は、日盲社協の創設者でもある日本ライトハウス設立者にして日本盲人会連合初代会長の岩橋武夫が伝えたかったこと、岩橋の時代の視覚障害支援の実態と現状との比較、支援環境を次のステップへと進めるための構想などについて、若干の批判的観点も交えたものでした。
 講演に続き、創立60周年記念式典が催され、表彰式では、ボランティア、永年勤続職員、援護功労者に対して髙橋理事長より感謝状が贈呈されました。
 祝辞と祝電が読み上げられた後は、受賞ボランティア懇親会と創立60周年記念祝賀会が開かれ、祝賀会には、歌手の畑中葉子さんがサプライズゲストとして出演し、今も変わらぬ美声で大いに会場を盛り上げてくださり、終始和やかなムードで初日は幕を閉じました。
 2日目の全体会は「日盲社協の未来像を描く~5部会の充実と発展への道」をテーマに、2時間にわたってシンポジウムが行われました。
 まず、司会進行を務めた日盲社協常務理事・事務局長の岩上義則氏から、今大会のテーマに関する説明が次のように行われました。
 日盲社協発足当初の主旨・目的は、「会員相互の連絡・調整」「親睦・情報交換をはかることで施設の発展に資する」ことにありましたが、その後、加盟施設の増加によって各施設の抱える課題が浮かび上がり、親睦だけでは物足りないという声が聞かれるようになりました。
 集合体として団結することによる施設の向上や、共通課題の解決に当たるべきだという意識の高まりを受け、点字図書給付事業実現・選挙公報全文点訳承認など、加盟施設の協力・団結なくしては実績の上がらない事業に注力するように軌道修正されてきています。
 しかし、やはり部会ごとの活発さにはばらつきが見られ、歩調を合わせるのに苦労しています。
 次に、大会実行委員長の長岡雄一氏から、今大会に先立って行われたアンケート調査に関する報告が次のように行われました。
 日盲社協の未来像を描くに当たって、会員施設職員の日盲社協に対する現状認識を調査することが重要であると考え、勤務年数別にアンケート調査を実施しました。
 204の加盟施設のうち、回答があったのは169施設(82.8%)で、アンケート総数は567通でした。
 勤務年数5年以下の若年層では5部会そのものに対する認知度が低く、自分の所属施設がどの部会に属しているか知っていると答えた人は全体の47.8%でした。
 情報発信に関しては、『日盲社協通信』と比べてウェブページの認知度が低く、どの層でも約半数が「読んだことがない」という回答でした。
 情報発信そのものに満足しているかに関する回答では、「わからない」がすべての層で50%を上回りました。「はい」、「いいえ」に関しても回答数が拮抗しており、情報発信が強く望まれながらも日盲社協の事業が周知されていないことを考えさせられる結果となり、あらためて「情報発信の強化」という共通課題が明らかになりました。
 続いて、各部会長から事業部会で出された課題に関する報告が行われました。
 点字出版部会の田中正和部会長は、点字図書の売り上げが最盛期の5分の1から10分の1にまで落ち込んでいることを受け、点字出版事業の運営は非常に厳しくなっており、地方自治体の点字広報誌や企業向け冊子、「選挙のお知らせ(点字版)」などの作成で補いつつ事業継続をはかっている現状を報告しました。
 また、点字サインに関しては、JIS規格の周知や監修の勧奨などを行い、誤記の頻出する表示に困惑していることをしっかり発信してゆくべきだと強調しました。
 情報サービス部会の岡本博美部会長は、正確でスピーディな情報発信を行うために、加盟施設間はもちろん全視情協や当事者団体である日盲連との連携が不可欠であるとまず問題提起しました。
 その上で、「今年度は代読代筆などの読み書き支援、来年度は電子書籍入門などの発行を企画している。各助成事業の厳しい審査で音訳点訳の講習会までも圧迫されており、常に新しいステージを開拓することを視野に活動を進めたい」と語りました。
 自立支援施設部会の山下文明部会長は、盲導犬事業やガイドヘルパー・同行援護など、地域におけるトータルな支援を行うためにも、学校・各施設との有機的なネットワークの構築が必要と強調。
 「新制度移行への遅れや補助金カットなどで運営に厳しさを増す施設が増える中、情報の連絡だけにとどまらず共有を進めてゆかねばなりません」と述べました。
 生活施設部会の茂木幹央部会長は、サービス付き高齢者住宅などの新勢力に抗する生存戦略として、「科学的介護の実践」をあげ、5つのゼロ(おむつゼロ・骨折ゼロ・拘束ゼロ・褥瘡ゼロ・胃瘻ゼロ)と4つのケア(認知症ケア・看取りケア・リハビリ・口腔ケア)を掲げ、サービス面で差別化を目指しつつ、ケアホームやグループホームを仲間内に取り込んで部会を発展させてゆく考えを示しました。
 盲人用具部会の荒川明宏部会長は、東日本大震災被災者支援で明らかになったように、「いまだに音声時計の存在さえ知らない視覚障害者がいる」という現状を受け、サイトワールドに注力して用具の認知・普及を促進するとともに、視覚障害者情報総合ネットワーク「サピエ」に活動状況を定期的にアップして、様々な層にアナウンスしてゆくべきだと訴えました。
 質疑応答の時間では、点字印刷の展望に対し会場からは、「どうしても点字でなければという点を追求し、日盲社協をあげてアピールしないと、かさばり値段も高い点字図書は行き詰まる」といった意見が出され、点字印刷の需要に対する危機感が浮き彫りになりました。
 岩上常務理事は、「点字の問題は出版所や部会が個々に需要を掘り起こすのではなく、全施設・全部会で一丸となって対処しなければならない。一般的な活字離れと異なり、点字離れとは“文字を失う”ということである」とし、「問題は非常に多岐にわたり、まだ混乱状態にある。事務局の強化も含めて、皆でスクラムを組んで未来を構築してゆかねばならない」と述べ、団結の必要性をアピールしました。
 日盲社協の未来像を今後くっきり描くためには、次の節目である10年、20年先を見据え、個々の会員施設、5つの事業部会が組織全体とそれぞれの役割や利用者のニーズを見つめ直す必要がありそうです。
 その契機となったという意味において、本記念大会は、とても意義深いものであったと考えられます。

    アピール
 日本盲人社会福祉施設協議会は1953年(昭和28年)に結成され、本年60周年を迎えました。日本ライトハウスの創設者・岩橋武夫先生の提唱により、『盲人文化の向上と盲人福祉の増進』を目的に結成され、同年9月に第1回総会が開催されて以来、60年を経た今、200を超える全国の視覚障害者社会福祉施設・団体が結集する組織へと発展してまいりました。改めて、先人の熱い意志とご尽力に、深い敬意と感謝を表します。
 平成12年の社会福祉法(旧社会福祉事業法)の制定に始まるいわゆる「社会福祉基礎構造改革」から10年以上になります。この間、障害者福祉は長らく続いた「措置費制度」から平成15年の「支援費制度」、平成18年の「障害者自立支援法」、そして本年度からの「障害者総合支援法」と度重なる制度変更、事業再編、厳しい報酬改定と補助金の削減が続きました。会員施設・利用者ともその対応に多くの労力を費やしてきました。
 こうした一連の改革は同時に、質の良い福祉サービスを担保するための法人施設の基盤強化を迫るものでした。福祉事業に株式会社等の異業種からの参入も活発です。今まで以上に法人組織の統治力と体力の強化、高い専門性に基づく良質な福祉サービスの提供、透明性のある自律的な安定運営、公益的な法人として地域社会に貢献する力、一般社会に説明する力が求められています。
一方、本年6月、国会での「障害者差別解消法」成立は、国連で採択された障害者権利条約の日本での批准へ大きく前進したとみられています。内容的には民間事業者の合理的配慮の詰めはこれから検討される等課題がありますが、この法律があることによって、具体的な議論展開の土台ができたという点で、障害者の人権確立へ向けた深い重みがあります。また、障害者総合支援法に積み残された課題である、障害支援区分や就労支援のあり方については、私たちもしっかり意見を展開しなければなりません。
 本協議会における点字出版、情報サービス、自立支援、生活施設、盲人用具の各事業部会では、研修会等を通じ各事業における課題整理・情報共有に努め、事業の活性化とともに、災害時における視覚障害者への情報提供体制の整備、3媒体(点字版・音声版・拡大文字版)で発行している「選挙のお知らせ」の選挙公報への格上げ、視覚障害者情報提供施設への情報支援員の配置、養護盲老人ホームの入所要件の改善、同行援護事業の充実、障害支援区分の適正判定化、日常生活用具における地域格差の撤廃などを求めています。
 障害者施策の制度改革が着々と進む中、会員施設のネットワークをより強固なものにし、一致団結し、事業の活性化と個別課題の解決に取り組み、自らの施設の有用性と価値を高めるとともに、長期的な展望に立ち諸制度の改革の方向性を見極め、『盲人文化の向上と盲人福祉の増進』のため、次の10年、20年先の未来に向けて邁進していかねばなりません。
 以上、宣言します。
 平成25年9月10日 創立60周年記念 第61回全国盲人福祉施設大会 社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会
(写真)アピールを読み上げる盲人自立センター陽光園高橋博行施設長

    大会決議
 1.選挙公報は、国民の基本的人権である参政権行使のための重要な情報源であり、「公職選挙法」では国政等の選挙で発行が義務づけられています。視覚障害者等のために発行される点字版・音声版・拡大文字版の「選挙のお知らせ」も、選挙公報として発行が義務づけられることを強く要望します。
また、「選挙のお知らせ」が有権者に届けられていなかったり、投票所においては、秘密保持の問題事例や盲ろう者等視聴覚障害者が適切な支援がないために選挙権が行使できなかったりしています。都道府県の選挙管理委員会に対し、こうした事例が改善されるよう指導強化を切に要望します。
 1.点字出版所は視覚障害関係事業の中で最も古い歴史があり、視覚障害者の社会進出と社会参加を支えて来ました。主な事業である点字教科書・点字図書・点字版選挙公報・各種広報誌の安定供給には、点字製版機や印刷機を常に万全の状態に維持する必要があります。そのため、点字製版・印刷機の新規購入や保守管理等の費用について補助されることを強く要望します。
 1.読み書きが困難な視覚障害者等の「読み書きする権利」を保障し、健常者と等しく社会生活を営めるよう、迅速かつ適切な情報提供技術を有する読み書き(代読・代筆)情報支援員を視覚障害者情報提供施設に配置することを要望します。
 1.災害時における視覚障害被災者を支援するため、施設機能強化推進費の総合防災対策強化事業内容を見直し、視覚障害者情報提供施設が視覚障害者避難拠点として機能できるよう、同推進費の大幅な増額など必要な予算措置を講ずるよう要望します。
 1.障害支援区分について、情報障害である視覚障害者への判定が、活動への参加レベルを基にして適正に判定されることを要望します。
 1.同行援護事業について、通所・通勤・通学においても適正なアセスメントとサービス利用計画の下、利用できるよう要件の改善を要望します。
 1.養護盲老人ホームの入所要件の改善を要望します。
 1.非課税物品の原材料費にかかる消費税については、還付されることを希望します。
 1.日常生活用具に関する給付について、全国共通で給付されることを要望します。
 平成25年9月10日 創立60周年記念 第61回全国盲人福祉施設大会 社会福祉法人日本盲人社会福祉施設協議会
 (写真)大会決議を読み上げる又木勝人評議員(都城市点字図書館館長)

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 記念大会を終えて
 大会実行委員長 長岡 雄一
 今、外は雪です。
 青森は初雪即積雪と言う、雪国にとっても珍しい11月を迎えています。
 所用で青森に来て、見事に大雪に遭遇した自分は果たして雨(雪?)男なのか、晴れ男なのか?
 そう言えば、大会の前日は大雨で、荷物の搬入時にはひどく濡れたことを思い出しました。しかし、大会当日は雨も上がり、遠くから市ヶ谷にいらしていただいた方々の足元の心配はせずに済みました。
 大会からすでに2か月。記憶が少しずつ薄れていくことを痛感しています。ただ、全体が薄れたわけではなく、ある時間帯に至っては、大会終了直後より鮮明に思い出されるという現象も起きています。また、思い出したくないところは薄く、思い出したいところは鮮明に、という訳でもなさそうで、無意識のうちに、今回の大会の出来不出来を判断してしまっているのかとさえ思えます。
 まだ残暑厳しき9月。果たしてどれだけの会員の方々が参加していただけるか。事前にお知らせしたプログラムは、会員の方々に受け入れていただけるのか。不安は募る一方でしたが、皆さんのご協力のおかげで、会場の椅子は隅から隅まで、しっかりと埋まりました。
 従来の大会プログラムと、多少順番が異なったせいか、大会開始から、多くの被表彰ボランティアの方々も参加され、記念講演にも熱心に耳を傾けて下さいました。記念講演は、今の日盲社協、そしてこれからの日盲社協をクローズアップしていくものでしたから、ボランティアの方々にとっても、立ち位置をご理解いただく、絶好の機会だったのではと思います。
 また、表彰式もいつもより多くの会員の方々を前にして行われ、ただ流れの中で行われているのではなく、本当に謝意を示すのにふさわしい場になったのではと感じました。
 全体会。今回の大会で一番腐心したとも言えるプログラムです。予想していたこととは言え、やはり時間がもっと欲しかった。もっと将来を語れる材料を皆さんに提示すべきだった。開始前の危惧は、ことごとく的中してしまいました。その点では、反省しきりと言えます。
 ただ、日盲社協を考える材料を、皆さんの前に隠し立てなく披瀝できたのは、進歩なのではないでしょうか。今まで、会員の間で交わされてきた「巷間云々」ではなく、問題に正面から取り組むきっかけにはなりえたのではと自負しています。
 今回は、多くの方々に支えられた、日盲社協の還暦からのスタートの大会でした。支えて下さった方々には改めて謝意を表したいと思います。そして、後に「あの大会が」と言われる大会にするために、多くの課題に取り組む日盲社協になることを祈ります。(東京都視覚障害者生活支援センター所長)

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 誌上慶祝会
 望月さん、厚生労働大臣表彰おめでとうございます
 横浜市立盲学校主幹教諭 岩屋 芳夫
 このほど、(株)アメディアの代表取締役社長である望月優さんが、身体障害者等社会参加促進功労者として、第63回障害者自立更生等厚生労働大臣表彰の被表彰者となることが決定しました。
 身体障害者等社会参加促進功労者は、身体障害者の社会参加の促進のため、率先して障害者対策(事業)を実施し、その内容が顕著であると認められる者(団体)に対し、厚生労働大臣が表彰を行うものです。
 表彰式は、12月12日に厚生労働省講堂にて開催される予定です。
 望月さんが今回、表彰を受けることを我が事のように嬉しく思っています。同級生では、初めての大臣表彰ではないでしょうか。同級生を代表して心よりお祝い申しあげます。
 私が望月さんと出会ったのは、もう40年近くも前のことになります。私たちは、当時の東京教育大学附属盲学校(現・筑波大学附属視覚特別支援学校)高等部普通科で同級生として出会い、3年間、勉学をともにしました。その頃の望月さんは、コツコツと努力をする真面目な人、という印象があります。会社の経営者として活躍するようになるなどと、誰が予想したでしょう。
 望月さんは高等部2年生からドイツ語を選択し、大学ではドイツ語を専攻。普通高校で非常勤講師も経験しました。
 その後、埼玉県所沢市にある国立職業リハビリテーションセンター電子計算機科で訓練を受けた後、1989年(平成元年)2月に株式会社アメディアを設立されました。
 それ以来20年以上にわたり会社を経営し、人を雇用してきた中には、他人に言えないご苦労もあったことと思います。
 これまでの着実な歩みが高く評価され、今回の表彰につながったものと思います。
 時々お会いして話をすると、「経営者としては、こう考えるんですよ・・・」と熱く語る望月さん。教育現場に身を置く私には大変刺激になります。
 最近では、中小企業同友会でも活躍なさっているとのこと。さらに、アメディアは近々海外に進出するとも聞いています。
 今回の表彰を期に、さらなる望月さんの活躍、そして会社の発展を心より期待しています。
(写真)講演で携帯版読み上げ機を紹介する望月さん

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 當山啓さんのヘレンケラー・サリバン賞受賞を祝う
 日本点字委員会 委員 白井康晴
 このたび、日本点字委員会事務局長で、日本点字図書館(日点)のベテラン点字製版士である當山啓さんが、第21回ヘレンケラー・サリバン賞を受賞されました。
 職場は違うものの、當山さんとは同郷・愛知県人ということもあってかわいがっていただいているだけに、今回の受賞、とてもうれしく思います。
 當山さんは、常に点字を生活の中心に置いて来ました。高校時代に地元の点訳サークルへの参加で点字に出会い、大学在学中に日点の点訳通信講座を受講し、点訳奉仕者として図書を納めるまでになりました。
 卒業後は日点に就職。プロとして、押しも押されもしない高い技術を持つ点字製版士としての評価を得ています。点字自動製版機「ブレイルシャトル」は、彼の持つノウハウが製品化への力となりました。
 著書『点字・点訳基本入門』は1998年の発行以来多くの人々に点字を広め、ロングセラーとなり、2008年には新装版も発行されています。
 本業での活躍に加え、1976年からは事務局員として日本点字委員会とも関わるようになり、その地道な活動は30年近くに及んでいます。
 視覚障害者支援総合センターが発行し、「日本点字表記法」に準拠した、点字の語例集として定評のある『点字表記辞典』の編集委員も1981年から務めており、月刊誌『視覚障害 ―― その研究と情報』は、編集・点字製版ともにサポートを続けて来ました。
 点字と関わるにあたり、當山さんは、そのユーザーである視覚障害者と直接付き合って行くこと、共に歩むことをいつも忘れない人と言えるでしょう。
 そもそも点字を覚えようと思ったのは、好きになった人が視覚障害者だったからということからも、そのごく自然な向き合い方がうかがわれます。
 多趣味な當山さんは、競馬や音楽の話、お酒の席にと気軽に視覚障害者にも声をかけ、談笑を楽しんでおられます。
 アン・サリバン先生は、家庭教師として教育の面からヘレン・ケラーを支えました。當山さんは、視覚障害者を点字や人的サポートの面で支えている、文化面のサリバン先生だと常々思っています。
 ご受賞おめでとうございます。(東京点字出版所 職員)

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 平成25年度点字指導員講習会
 点字指導員研修委員会委員長大澤剛
 (本事業は、競輪の補助を受けて実施しました)
 日盲社協情報サービス部会は、8月28日から30日まで、大阪市の山西記念福祉会館を会場に、今年度の点字指導員講習会を行いました。今年は、「点字指導員有資格者」対象のフォローアップ講習会で、全国から100名余の受講者が参加して盛況でした。
 研修内容と講師は、以下の通りです。
 初日は、開講式に続いて、講義①「中途視覚障害者と点字」と題して、自身も視覚障害者で京都ライトハウス障害者支援施設鳥居寮で実際に指導をされている久保弘司氏が、京都ライトハウスの取り組みを中心に講義されました。次いで講義②では、日本点字委員会の金子昭氏から、日本点字委員会の最新の動きを中心に、同委員会の歴史と現在の活動状況について学びました。
 2日目は、講義③「音訳の処理から学ぶ図表のてびき」と題して、枚方市立中央図書館の服部敦司氏が、次いで講義④「触図製作のポイントとは? ―― エーデルを使用した留意点」と題して、京都ライトハウス情報ステーションの大藪眞知子氏が、続いて講義⑤「点訳のてびき」と題して、全視情協点訳委員会が講義しました。
 今年の講習会では、現在大きな問題となっている、視覚的に表現されている図表や写真等をどのように点訳するかをメインテーマにして、音訳の処理や触図製作のポイントを学び、受講者からも多くの質問が出るなど、関心の高さがうかがわれました。
 また午後からは、講義⑥として全視情協点訳委員会が、このほど出版された『点訳のてびき第3版指導者ハンドブック』の使用ポイントを中心に、熱のこもった講義が行われました。
 最終日は、講義⑦「英語点訳の留意点 ―― 内容本意のアレンジ術と昨今の規則改正の動き」と題して、日本ライトハウス点字情報技術センターの福井哲也氏(日本点字委員会委員)が、次いで講義⑧「情報・理数点訳ネットワークを中心とした理数点訳の取り組み」と題して、筑波技術大学障害者高等教育研究支援センターの長岡英司氏が講義を行い、専門的な点訳の代表とされる英語点訳と理数点訳について学びました。
 今年は、受講者には負担だったとは思いますが、それだけに内容盛りだくさんで、有資格者のスキルアップとしては、とても有意義な研修となりました。(三重県視覚障害者支援センター職員)

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 第4回 情報機器等の支援者講習会報告
 社会福祉法人岐阜アソシア視覚障害者生活情報センターぎふ 山田 智直
 日盲社協情報サービス部会は、8月21~23日の三日間、岐阜市橋本町の「じゅうろくプラザ」を会場に、第4回情報機器等の支援者講習会を、35団体43名の参加で開催した。
 以下、講義内容と講師。
講義1「パソコンの選び方・使い方」日本ライトハウス情報文化センター松本一寛氏
講義2「Windows8とスクリーンリーダー ―― その1 ナレーター」(有)アットイーズ西村浩生氏
講義3「Windows8とスクリーンリーダー ―― その2 PC-Talkerを使って」日本ライトハウス情報文化センター松本一寛氏
講義4「パソコンの教え方 ―― 初心者にわかりやすい指導法と実技 その1」日本ライトハウス情報文化センター岡田弥氏
講義5「パソコンの教え方 ―― 初心者にわかりやすい指導法と実技 その2」同上
講義6「各施設の事例紹介」
講義7「視覚障害者とiPad」日本ライトハウス情報文化センター岡田弥氏
講義8「iPadと電子書籍」(有)読書工房成松一郎氏
 今回の講義は、Windows8、タブレット、電子書籍が主となり、音声だけでなく、画面にタッチして操作するという実技が加わり、最初は参加者がいくらか混乱したようだったが、少しずつ慣れてきた。
 地方の施設では、タブレット型の機器を取り入れた講習を行っているところはほとんどなく、今後も継続して行う必要があるように思われた。また、指導の面では、いくつかの課題をもってロールプレイを行った。参加者が、利用者や付添者の立場になり、それぞれの気持ちを疑似体験することができ、今後の接し方や対応に生きてくるのではないかと思われた。
 今後の課題としては、40名を超える講習会となり、IT指導というものが各施設に定着してきたように思われる。しかし、現状のスタッフの人数で講習会を行うと、実技指導では十分なサポートができないことがわかった。講習会当日だけでも5名の受講生に対して1人ぐらいのサポートが必要だと思われた。
 また、iPadのレンタルについては、今回は日本点字図書館と日本ライトハウスで保有しているものを借りて実施したが、今後最新機器を格安で確保することとなると困難と思われるので、その点の費用の確保も課題である。

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 今年も3会場で試験を実施~ 点字技能検定試験に関わる報告 ~
 視覚障害者支援総合センター所長 込山 光廣
 筆者は平成24年から試験実務の責任者をしており、何としても受験者増を図りたいと対策を講じてきた。点字技能師試験は、
 (1)点字に関する卓越した知識、技術を有する人に対して、資格を付与すること、
 (2)そのことにより、点字関係職種の専門性と社会的認知度を高めること、
 (3)点字の普及と点字の質の向上を図ること、
 (4)視覚障害者に的確な情報を提供すること。これらを目的としている。
 第1回試験には577名が受験したが、合格者は21名だけで、超難関試験と思われることとなった。そのせいか、第2回試験は144名、第3回は109名と受験者は減り続け、第4回試験ではついに3桁を切り、86名となった。
 第5回試験からは、厚生労働大臣認定の日盲社協・日盲連社内検定試験(準国家資格)となったが、受験者の減少にはなかなか歯止めがかからなかった。
 第9回試験からは、学科か点字技能どちらかに合格すれば3年間はその科目を免除し、受験料も半額となる「一部合格者制度」を取り入れた。
 しかし、受験者数は思うほど伸びなかった。そこで受験者増を図るために、日本点字技能師協会から要望があった、地方での試験実施に踏み切ることになった。また、受験を促すチラシを昨年は3,000部、今年は5,000部作成し、盲学校、日盲社協傘下各施設、点字指導員研修会等へ配布した。
 第1回~第12回試験までは東京と関西(大阪9回、京都3回)の2会場で実施してきたが、第13回試験では従来の2会場に加えて地元の点字図書館の協力を得ながら福岡市で開催し、20名が受験した。
 そして今年第14回試験では、3会場目として北海道札幌市で、札幌市視聴覚障がい者情報センター点字図書館の協力により試験を行うことができた。
 昨年の福岡でも今年の札幌でも、点字図書館の館長様はじめ皆様に大変にお世話になった。ここに記して感謝申し上げる。
 今年、札幌では、あいにくの風雨の中、10名が受験した。東京は31名、大阪28名の計69名の受験があった。
 本年12月20日前後には合格者が決定している予定である。
 今後は福岡と札幌を隔年で実施する予定である。いずれは、毎年4会場での実施を目指したい。技能師試験関係者は、この資格が魅力あるものとなるよう、また、視覚障害者の就労を支える必須の資格ともなるよう努力していきたい。

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 ぬくもりと人間味あふれて 関東地区点字図書館協議会の秋季研修
 東京ヘレン・ケラー協会点字図書館館長 石原尚樹
 日盲社協情報サービス部会には現在86の点字図書館が所属している。同部会の下に六つの広域ブロックがあり、各ブロックはそれぞれ独自の運営をしつつ、情報サービス部会を支えている。関東ブロックである関東地区点字図書館協議会(関点協)は17点字図書館が所属し、さらに神奈川県ブロック、北関東ブロック、東京ブロック、東京近郊ブロックの四つの地域ブロックに細分化され、きめ細かい情報交換や協力関係を築いている。
 関点協は春と秋に研修会を開く。春は総会の後に2講座、秋は各都県持ち回りによる1泊2日の宿泊研修で4講座を実施する。通常、研修というと先端技術の紹介や解説、テクニカルな指導・訓練などが主役になりがちで、それはそれで現場に役立つ研修として評価されるが、関点協の研修はどちらかというと技術面より手作り感の強いコマが組まれることが多く、主催者も地元ならではのアイデアを絞って講座を組む。
 今年の秋季研修は11月7、8日にとちぎ視聴覚障害者情報センターの主催で、宇都宮市で開かれた。日頃から交流の深い図書館同士の集まりなのでアットホームな雰囲気で、組まれた以下の4講座もぬくもりと人間味あふれる内容となった。
 講演1 「音声メッセージによる視覚障害者支援の課題」。宇都宮大学名誉教授、鎌田一雄氏。
 講演2 「紙芝居との出会い」。とちぎ視聴覚障害者情報センター元職員、平山益太・マスミご夫妻。
 講演3 「視覚障害者理解のために ――私の試み」。とちぎ視聴覚障害者情報センター主事、佐藤佳美さん。
 講演4 「ここまで来た、合成音声~最新の合成音声ソフトとアクセシビリティ技術の紹介~」。株式会社スカイフィッシュ代表取締役大塚雅永氏。
 タイトルを見れば、肩のこるようなものが多いと感じられるかもしれないが、いずれも内容の豊富さと話術の巧みさで、時間いっぱい楽しませてくれた。紙数があれば各講座の概要をお伝えしたいところだが、例えば第1と第4の講座を比較すると、いずれも音声がテーマであるが、そのアプローチがまったく異なるので飽きることがない。
 第2、第3の講師は、定年後にマスミさんに誘われて紙芝居の普及の道に入った平山益太さんと、現職に就く前に働いていた幼稚園での経験をユーモアいっぱい語った佐藤さん。3人とも全盲でありながら、それぞれが自分の歩んできた道をたくましく話してくれたため、感動が広がって味わい深かった。
 参加者数は24人と全国規模の研修に比べればごく少数の集まりではあったが、今年もつながりが育まれていくことを実感する秋季研修となった。

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 点字からITまでサイトワールド2013
 実行委員会事務局長 近藤 義親
 点字からITまで、サイトワールド2013は、まさに視覚障害者のすべてをテーマとするイベントとなり、3日間延べ5,600名の来場者を迎えました。
 今年は、51のブースに、アメリカ、韓国に加え、ポーランド、スウェーデンからの出展があり、例年にまして国際色豊かになりました。大学の研究開発の成果発表、爪切りならぬ「爪ヤスリ」といった製品の紹介や「お掃除ロボット」等、新たな出展も多く、来場者の興味をかきたてるものとなりました。
 開会式挨拶で榑松実行委員長は「ITの活用で障害者の就労や修学上のバリアがどのように克服されるのかを、多くの人々に知っていただきたい」と述べました。特に、1日午後の視覚障害者の就労のセミナー開催には、ハローワークのご支援もあり、セミナーと展示会場に一般の方々とともに、福祉や労働行政に関わる官公庁の皆さま、企業の人事担当の方々を多数迎えることができたサイトワールドとなりました。
 「ITをわたしはこのように」の講演で全盲の岩下恭士さん(毎日新聞デジタルメディア局)は、世の中にあるもの、みんなが使っているものが、目が見えないというだけで使えないのは悲しい、目の見えない人にも使えるようにすることは大事なことを世の中の人にわかってほしいと述べられました。そして、スクリーンリーダー(音声画面読み上げソフト)内蔵のiPhoneやiPadの最先端の製品を実際に使用しての実演で、その便利さを示されました。また、「誰にでも簡単にとは言えないが、使おうとする気持ちと努力があれば使えるようになるもの」と強調されました。
 展示会場には、ユニバーサルデザインの製品の紹介も増えて、ちょっとした工夫や、あっと驚くアイディアもあり、誰でも使えるものを目指す企業や開発者の意気込みに、来場者も感想や意見で応え、製品の紹介に止まらない双方向の交流が今年も熱を帯びて各ブースで行われました。
 先の岩下恭士さんの講演と大胡田誠弁護士の「障害者差別解消法とは」、長瀬修教授の「障害者の権利条約の状況」の3つの講演では手話通訳を行いました。これは、サイトワールドには、聴覚障害の方も多く来られていることに気づいたボランティアの方々の情報によるもので、「毎年行っているが手話通訳が用意されて嬉しい」とのメールもサイトワールド事務局にあり、好評でした。このように、出展者、来場者、ボランティアの皆さんの思いをひとつにできたサイトワールド2013となりました。

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 <新会員施設紹介>
 公益財団法人杉山検校遺徳顕彰会杉山鍼按治療所
 理事長 和久田哲司
〒130-0025東京都墨田区千歳1-8-2江島杉山神社社務所2F
TEL:03-6659-4453 FAX:03-6659-4453 E-mail:sugiyamakenshoukai@sky.plala.or.jp
http://www13.plala.or.jp/sugiyamakengyou/
 杉山検校遺徳顕彰会鍼按治療所は、江島杉山神社敷地内に設けられた治療所です。
 杉山和一(1610~1694)は、近代日本鍼灸の中興の祖で、伊勢国安濃津(現在の三重県津市)藤堂藩士杉山権右衛門重政の嫡男ですが、幼くして伝染病により失明し、家督を義弟に譲り、医の道に進みます。
 その後、苦労して鍼の施術法の一つである管鍼法を創始。鍼・按摩技術の取得、教育を主眼とした世界初の視覚障害者教育施設「杉山流鍼治導引稽古所」を開設し、そこから多くの優秀な鍼師が誕生します。
 また、鍼按教育の他、「当道座」(盲人の芸能集団)の再編にも力を入れました。
 杉山和一検校が、江戸時代に盲人に鍼・按摩の教育をし、盲人の職業として鍼・按摩を定着させたことが、明治期の盲学校設立後の職業教育に、鍼・按摩が取り入れられることへとつながってゆきます。
 江島杉山神社は、杉山和一検校が江戸時代の元禄年間に、徳川5代将軍綱吉公から拝領した土地で、弁財天社と鍼治講習所とともに惣録屋敷が設けられた所です。
 鍼治講習所は200年にわたり、視覚障害者に杉山検校考案の管鍼術と按摩術を教育して生業の道を開いてきました。
 明治4年に鍼治講習所は廃止されましたが、鍼灸按摩術の学術継承と研究のため昭和5年に本財団が設立されました。
 以来、杉山検校の遺徳を顕彰する諸行事、学術振興のため医籍の刊行や鍼灸・按摩に関する学術講習会、講演会、鍼供養、広報発行、ならびに400年にわたる文化遺産を維持するなど、諸事業を展開してきています。
 そして財団悲願であった「鍼治講習所」を復興して、学術の継承のための研修・教育の場とするため、2012年に杉山鍼按治療所が発足しました。
 これにより、熟練の指導者による患者治療を通じて実践的研修を行い、治療技術の向上によって、研修生が鍼灸按摩師として自立することを目指しています。

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 <新会員施設紹介>
 社会福祉法人雑草福祉会雑草授産センター
 施設長:米山 浅子
〒355-0073埼玉県東松山市上野本2183-15
TEL:0493-23-8989 FAX:0493-23-8979 E-mail:mail1@zasso.org
http://www.zasso.org/
 社会福祉法人雑草福祉会(理事長:米山一郎)は、昭和59年(1984年)4月に社会事業授産施設雑草授産センター(定員20人)として、埼玉県東松山市に発足しました。
 この施設は、盲学校や特別支援学校の卒業生を受け入れ、地方自治体の発行する広報の点字版の印刷や録音テープの発行、その他、軽作業や農業の仕事をする施設です。
 【福祉会の目的】
①盲人による盲人のための点字印刷の授産所
②家庭と郷土を敬愛する伝統的精神にもとづく福祉
③空き瓶・空きカンなどのリサイクル等で障害者も地域経済に参加
 【福祉会のあゆみ】
昭和59年4月1日、社会事業授産施設雑草授産センター(定員20名)開所
昭和61年4月、定員24人に増員
平成2年4月、知的障害者授産施設第2雑草授産センター開所
平成7年4月、第2雑草授産センター分場を開所
平成18年10月、雑草授産センター就労継続支援B型事業所に移行
平成22年11月、生活介護施設を開所
平成24年4月、雑草授産センター就労継続支援B型(定員40人)に増員。
同月、第2雑草授産センター多機能型事業所(就労継続支援B型定員20人/生活介護定員6人)移行(移転)
 〒355-0036埼玉県東松山市下野本1492-1 TEL:0493-81-3514

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 日盲社協事務局だより

    退会会員施設
①(有)リブートは、平成25年10月31日付で、点字出版部会から退会しました。

    新規会員施設
①公益財団法人 杉山検校遺徳顕彰会 杉山鍼按治療所は、平成25年5月1日付で、自立支援施設部会へ入会しました。
②社会福祉法人 雑草福祉会 雑草授産センターは、平成25年6月1日付で、自立支援施設部会へ(再)入会しました。

    ◆次回の盲人福祉施設大会は福岡で◆
 来年の日盲社協の大会である「第62回全国盲人福祉施設大会」は、福岡市で開催されることが正式に決まりました。
会場と開催年月日は下記の通りです。
会場:ヒルトン福岡シーホーク 〒810-8650 福岡市中央区地行浜2-2-3
TEL:092-844-8111
開催:平成26年6月26日(木)・27日(金)
主幹:福岡市立点字図書館 館長 横田博文 〒814-0001 福岡市早良区百道浜3-7-1
TEL:092-852-0555 FAX:092-852-0556

    新刊図書紹介
 情報サービス部会は12月に、『高齢者・障害者のための読み書き支援(代読・代筆)』を発行する計画です。

    日本盲人福祉委員会(日盲委)の新役員
 平成25年4月1日付で、日盲社協も構成メンバーである「日盲委」の新しい理事が選任されました(以下、敬称略)。
理事長 竹下義樹(日本盲人会連合会長)
副理事長 髙橋秀治(日盲社協理事長)
常務理事 中山政義(日本盲人会連合参与)
理事 岩上義則(日盲社協常務理事)
理事 大橋由昌(日本盲人会連合情報部長)
理事 小口芳久(慶応義塾大学名誉教授)
理事 下島啓道(都立久我山青光学園校長)
理事 野村茂樹(弁護士)
理事 藤井亮輔(日本理療科教員連盟会長)
理事 三谷照勝(全国盲学校長会会長)

    事務局からのお願い
 日盲社協事務局では、充実したホームページ(HP)にするため、こまめな更新に努めております。HPの「部会別ページ」には、全会員施設の法人名、施設名、住所・電話番号・FAX番号・E-mailアドレス、HPを持つ施設にはそのリンクをお願いしています。
 今年9月の『加盟施設紹介 ―― 日盲社協ディレクトリー』発行に伴い、「部会別ページ」は一新しました。そこで日盲社協のHPをご覧になって、間違いがないかどうか、ご確認・ご校閲ください。そして、誤りや変更がありましたら事務局までご一報くださいますよう、お願い申しあげます。

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 編集後記

    『加盟施設紹介』活字版とCD-R版をご活用ください
 日盲社協は、創立60周年を記念して会員全205施設を網羅した施設名鑑『加盟施設紹介 ―― 日盲社協ディレクトリー』を9月9日付で発行しました。
 前回は40周年を記念して作成しましたので20年前、それから加盟施設は大幅に増えるとともに入れ替わり、古くからの施設も名称や事業内容が変わりました。
 9月9・10日の創立60周年を記念した「第61回全国盲人福祉施設大会」に間に合うよう作成するためには、4月の新年度開始という各施設もっとも多忙な時期に、原稿執筆をお願いしなければならず、大変ご迷惑をおかけしました。そして、発行までには様々な困難や行き違いがあったにもかかわらず、最後には全施設、快くご協力いただきましたこと、まことにありがたく、御礼申しあげます。
 「校正畏るべし」は、同音である論語の「後生畏るべし」をもじった言葉で、明治の新聞人で『東京日々新聞』(現『毎日新聞』)の主筆・社長を務めた福地桜痴の警句です。
 今回も、ご多分に漏れず校正漏れで重大な不祥事を招く寸前まで行きました。特にURL等については「最終校正」でも気付かなかった施設が多かったようで、点字データ版作成時に点訳者から指摘があり、時間がなかったため、当方の独断で修正しましたこと、ここにお断りいたします。
 『加盟施設紹介 ―― 日盲社協ディレクトリー』活字版と、そのPDFファイル、TXTファイル、点字ファイルが収録されたCD-R版は、各施設に一組ずつ配布しました。
 CD-R版は会員施設の職員であればどなたでも自由にパソコンにダウンロードすることができます。ぜひ、ご活用ください。
 『日盲社協通信』の次号は平成26年4月に発行する予定です。(福山博)

    情報提供のお願い
 本誌に対する情報提供・要望・苦情・意見・感想は、日盲社協広報委員長福山博宛、メール(fukuyama@thka.jp)等で送ってください。お待ちしております。

    『日盲社協通信』WEB版リリース
 『日盲社協通信』が、平成23年(2011年)11月号(通巻63号)から、日盲社協のホームページにアクセスして、全文を読むことができるようになりました。こちらもご高覧ください。
 ●本誌は、大阪府民共済生活協同組合の助成により作成したものです。

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